35 / 69
第一章 乙女ゲームの世界に生まれて
32 それぞれのあり方
「「リディア話があるんだ?」」
兄ズから呼び止められたので、部屋に向かおうとしていた足を止める。
「俺の事はヴァイスって呼んでっていってるだろ」
今だにリディアと呼んで来るのはこの2人だけなので、少し苛ついてしまい、声に力がはいる。
「ごめんね。でも…」
「「僕らにとってはリディアはリディアだから」」
レオ兄は形だけの謝罪をしてくれるが、シオ兄は開き直り、ケロッとしている。
「話って何?」
何を言っても無駄だろう。俺が折れるしかないな。外で気をつけてくれればもう何でもいいや。
「この間の事なんだけど…その、ね。」
「?」
「じれったいな! 僕が言ってやるよ。僕達はリディアが無事なら誰を犠牲にしてもいいと思ってる。ツバキちゃんを妹とは認めないし、守るのもリディアだけだ。」
「シオ! 言い方があるでしょ。僕等が認めちゃったらリディアが居なくなってしまいそうだから…。だから、僕等は認められないし、認めるわけには行かないだけだよ。でも友達を犠牲にはリディアも嫌だと思うから、何かあったら頼ってね。そう言いたかっただけ」
シオ兄は何言っているんだと思ったがレオ兄の話を、聞いて納得した。確かに、誰か1人でも俺をリディアと呼ぶ人がいなかったら俺はリディアだった事も忘れふらっと出ていくだろう。もちろんフラグは叩き折ってからだけど。俺の兄はそんな俺の心を見すかしていたのだろう。
「それじゃぁ、僕等意外にも何か言いたそうな人が、いるから退散するね」
レオ兄はシオ兄を引っ張ってどこかに行ってしまう。どこに他に人がいるのだろう。周りをキョロキョロすると、壁の方からじーっと見てくる。2人がいた。
「マリ! フィラ!」
「お、おぅ」
俺の声に、マリは返事をしてくるのだが、フィラはもじもじとしている。
「なんかよ…悪かったな」
「え?」
「許さないっていって…ごめん」
「俺達あの後ツバキに怒られてよ。お友達をいじめるなんて、お兄ちゃん達ひどいって…だからその…言いすぎてごめん」
なるほど、そこは妹が強いんだな。まぁ、あんな可愛いツバキから怒られたら誰でもメロメロだよな。
「俺こそごめんな。急にいろいろ言われて分けわかんなかったよな」
そもそも、2人が謝ることはないと思う。誰だって妹に危害を加えられるってなったら嫌だろうし、守らなきゃって思うだろう。
「俺らよ。ヴァイスには感謝してるんだ。こんなところで働けてよ。でもよ、やっぱりツバキが危ないってなったらなんとしてでも守ると思う…ごめんな」
「僕等は、君の兄と逆で、ツバキが大事」
「おう! それでいいんじゃないか」
俺がケロッとしてそう答えると、2人は驚いたような顔をしていた。
「いいのか? 一応主人なんだろ」
あーそっか。こっちも主人は俺って習ってるのか。敬語じゃないから忘れてたけど、別に俺は従者が欲しいわけではない。
「いや、別に主人と思わなくていいよ。今までと同じでいい」
「そうか」
「そう」
ここに来て2人の笑顔をはじめてみた気がする。あそこでお世話になってた時も、朝から出て夜中に帰ってくるし、俺がルイに誘拐とか言ったせいでちょっと避けられてたし。俺はそんな2人に嬉しくなった。
「はーい! そこまでだよ! 油売ってる暇あったら仕事にいく~」
後ろから急に声をかけられた。声が聞こえた方に、振り向く。
「ルイ兄ちゃん」
「ルイ兄」
「ルイ!」
「全く、油断も空きもないんだから。ほら2人はツバキのとこ行くよ~。あ、ヴァイスは部屋にいてね。後からお茶入れてあげるから」
そう言ってルイは2人を連れて行く。なんだか騒がしい日常に思わず笑ってしまう。
最初にこの世界に来たときは、嬉しかった。が、すぐに絶望した。だって破滅だものな。待っているのは。しかし、皆に出会い変わった。
明日はツバキと作戦会議だし、可愛いもふもふシュヴァもついている。ルイは変なやつだけど頼もしいし、家族は愛してくれる。ドワじぃは武器を作ってくれる。
俺はこの乙女ゲームの世界も悪くないかもと思い始めていた。もちろん破滅フラグは回避しなきゃだけど、皆と一緒なら乗り越えられる気がする。
この世界を自覚してそろそろ1年…。俺はこの世界で生きていく。とりあえずはヴァイスとして、男として生きていく。
────2章に続く。
兄ズから呼び止められたので、部屋に向かおうとしていた足を止める。
「俺の事はヴァイスって呼んでっていってるだろ」
今だにリディアと呼んで来るのはこの2人だけなので、少し苛ついてしまい、声に力がはいる。
「ごめんね。でも…」
「「僕らにとってはリディアはリディアだから」」
レオ兄は形だけの謝罪をしてくれるが、シオ兄は開き直り、ケロッとしている。
「話って何?」
何を言っても無駄だろう。俺が折れるしかないな。外で気をつけてくれればもう何でもいいや。
「この間の事なんだけど…その、ね。」
「?」
「じれったいな! 僕が言ってやるよ。僕達はリディアが無事なら誰を犠牲にしてもいいと思ってる。ツバキちゃんを妹とは認めないし、守るのもリディアだけだ。」
「シオ! 言い方があるでしょ。僕等が認めちゃったらリディアが居なくなってしまいそうだから…。だから、僕等は認められないし、認めるわけには行かないだけだよ。でも友達を犠牲にはリディアも嫌だと思うから、何かあったら頼ってね。そう言いたかっただけ」
シオ兄は何言っているんだと思ったがレオ兄の話を、聞いて納得した。確かに、誰か1人でも俺をリディアと呼ぶ人がいなかったら俺はリディアだった事も忘れふらっと出ていくだろう。もちろんフラグは叩き折ってからだけど。俺の兄はそんな俺の心を見すかしていたのだろう。
「それじゃぁ、僕等意外にも何か言いたそうな人が、いるから退散するね」
レオ兄はシオ兄を引っ張ってどこかに行ってしまう。どこに他に人がいるのだろう。周りをキョロキョロすると、壁の方からじーっと見てくる。2人がいた。
「マリ! フィラ!」
「お、おぅ」
俺の声に、マリは返事をしてくるのだが、フィラはもじもじとしている。
「なんかよ…悪かったな」
「え?」
「許さないっていって…ごめん」
「俺達あの後ツバキに怒られてよ。お友達をいじめるなんて、お兄ちゃん達ひどいって…だからその…言いすぎてごめん」
なるほど、そこは妹が強いんだな。まぁ、あんな可愛いツバキから怒られたら誰でもメロメロだよな。
「俺こそごめんな。急にいろいろ言われて分けわかんなかったよな」
そもそも、2人が謝ることはないと思う。誰だって妹に危害を加えられるってなったら嫌だろうし、守らなきゃって思うだろう。
「俺らよ。ヴァイスには感謝してるんだ。こんなところで働けてよ。でもよ、やっぱりツバキが危ないってなったらなんとしてでも守ると思う…ごめんな」
「僕等は、君の兄と逆で、ツバキが大事」
「おう! それでいいんじゃないか」
俺がケロッとしてそう答えると、2人は驚いたような顔をしていた。
「いいのか? 一応主人なんだろ」
あーそっか。こっちも主人は俺って習ってるのか。敬語じゃないから忘れてたけど、別に俺は従者が欲しいわけではない。
「いや、別に主人と思わなくていいよ。今までと同じでいい」
「そうか」
「そう」
ここに来て2人の笑顔をはじめてみた気がする。あそこでお世話になってた時も、朝から出て夜中に帰ってくるし、俺がルイに誘拐とか言ったせいでちょっと避けられてたし。俺はそんな2人に嬉しくなった。
「はーい! そこまでだよ! 油売ってる暇あったら仕事にいく~」
後ろから急に声をかけられた。声が聞こえた方に、振り向く。
「ルイ兄ちゃん」
「ルイ兄」
「ルイ!」
「全く、油断も空きもないんだから。ほら2人はツバキのとこ行くよ~。あ、ヴァイスは部屋にいてね。後からお茶入れてあげるから」
そう言ってルイは2人を連れて行く。なんだか騒がしい日常に思わず笑ってしまう。
最初にこの世界に来たときは、嬉しかった。が、すぐに絶望した。だって破滅だものな。待っているのは。しかし、皆に出会い変わった。
明日はツバキと作戦会議だし、可愛いもふもふシュヴァもついている。ルイは変なやつだけど頼もしいし、家族は愛してくれる。ドワじぃは武器を作ってくれる。
俺はこの乙女ゲームの世界も悪くないかもと思い始めていた。もちろん破滅フラグは回避しなきゃだけど、皆と一緒なら乗り越えられる気がする。
この世界を自覚してそろそろ1年…。俺はこの世界で生きていく。とりあえずはヴァイスとして、男として生きていく。
────2章に続く。
あなたにおすすめの小説
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!
碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった!
落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。
オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。
ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!?
*カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております
痩せすぎ貧乳令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます
ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。
そして前世の私は…
ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。
とあるお屋敷へ呼ばれて行くと、そこには細い細い風に飛ばされそうなお嬢様がいた。
お嬢様の悩みは…。。。
さぁ、お嬢様。
私のゴッドハンドで世界を変えますよ?
**********************
転生侍女シリーズ第三弾。
『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』
『醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』
の続編です。
続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。
前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
ど天然で超ドジなドアマットヒロインが斜め上の行動をしまくった結果
宝月 蓮
ファンタジー
アリスはルシヨン伯爵家の長女で両親から愛されて育った。しかし両親が事故で亡くなり叔父一家がルシヨン伯爵家にやって来た。叔父デュドネ、義叔母ジスレーヌ、義妹ユゲットから使用人のように扱われるようになったアリス。しかし彼女は何かと斜め上の行動をするので、逆に叔父達の方が疲れ切ってしまうのである。そしてその結果は……?
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
表紙に素敵なFAいただきました!
ありがとうございます!
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
嫁ぎ先は悪役令嬢推しの転生者一家でした〜攻略対象者のはずの夫がヒロインそっちのけで溺愛してくるのですが、私が悪役令嬢って本当ですか?〜
As-me.com
恋愛
事業の失敗により借金で没落寸前のルーゼルク侯爵家。その侯爵家の一人娘であるエトランゼは侯爵家を救うお金の為に格下のセノーデン伯爵家に嫁入りすることになってしまった。
金で買われた花嫁。政略結婚は貴族の常とはいえ、侯爵令嬢が伯爵家に買われた事実はすぐに社交界にも知れ渡ってしまう。
「きっと、辛い生活が待っているわ」
これまでルーゼルク侯爵家は周りの下位貴族にかなりの尊大な態度をとってきた。もちろん、自分たちより下であるセノーデン伯爵にもだ。そんな伯爵家がわざわざ借金の肩代わりを申し出てまでエトランゼの嫁入りを望むなんて、裏があるに決まっている。エトランゼは、覚悟を決めて伯爵家にやってきたのだが────。
義母「まぁぁあ!やっぱり本物は違うわぁ!」
義妹「素敵、素敵、素敵!!最推しが生きて動いてるなんてぇっ!美しすぎて眼福ものですわぁ!」
義父「アクスタを集めるためにコンビニをはしごしたのが昨日のことのようだ……!(感涙)」
なぜか私を大歓喜で迎え入れてくれる伯爵家の面々。混乱する私に優しく微笑んだのは夫となる人物だった。
「うちの家族は、みんな君の大ファンなんです。悪役令嬢エトランゼのね────」
実はこの世界が乙女ゲームの世界で、私が悪役令嬢ですって?!
────えーと、まず、悪役令嬢ってなんなんですか……?
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。