悠遠の誓い

angel

文字の大きさ
上 下
130 / 203
13章

うまくできないから② 海瑠side

しおりを挟む
ウッドデッキに小皿を置きパンくずやお米を入れておくと、小鳥や小動物が来るようになった。

日がたつにつれ表情の硬かったしょーちゃんが笑顔を見せるようになり、少しづつ俺から離れられるようになったことは喜ばしいことだ。

なのに…

この世界には俺としょーちゃんしかいないような閉塞感が幸せだった。全力で俺に頼り甘えてくるしょーちゃんを24時間独り占めに出来たことが嬉しかったのに。


わたると過ごした俺の知らないしょーちゃんの時間が俺を嫉妬させる。俺以外に頼り、安心して暴言を吐くしょーちゃんが許せなくなる。
一生このままでいいわけないのはわかってるのに、自分の狭量が嫌になる。右腕の麻痺がずっと治らなければいいのになんて悪い考えがよぎる。

たこ焼き機は洗いにくいな。こんなもん…買いたくもなかった。なんて八つ当たりまでしてしまう。
俺に隠すようにわたるに渡されたものをポケットにしまったしょーちゃん。ニヤニヤと見てくるわたるにもムカつき、殴ってしまわないように拳を握りしめるのが大変だった。


ふっ…と笑いが漏れる。俺ってしょーちゃんが絡むとかっこ悪くなっちゃうな。
しょーちゃんだけだ。俺をこんなつまらないただの一人の男にしてしまうのは。

洗い終え手を拭きながら壁の掛け時計を見る。


(遅いな…)

いつもならお風呂から出てきててもおかしくない時間。
ザワリと嫌な予感がよぎる。
たまに痛そうに頭を押さえてる時があるしょーちゃん。
『なんでもない』って言うけどもしかして……

風呂場に向かい脱衣所のドアの前に立つと何かが聞こえてきた。

「んっ…あっ、……あ…ぁ……」

かすかな水音に混じる声が官能的で一気に鼓動が早まる。

「かぁ…ぃる。んんっ。あふっ……」

だめだ…開けちゃ。だめだ…

細く開けた扉の向こうに広がる光景は、ツルの恩返しのように見てはいけない光景だった。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

今日でお別れします

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:299

幽閉塔の早贄

BL / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:474

毒花令嬢の逆襲 ~良い子のふりはもうやめました~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:98,335pt お気に入り:3,158

転生したら捨てられたが、拾われて楽しく生きています。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:11,773pt お気に入り:24,902

処理中です...