異世界転生だと思ったら乙女ゲームの悪役令嬢でした。

水無月 あざみ

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第一章 乙女ゲームの世界に生まれて

16 危うく婚約

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 シュヴァが噛んだ方の手を見せる。

「マローネ!何があった」

 父の隣の暗めの茶色をした男の人が驚いている。
ん?よくよく見ると、少年と同じ髪色だな。

 …もしかして、親!?やばいっ証拠隠滅もとい、何も無かったことにしようとしてたのに、相手の親御さん目の前!!

父が、少年の手を握り、『ヒール』と唱えると、少年の手は綺麗に治って…ない。うっすら跡みたいなのが残っていた。

「すまない。これが限界だ。にしても、何があったん」

「レシオールの魔法でも跡が残るのか…。俺の子で、息子じゃなくて娘なら責任取って婚約しろと言ってるところだぞ、レシオール」

 魔法をかけ終わった父が何があったのか聞こうとした声は、隣の親御さんだと思っていたが、違うらしい人物に阻まれた。

 父に向かってニカッと笑った顔はいたずらっ子のような表情をしている。そして、俺の父が困った顔をしている。婚約しようと思えばできるもんね。

「叔父上、僕がシュヴァのご主人であるこの方に勝手に触れたのが悪いのです」

あ、父親じゃなくて叔父なんだ。

「おいおい、触れただと?多少顔が綺麗だからって…髪の色気にならなかったのか?」

呆れたような顔をする。

「いなくなった兄上のように輝く色という点では気になりますが、それ以外では気になりません」

 きっぱりと言い切る。お兄さんも銀ぽいのかな?俺もちょっと気になるな。

「気にならない…か。父親の僕でさえ気になったのに…強いな」

父が言うと

「おう!俺が育ててるからな!」

と、父の友達が父の背をバシッと叩いた後、俺の方を向く。

「そこの少年。名を教えてくれ」

「ヴァイス・シルヴィアと申します」

 相手にお辞儀をしながら答えた。

「おう!俺はラマール・ドリランドだ!ラマールおじ様と呼んでくれてもいいぞ!美人は男でも大歓迎だ。そして、俺もその色は綺麗だと思うぞ!レシオール…君の父親とは友達だから困ったことがあったらいつでも言ってくれ!」

と、ウィンクする姿に、男らしい方だと思った。同時に、俺の髪色は嫌われるものだと思っていたから、気にしない人もいる事に嬉しくなったので、

「ありがとうございます。ラマール様」

と、素直にお礼を言った。…ってラマール・ドリランド!?
最年少の25で王になった現王の兄じゃないか!その方が叔父って…もしかして…。

 俺の不安をよそに父親達はくだけたように話している。

「俺の子におじ様と呼ばせようとするな」

「いいじゃねぇか!綺麗どころにはそう呼ばれたいんだよ!息子なんだし許せ」

「ぐっ…嫌、許さん俺の目が黒いうちは許さん」

「お前な、いくら可愛い顔と珍しい色してるからって過保護過ぎないか?娘じゃあるまいし、」

「ぐぐぐっ」

 俺はちらっと少年を見た。少年は視線にきづき、こちらに向き直る。

「申し遅れた。僕の名前はマローネ・ロワ・ドリランド。現王の息子だ」

うわぁ…マローネって聞いたときもしかしてって思ったが…。

妹イチオシの攻略対象じゃねぇか!
何度妹に、本命は兄の方だが、攻略が難しくて、まだ攻略できてないから、攻略している中でのイチオシはマローネ君なのよ!!

 ちょっと影のある正義感強めの硬派系が良い!あのクソわがまま令嬢を婚約者というだけで見捨てれないとこも格好いいと耳タコの…マローネ・ロワ・ドリランド。

 危な!男装しといて良かった!責任取れとか言われなくて良かった!シュヴァが噛んじゃって、跡とか残ってしまったけど、これから関わらないようにしよう。とっと離れよう。と心に誓った。
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