異世界転生だと思ったら乙女ゲームの悪役令嬢でした。

水無月 あざみ

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1.5章 それぞれの思いと3年の月日

ツバキ編 1年

 あの告白から1年。今日は、毎週の恒例になっている作戦会議と称したお茶会の日。1年前は、なんとなくそうかなとは思っていましたけど、あの時は驚きました。ヴァイス様にあんな秘密があったなんて…。

「そういえばツバキってマローネ様の事好きなんだっけ?」

──ッ!?

 突然の話題にお茶をこぼしてしまう。

「ち、違いますわ」

 しかし、目の前の少女はそれに納得していないかのような表情をする。

「でも、文通代わりたいって言ってただろ?」

 最近、ヴァイス様がマローネとする文通を代わると申したのは確かなのだが、それは、恋などではなく、手紙とのズレを彼が感じてきているからだった。

「あ、あれは、あれですわ。毎回手紙を読ませていただくより、私が書いたほうが早いし、間違いがないからですわ」

「ニヒッ。そういう事にしといてもいいけど…好きなら教えてくれよな…。」

 ニヤニヤとした笑顔が、段々と暗くなっていく。

「好きなどではありません。私はヴァイス様のお手を煩わせない用に…」

 目の前の少女の顔がムッとする。

「様づけ!」

 私の主人のヴァイス様は友達でいたがる。私は彼の本名であるリディアの影武者で、ヴァイス様とは双子の姉弟という設定なので、様と呼ぶのは確かにおかしいのだが、それでも呼んでしまうのは、彼女を主として、したっているからだろう。

「すみませんわ。癖で…」

 なんとか誤魔化し、機嫌を直してもらう。しかたないなぁと呟く表情はムッとしながらも可愛らしいものだとおもった。

 昔は男だと思っていたので、ここ1~2年でだいぶ印象が変わったな~と思う。今だって、彼女は男の子の格好だし、言葉遣いも男の子そのもので、周りから見たら、少女の用に美しい美少年と言えるだろう。欠点はその髪色と目の色ぐらいだ。私はある意味同じ境遇なので、彼女の色を美しいとさえ思う。

「ツバキ、ツバキってば聞いてるのか??」

「聞いておりますわ」

 私は返事をしながらも過去を思い出していた。彼女と初めて会った2年前ぐらいの時。あの時は男のかと思っていたので、始めて、笑顔を向けられた時はドキッとしましたが、今ではこんなに可愛く見えるなんて不思議に感じる。

「絶対聞いてない」

 今度はプクッと頬まで、膨らませている。その姿はとても可愛く、声が聞こえない所で見ているルイにぃに対しての優越感すら覚える。

 彼女がここまで子供らしく振る舞うのは私の前だけで、他では絶対に無いからだ。それは、初めての友達だからなのか、姉という設定のせいなのか、はたまた運命共同体となっているからなのかはわからない。しかし、他では頬を膨らませたりなどはしない。

 最近ではそれが嬉しくてたまらない。ヴァイス様から聞いた話ではこれから私達には破滅とも言える運命が待っているのだけれど、もしかしたら死ぬのかもしれないけれど、その運命を一緒に背負えてよかったと思う。

 昔、男の子だと思っていた時は年下ながらも頼もしく見えて格好良くて憧れた。自分より年下で、その色なのに、なんて凄いのだろうと。自分より何倍も大きく見えた。しかし、初めてお茶会をした日。私のイメージが崩れる事になる。

 ヴァイス様と初めてお茶会をした日。彼女はその目から大粒の涙を流して何度も私に謝った。これから待つだろう運命を話しながらは謝り、守るからと言う姿は小さくて、しかも細くて、今にも壊れてしまいそうだった。

 前日に女の子ですって聞いたときや、守ると言ってくれた時は私も守ると言ったが、それまではなんとかなるだろうと甘く思っており、守ると口で言っていたが、何処か本気ではなかった。だって女の子であってもヴァイスは大きく頼もしいのだから、守ると言ったけど、私が守らなくても大丈夫。どこかそう思っていたのかもしれない。しかし、泣いている、その姿を見たときは愕然がくぜんとした。

 私は何を見ていたのだろう。彼女はこんなにも小さく弱いではないか。そう思った。その日から私はヴァイス様自身やその心を守れる人になりたいと思い。特訓したり、話を聞いたりしている。

 ヴァイス様はこれから、入学までの5年で、Aランク冒険者の平均Level50とAランクの仲間入りを目指すそうなので私はSランクの平均Level60を目指します。

 女の子には無謀だ? 十代でSまで行くやつなどいない? 常識なんてクソ食らえですわ。守るためならそれぐらいしなくてどうするのです?

 しかも私達は常識とは違うメンツでしてよ?

 それに、マリ兄とフィラ兄が身分証明の為に冒険者カードを作りに行きましたが、Levelが20あってDランクでしたの。ルイ兄様も今は活動しておりませんが、Cランクですし、負けてられません。

「聞いておりますわ。それにしても…シュヴァ様段々と大きくなっておりません?」

「あ、やっぱり?」

 ヴァイス様の隣には女子会なんぞ興味ないと言う風に眠っているシュヴァ様がいる。初めて見たときは子犬サイズで、それから段々と成犬に成長していたのだが、今はポニーぐらいのサイズになっていた。明らかに成長がすさまじい。

「なんかさ、ダリアに言ってお互いを縛っている呪いみたいなの解いてもらった後からすげー成長してさ。重くて持てないんだよね」

 持てないといいますか、逆に乗れそうなのですが…いいのでしょうか?

「そ、そうですの。良かったですわね」

 それにしても、ダリアマークが無くなったのに一緒にいるんですね。ふと、ダリアマークがあった首筋を見ると、半分の黒いハートマークがあった。

「それ、なんですの?」

 トントンと首を指しながら聞いてみる。

「あ~これ?」

「えぇ」

 ヴァイス様は立ち上がったと思うとシュヴァ様を叩き出す。

「おら、おきろ」

「なんだよ? 俺、寝てたんだけど…?」

 し、シュヴァ様!?
 最近は人型を見かけなかったのですが、成長しすぎでは? 3歳ぐらいだったのに、同じ年ぐらいに、なっておりますけど…?

 なにより、あんなに可愛らしかった言葉遣いが、なんだかヴァイス様に似てきていらっしゃるのですが…。成長とは悲しいものですわ。

「お手」

「はい」

 シュヴァ様の手の甲をヴァイス様の首元にやると…あ!

「ハート…?」

 そこにはハートが現れた。シュヴァ様の方は白いマークなので、わかりにくいのですが、対になっていて合わさるとハートになっていた。白と黒…まるでお互いのようだった。

「なんか、勝手に新しい契約結ばれてた」

「勝手じゃない。ヴァイスは俺のパートナーだろ」

「ばぁーか。関係ないだろそれとこれは」

 あまりにも自然にシュヴァ様の頭を撫でるそれは、昔時々見た光景そのもので、姿が大きくなってもそれは代わっていないようだった。

 ルイにぃのすさまじい怨念が見えますけど。


 なんにせよ。あの日守ると誓った主が、もう泣くことがなく、健やかに笑っている。これから起こる事など、ヴァイス様の妄想で本当は起こらないかもしれない気すらしてくる。私は、こんな日がいつまでも…いつまでも続けばいいと思った。
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