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14章
ユッタリ
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「やめっ…ろよ!ダメだってば」
「だいじょうぶだから しょうちゃんはシッカリ掴まってて」
力強く上下運動をする海瑠の背中。必死に縋り付くオレは怖くて仕方がない。
「落ちるから…っ!あぁ!!」
オレを背中に乗せたまま腕立て伏せをする海瑠の筋肉がヤバイくらいに盛り上がっている。
重いはずなのに、普通に腕立て伏せをする人くらいのスピードで上下する背中。オレは落とされまいと左手で首に抱きつき両足で海瑠のおなかに巻きつく。思うように力が入らない右腕だけど落とされる怖さでいつも以上の力で抱きつけてる。
『ジム行ってないから体がなまっちゃうから』と
海瑠はトレーニング兼オレのリハビリと称して様々な運動を編み出していくんだ。
汗ばむ背中のトレーニングウェア越しの筋肉はスゴク固くて、いつの間にこんなムキムキマッチョになっちゃったんだと問い詰めたい。
『じゃ今度は俺の太ももの上に跨って座ってて』
腹筋を始めた海瑠の顔が近づいたり遠ざかったりするのを見てイタズラ心が湧き上がる。
太ももに乗りながら両手でお腹に手をつき、目を閉じて唇を尖らせてみる。
チュ チュ チュ
一定の間隔でキスされるとくすぐったくなって笑い出しちゃう。
「なに?しょー。ちゃんが、しろ、って アハハハ」
腹筋を続けながら海瑠も笑いだす。
(美少女の面影なんて微塵もないな)
小学校の頃、それぞれの母親と一緒に行った代官山でカフェのテラス席で休憩してた時にカメラマンに声をかけられたことがあった。
『すごく美しいお嬢様で是非とも写真を撮らせていただきたい』と。
その視線は海瑠へと伸びていてオレは大笑いしちゃったんだ。
男だって何度言ってもなかなか信じないカメラマンは芸能事務所の人らしくて、男でもいいからスカウトさせてくれって海瑠の母親に食い下がったんだ。
(あの美少女がなぁ…)
あの時のカメラマンが見たら卒倒するかもな。なんて考えながら笑ってると、ムキムキ海瑠がオレの両脇の下に手を差し込み、オレを腿に乗せたまま立ち上がる。どんだけ力あんだよ。
オレをコアラみたいにしがみつかせたまま玄関まで行き、靴を履き外に出て歩き出す。
こうみえてもオレだって男だ。身長もやっと160cmを超えたし体重だってそれなりにあるはずなのに。こいつにかかったら大人と子供みたいな扱いをされてしまうのが悔しい。
「しょーちゃん、あれ。こないだ調べたハクセキレイじゃない?」
抱っこされたまま左手の方を見ると、木の上に白と黒のかわいい鳥が見えた。
オレと海瑠はこうして近隣を散歩しながら見つけた鳥や小動物の写真を撮っては、家に帰ってから図鑑やネットで調べてるんだ。
このへんは高地だから7月とはいえ昼間でも涼しい風が吹き、抱きついてても暑さをさほど感じない。
獣道ともいえる細い山道を歩き下っていくと小さな湖があるんだ。そこにある倒木へとオレを下ろし、海瑠も隣に座る。水面を駆ける風が一層涼しくて心地いい。
ここでのオレと海瑠の生活はユッタリの一言だ。
「だいじょうぶだから しょうちゃんはシッカリ掴まってて」
力強く上下運動をする海瑠の背中。必死に縋り付くオレは怖くて仕方がない。
「落ちるから…っ!あぁ!!」
オレを背中に乗せたまま腕立て伏せをする海瑠の筋肉がヤバイくらいに盛り上がっている。
重いはずなのに、普通に腕立て伏せをする人くらいのスピードで上下する背中。オレは落とされまいと左手で首に抱きつき両足で海瑠のおなかに巻きつく。思うように力が入らない右腕だけど落とされる怖さでいつも以上の力で抱きつけてる。
『ジム行ってないから体がなまっちゃうから』と
海瑠はトレーニング兼オレのリハビリと称して様々な運動を編み出していくんだ。
汗ばむ背中のトレーニングウェア越しの筋肉はスゴク固くて、いつの間にこんなムキムキマッチョになっちゃったんだと問い詰めたい。
『じゃ今度は俺の太ももの上に跨って座ってて』
腹筋を始めた海瑠の顔が近づいたり遠ざかったりするのを見てイタズラ心が湧き上がる。
太ももに乗りながら両手でお腹に手をつき、目を閉じて唇を尖らせてみる。
チュ チュ チュ
一定の間隔でキスされるとくすぐったくなって笑い出しちゃう。
「なに?しょー。ちゃんが、しろ、って アハハハ」
腹筋を続けながら海瑠も笑いだす。
(美少女の面影なんて微塵もないな)
小学校の頃、それぞれの母親と一緒に行った代官山でカフェのテラス席で休憩してた時にカメラマンに声をかけられたことがあった。
『すごく美しいお嬢様で是非とも写真を撮らせていただきたい』と。
その視線は海瑠へと伸びていてオレは大笑いしちゃったんだ。
男だって何度言ってもなかなか信じないカメラマンは芸能事務所の人らしくて、男でもいいからスカウトさせてくれって海瑠の母親に食い下がったんだ。
(あの美少女がなぁ…)
あの時のカメラマンが見たら卒倒するかもな。なんて考えながら笑ってると、ムキムキ海瑠がオレの両脇の下に手を差し込み、オレを腿に乗せたまま立ち上がる。どんだけ力あんだよ。
オレをコアラみたいにしがみつかせたまま玄関まで行き、靴を履き外に出て歩き出す。
こうみえてもオレだって男だ。身長もやっと160cmを超えたし体重だってそれなりにあるはずなのに。こいつにかかったら大人と子供みたいな扱いをされてしまうのが悔しい。
「しょーちゃん、あれ。こないだ調べたハクセキレイじゃない?」
抱っこされたまま左手の方を見ると、木の上に白と黒のかわいい鳥が見えた。
オレと海瑠はこうして近隣を散歩しながら見つけた鳥や小動物の写真を撮っては、家に帰ってから図鑑やネットで調べてるんだ。
このへんは高地だから7月とはいえ昼間でも涼しい風が吹き、抱きついてても暑さをさほど感じない。
獣道ともいえる細い山道を歩き下っていくと小さな湖があるんだ。そこにある倒木へとオレを下ろし、海瑠も隣に座る。水面を駆ける風が一層涼しくて心地いい。
ここでのオレと海瑠の生活はユッタリの一言だ。
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