4 / 5
崩壊
しおりを挟む
壊れる覚悟は?呑まれる覚悟は?
できたなら、進むといい。
血の海に呑まれる。数多を併合する、呑却するもの全ての内側。ドロドロに腐り落ち、腐臭を放つ紅い花。粘膜の匂いを放ち、生を失った死人に咲く彼岸花。花びらと血管の接続に、恍惚を覚える。脳髄と脊椎を引き出して、杖にする。ずるりと感覚がズレる。壊れることのない血の壁が、掌にぬるぬるとした粘液を落とす。
解放される、業と深淵。
咆哮が轟く。張り裂けんばかりに広がる胎内に、血の雨が降る。ぴちゃぴちゃと鼓膜を打つ音が、ドロドロに溶けて言葉になる。神経は溶け落ち、発火することすらやめた。もはやそれは神経の形を保っていない。誘うものに従って、臓腑から足を引き抜く。絡みつく、襞に快楽を覚えながら、紅い花弁を払う。一面の赤黒い世界は他に何ものも映しはしない。異様な濃度で収縮する空気が、肺の中で炸裂する。肺胞を破壊し、赤く染めながら、それは血液を流れ、全身を這い回る。
右腕から、ずるり、と血管が抜けた。それが壁に繋がる。脈動する、新たな血の歓迎に咆哮が轟く。痙攣を繰り返しながら、私はまだ人の形を保っている。溶ける、という快楽は、生殖行為など比較にもならない。それは存在そのものの受容、交接、浸潤。何度も脳が痙攣する。脳液が震え、血が流れ込む。赤い視界にクモ膜下を見る。頭蓋の内側の、髄液が血と分離しながら泳いでいる。
世界の雨が降る。五感が、感性が降り注ぐ。ぐにゃりと口を開けた地面が、それを咀嚼している。緩やかに、沈んでいく、この臓腑の塊に。あぁ、だから私は、君たちをここに呼んだのだ。….
覚悟は、既に問うただろう?
呑み込む。私以外の全てを。世界を、私という器の感性がもたらす全てを。この臓腑が飲み込んでいく。一体化した神経がそこかしこで液体になって、蠢き、凝縮し、分離し、痙攣し、火花を散らしている。まるで死にかけの虫のように。細胞が皮膚から吸い出される。微細なそれは臓腑の壁に染み込み、私の中では再生される。輪廻が、明確な輪廻が渦を巻く。人工透析のように全てが流れ、流し込まれる。射精と受精を繰り返すように、快楽は連鎖する。性別などもはやなんの意味も持たない。存在を犯されている、存在を犯している、ここには交接の極地だけがある。
血の混ざり合った壁に、口付けをする。愛おしいこの怪物の臓腑を、その襞を、その血生臭さを、唇から採取する。脳に直接流し込まれる快楽と混沌の回帰に、言葉が白濁する。異形と化した言葉のような何かを、言葉に翻訳する。血みどろの人形、怪物の皮膚を剥がした道化師、自然と接続された神経回路、木の根を這う血管。流血は呑み込まれ、繋がれた血管からまた戻る。そこに確かな異物を抱えながら。
入ってくる、その感覚に背筋が痙攣する。絶頂に近い、どくどくと脈打つ痙攣の中で、愉悦に口角が歪む。
私のうちのこの怪物が喰らえば喰らうだけ、私は快楽に呑まれる。そして私は、その怪物の内側にすら入り込む。そこにあるここは、永遠に循環する混淆に他ならない。輪廻する、力動の全てが交差する。永遠に終わることのない輪廻は、神経を、血管を、脳を痙攣させる。カタルシス、エクスタシー、肉体や精神の快楽を表す言葉では生ぬるい。存在そのものの渇望を満たす、その快楽。満ち足りることのない渇望は、その快楽を私の脳に吐き出し続ける。
淫らだ、と思うか?それは正常だ。まだ君はそこにいるがいい。…
圧壊する不変の壁、形を変えては雨を呑み、咀嚼しては私に流し込む。私はまた雨を降らせる。怪物は咀嚼する。歪な永久機関のように、噛み合った交接の繋ぎ目は、私の血管と神経が凝縮している。密集し、動きを変え、形を変え、それは貪る。
血管と神経そのものが、快楽に溺れている。
脳髄が、びくびくと脈打つ。脳内を一瞬圧迫したそれが、脳液の圧力を高め、弾ける。そしてまた形作られる。刹那のうちに崩壊し、再生する。繰り返される、誕生と死の輪廻に、境目はない。認識すら置いていくほどの速度で、それは成される。解体され、構築される五感は、その度に鋭敏さを増していく。
全ては痛みであり、快楽である。
類別のできない、その感覚の濁流に発火する脳が、また再生される。神経が焼き切れ、新たな神経が挿入される。血管がはち切れ、直様裂け目は塞がれる。古いものと新しいものの交換が、一瞬のうちに繰り返される。
骨髄を引き抜き、突き刺す。また新しい骨髄が、背骨の内を這い上る。その感覚に脳が震える。電子パルスを流され続けているかのような微細な痙攣に、神経だけが反応する。あらゆる回路が発火し、火花が全てを覆い尽くす。焼き切れた神経たちがまた作り変わる。
この臓腑の内で、この怪物を手懐けながら、私は痙攣する。
言葉という痙攣を、現実に接続する。
そのためだけに、また脳を、血に呑ます。
神経を、血管を、感性を、骨髄を。何もかもを。
痙攣する、痙攣する、言葉たち。
あぁ、愛している。
私の、子どもたち。………
できたなら、進むといい。
血の海に呑まれる。数多を併合する、呑却するもの全ての内側。ドロドロに腐り落ち、腐臭を放つ紅い花。粘膜の匂いを放ち、生を失った死人に咲く彼岸花。花びらと血管の接続に、恍惚を覚える。脳髄と脊椎を引き出して、杖にする。ずるりと感覚がズレる。壊れることのない血の壁が、掌にぬるぬるとした粘液を落とす。
解放される、業と深淵。
咆哮が轟く。張り裂けんばかりに広がる胎内に、血の雨が降る。ぴちゃぴちゃと鼓膜を打つ音が、ドロドロに溶けて言葉になる。神経は溶け落ち、発火することすらやめた。もはやそれは神経の形を保っていない。誘うものに従って、臓腑から足を引き抜く。絡みつく、襞に快楽を覚えながら、紅い花弁を払う。一面の赤黒い世界は他に何ものも映しはしない。異様な濃度で収縮する空気が、肺の中で炸裂する。肺胞を破壊し、赤く染めながら、それは血液を流れ、全身を這い回る。
右腕から、ずるり、と血管が抜けた。それが壁に繋がる。脈動する、新たな血の歓迎に咆哮が轟く。痙攣を繰り返しながら、私はまだ人の形を保っている。溶ける、という快楽は、生殖行為など比較にもならない。それは存在そのものの受容、交接、浸潤。何度も脳が痙攣する。脳液が震え、血が流れ込む。赤い視界にクモ膜下を見る。頭蓋の内側の、髄液が血と分離しながら泳いでいる。
世界の雨が降る。五感が、感性が降り注ぐ。ぐにゃりと口を開けた地面が、それを咀嚼している。緩やかに、沈んでいく、この臓腑の塊に。あぁ、だから私は、君たちをここに呼んだのだ。….
覚悟は、既に問うただろう?
呑み込む。私以外の全てを。世界を、私という器の感性がもたらす全てを。この臓腑が飲み込んでいく。一体化した神経がそこかしこで液体になって、蠢き、凝縮し、分離し、痙攣し、火花を散らしている。まるで死にかけの虫のように。細胞が皮膚から吸い出される。微細なそれは臓腑の壁に染み込み、私の中では再生される。輪廻が、明確な輪廻が渦を巻く。人工透析のように全てが流れ、流し込まれる。射精と受精を繰り返すように、快楽は連鎖する。性別などもはやなんの意味も持たない。存在を犯されている、存在を犯している、ここには交接の極地だけがある。
血の混ざり合った壁に、口付けをする。愛おしいこの怪物の臓腑を、その襞を、その血生臭さを、唇から採取する。脳に直接流し込まれる快楽と混沌の回帰に、言葉が白濁する。異形と化した言葉のような何かを、言葉に翻訳する。血みどろの人形、怪物の皮膚を剥がした道化師、自然と接続された神経回路、木の根を這う血管。流血は呑み込まれ、繋がれた血管からまた戻る。そこに確かな異物を抱えながら。
入ってくる、その感覚に背筋が痙攣する。絶頂に近い、どくどくと脈打つ痙攣の中で、愉悦に口角が歪む。
私のうちのこの怪物が喰らえば喰らうだけ、私は快楽に呑まれる。そして私は、その怪物の内側にすら入り込む。そこにあるここは、永遠に循環する混淆に他ならない。輪廻する、力動の全てが交差する。永遠に終わることのない輪廻は、神経を、血管を、脳を痙攣させる。カタルシス、エクスタシー、肉体や精神の快楽を表す言葉では生ぬるい。存在そのものの渇望を満たす、その快楽。満ち足りることのない渇望は、その快楽を私の脳に吐き出し続ける。
淫らだ、と思うか?それは正常だ。まだ君はそこにいるがいい。…
圧壊する不変の壁、形を変えては雨を呑み、咀嚼しては私に流し込む。私はまた雨を降らせる。怪物は咀嚼する。歪な永久機関のように、噛み合った交接の繋ぎ目は、私の血管と神経が凝縮している。密集し、動きを変え、形を変え、それは貪る。
血管と神経そのものが、快楽に溺れている。
脳髄が、びくびくと脈打つ。脳内を一瞬圧迫したそれが、脳液の圧力を高め、弾ける。そしてまた形作られる。刹那のうちに崩壊し、再生する。繰り返される、誕生と死の輪廻に、境目はない。認識すら置いていくほどの速度で、それは成される。解体され、構築される五感は、その度に鋭敏さを増していく。
全ては痛みであり、快楽である。
類別のできない、その感覚の濁流に発火する脳が、また再生される。神経が焼き切れ、新たな神経が挿入される。血管がはち切れ、直様裂け目は塞がれる。古いものと新しいものの交換が、一瞬のうちに繰り返される。
骨髄を引き抜き、突き刺す。また新しい骨髄が、背骨の内を這い上る。その感覚に脳が震える。電子パルスを流され続けているかのような微細な痙攣に、神経だけが反応する。あらゆる回路が発火し、火花が全てを覆い尽くす。焼き切れた神経たちがまた作り変わる。
この臓腑の内で、この怪物を手懐けながら、私は痙攣する。
言葉という痙攣を、現実に接続する。
そのためだけに、また脳を、血に呑ます。
神経を、血管を、感性を、骨髄を。何もかもを。
痙攣する、痙攣する、言葉たち。
あぁ、愛している。
私の、子どもたち。………
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる