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18章
かえろ
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「…っうん。ハァ」
名残惜しそうに漸く離れてくれた唇がどちらのかわからない唾液に光っている。
キスだけで腰砕けになったオレを海瑠が抱き上げて膝の上に乗せカウチへと座った。
照れくさくなったオレは「もぅ…朝っぱらからすんなよな」と小さなげんこつで分厚い胸板を叩いた。
「俺だけのしょーちゃんの美しさを誰も気づかなくていいのに…心配だよ」
眉間に皺を寄せるコイツの心配とは、この山荘を離れ海瑠がばーちゃんたちと住んでいた家へと戻るせいだろう。
シルヴァリオンの記憶が戻ってくるとともにオレのPTSDも収まりを見せ、右腕の麻痺は残っているものの徐々に日常生活を取り戻し、すでに数回実家にも泊まれたし電車にも乗れた。
「一生ここにいるわけにもいかないだろ」
目線の高さが同じになるコイツの膝の上がオレは大好きだけど重くないのか心配になる。
「一生ここにいてもいいよ」
オレの肩に顎を乗せ密着する両腕が閉じ込めるようにオレの体を包み込む。
同じように背中に回したオレの手で言い聞かせるように背中をさすってやる。
「もう何度も話し合って決めたことだろ、帰ろう…お前はこんなとこで埋もれていいやつじゃない」
「俺はこれ以上何も望んでない。ここが至上の楽園だ」
何度も繰り返した言い合いを性懲りもなく繰り返すコイツ。帰るのは明日だってのに往生際が悪いったらありゃしない。
ぶすっとした顔でオレの髪を撫でる手が額の傷を隠すために止めている髪留めにかかる。
「あ!そういえばオレ、気づいたことがある」
突然の大声に驚く海瑠のほっぺたをパチンと両手で挟み込み、晴れ渡る青空を溶かし込んだような瞳を凝視する。
「お前!この髪留めGPS仕込んでんだろ」
「―――――っ」
目をそらした。やっぱりな。
シルヴァリオンの記憶が蘇るにつれ今まで気づかなかった様々なことに気づくようになったオレ。
「これだけじゃないな?携帯もだろ!」
毎月の通信費が500円の携帯をおかしいとも思わなかったオレ。どんだけバカなんだ。
タイミングよく孝之の家に現れた海瑠。オレが襲われた時いち早く駆けつけて救急車を呼んでくれたのも全部盗聴してたからなんだろう?
怒ってるような顔をして頬を膨らませたオレの目を見ないまま「ゴメン」と謝るコイツが叱られた犬のようで。あぁ…変わってないなと一人ほくそえむ。
「生きるGPSの黒服さんがいない世界だもんね。そんな心配だったんだ?」
コツンと額をくっつけると、そらされていた瞳がオレを見つめてくる。
「…離れてた9か月もずっと見てた。携帯の画面からも渉のピアスからもずっと…」
「はぁ!?」
想像以上のストーカーっぷりに呆れかえったオレは
「お前それは犯罪だからな?」と滾々と説教をしたが、やっぱりコイツは前世からちっとも進歩してないなって最後には笑い出しちゃった。
眉間に深く刻まれた皺。心配性で臆病で前世とは随分と性格が違っちゃったコイツの苦悩は全部オレのせいだから、これからの一生をかけて償っていこう。
指を絡め恋人つなぎにした手を胸に抱きしめ、前世と変わることのない愛する青い瞳を見つめる。
かえろ…オレらの街に。オレらの未来に
名残惜しそうに漸く離れてくれた唇がどちらのかわからない唾液に光っている。
キスだけで腰砕けになったオレを海瑠が抱き上げて膝の上に乗せカウチへと座った。
照れくさくなったオレは「もぅ…朝っぱらからすんなよな」と小さなげんこつで分厚い胸板を叩いた。
「俺だけのしょーちゃんの美しさを誰も気づかなくていいのに…心配だよ」
眉間に皺を寄せるコイツの心配とは、この山荘を離れ海瑠がばーちゃんたちと住んでいた家へと戻るせいだろう。
シルヴァリオンの記憶が戻ってくるとともにオレのPTSDも収まりを見せ、右腕の麻痺は残っているものの徐々に日常生活を取り戻し、すでに数回実家にも泊まれたし電車にも乗れた。
「一生ここにいるわけにもいかないだろ」
目線の高さが同じになるコイツの膝の上がオレは大好きだけど重くないのか心配になる。
「一生ここにいてもいいよ」
オレの肩に顎を乗せ密着する両腕が閉じ込めるようにオレの体を包み込む。
同じように背中に回したオレの手で言い聞かせるように背中をさすってやる。
「もう何度も話し合って決めたことだろ、帰ろう…お前はこんなとこで埋もれていいやつじゃない」
「俺はこれ以上何も望んでない。ここが至上の楽園だ」
何度も繰り返した言い合いを性懲りもなく繰り返すコイツ。帰るのは明日だってのに往生際が悪いったらありゃしない。
ぶすっとした顔でオレの髪を撫でる手が額の傷を隠すために止めている髪留めにかかる。
「あ!そういえばオレ、気づいたことがある」
突然の大声に驚く海瑠のほっぺたをパチンと両手で挟み込み、晴れ渡る青空を溶かし込んだような瞳を凝視する。
「お前!この髪留めGPS仕込んでんだろ」
「―――――っ」
目をそらした。やっぱりな。
シルヴァリオンの記憶が蘇るにつれ今まで気づかなかった様々なことに気づくようになったオレ。
「これだけじゃないな?携帯もだろ!」
毎月の通信費が500円の携帯をおかしいとも思わなかったオレ。どんだけバカなんだ。
タイミングよく孝之の家に現れた海瑠。オレが襲われた時いち早く駆けつけて救急車を呼んでくれたのも全部盗聴してたからなんだろう?
怒ってるような顔をして頬を膨らませたオレの目を見ないまま「ゴメン」と謝るコイツが叱られた犬のようで。あぁ…変わってないなと一人ほくそえむ。
「生きるGPSの黒服さんがいない世界だもんね。そんな心配だったんだ?」
コツンと額をくっつけると、そらされていた瞳がオレを見つめてくる。
「…離れてた9か月もずっと見てた。携帯の画面からも渉のピアスからもずっと…」
「はぁ!?」
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「お前それは犯罪だからな?」と滾々と説教をしたが、やっぱりコイツは前世からちっとも進歩してないなって最後には笑い出しちゃった。
眉間に深く刻まれた皺。心配性で臆病で前世とは随分と性格が違っちゃったコイツの苦悩は全部オレのせいだから、これからの一生をかけて償っていこう。
指を絡め恋人つなぎにした手を胸に抱きしめ、前世と変わることのない愛する青い瞳を見つめる。
かえろ…オレらの街に。オレらの未来に
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