エッセイ集

憂月柘榴

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伝える

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 贈り物をするには、賞味期限を確認するだろう?
 なら何故、伝えたい言葉を置いておくのだろう?
 それはやがて、腐ってしまうのに。

 私は素直だ。正確に言えば、素直になった。昔は徹底的に取り繕って、自分を作り上げていた。優等生といえば聞こえがいい。だが、そのやり方には強い疲労が付随する。私はそれに辟易した。だから、素直でいることにした。
 それに、ある時を境に知った。人はいきなり消えるものだ。自分もそうかもしれない。相手もそうかもしれない。それは誰もわからない。今日伝えたかった言葉は、明日には伝えられないかもしれない。それは理不尽に、何の遠慮もなく、訪れるかもしれない。言葉の賞味期限は、誰にも見えない。
 だからこそ、私は素直になった。思ったことはすぐに伝える。言葉にする。表現する。無論、最低限のTPOは弁えるが。…
 つまり、私の素直さは、大元を辿れば「人間存在の未来の不確かさ」に由来する。何より自分自身が自分の明日を信じられないからだろう。私はそれを他者にも適応しているに過ぎない。明日世界が滅亡するかもしれない、といえば大抵の人は笑うかもしれない。だが、明日私は生きていないかもしれない、といわれて笑う人間を、私は信用しない。私は、私たちは「今しか生きられない」。それこそ確かな事実だ。過去を振り返ることもできる。未来を想像することもできる。だが、生きることができるのは今だけだ。
 今しかないのだ。例えどれほど過去を悔いてそこから学ぼうと、未来を憂いて心を砕こうと、私の持ちうるものは今だけだ。昨日はあった。明日はあるかわからない。だが、今日はある。随分と格好をつけて言葉にしたものだが、ここに書いていることは、至極単純なことだ。私はそう思っている。
 私は今を大切にする。今を生きる。そこに理由はない。何故なら、そうとしかできないからだ。過去を生きることも、未来を生きることも私にはできない。不可抗力、というやつだ。良し悪しもない。ただそれがそうである、そんな単純な公式だけだ。つまり、2+2=4ということだ。どこかの地下室に籠っているかもしれない、とある男からのこの引用には笑う人もいるだろう。まぁ、それくらいがちょうどいい。
 私は楽観主義でも悲観主義でもない。その両者には過去と未来が前提とされている。故に私はそこに属することができない。中庸というにも違うだろう。傍観者というのが正しいかもしれない。あえて自嘲的に名付けるなら、「路傍の木主義」だろうか。随分と語呂が悪い。あまり上手い例えは思いつかなかった。
 ともかく、私は楽観も悲観も否定しない。ただ知っている。だから眺める。だが、それは眺めるだけだ。私には触れられないのだから、路傍の木のようにただ横を通り過ぎる他ない。認めることとそれを杖とすることは全くの別物だ。少なくとも、私にとっては。
 話を戻そう。伝える、というのは、相手に何かを贈るということだ。タイミングを見極めるのももちろんいいだろう。それも悪くない。むしろ効果的ですらある。ただ私は、そのタイミングが来ること、その未来を信じられない。その未来が来ると、私がその未来に生きていると、信じられない。だから今伝える。それだけの話だ。
 この素直さ、即物さはある種特異に見えることがあるらしい。良くも悪くも、と注釈を付けるのを忘れてはなならないが。何も素直な事はいいことだと言いたいわけではない。そこには欠点ももちろんある。何事もそうだ。良い点があれば悪い点もある。どこにも正解はない。2+2=4とは人間は片付かない。…
 そろそろ纏まりを欠いてきたように思う。故にこの辺りで描き終えよう。幸いこれは小説ではない。右往左往する内容にも、目を瞑ってもらおう。たまにはそういうものも、悪くはないだろう?
 あぁ、最後に伝えておこう。

 これを読んでくれた人間の幸福を祈る。
 ありがとう。それでは、また。
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