異世界転生だと思ったら乙女ゲームの悪役令嬢でした。

水無月 あざみ

文字の大きさ
40 / 69
1.5章 それぞれの思いと3年の月日

父編 3年目

「懐かしいなぁ…」

 僕はウィスキーを飲みながら、アルバムをめくる。
もっとも、アルバムといっても、魔法で自分の思い出を写しながらめくっているだけのものである。

「これは、リディアが噴水に頭をぶつけた日だな…」

 いつもなら少しの怪我だけでも、大泣きするあの子が、その日は目をぱちくりさせながら気絶した。思えばあの時からおかしかったのかもしれない。

「あぁこれは勝手に外に行った後か」

 そこには男の子のような格好と、真っ黒な狼を連れた娘が写っている。あの時は驚いたなぁ…。リディアが男として、ヴァイスとして生きたくなったのはこの時かなぁ…。あの時、監禁なんてしなければ、娘はまだ、娘のままだったのかもしれないと、あれから4年たった今でも思う。

 その後のあの悲劇も無かったのかと。

「クソ親父」

 あの時そう言われた時、鈍器で殴られ、剣で滅多刺しにされたかのような感覚におちいった。あまりの事に呆然として、事の深刻さに気づいたのはリディアが帰ってこないと気づいた後だった。

「懐かしいなぁ…あの時は街の宿屋に泊り込みで探したっけ」

ボロボロになった頃。髪の毛が短くなり、まるで男の子のようなリディアに会った。

「初めて見たときはびっくりしたよ…髪の毛はショックだったなぁ…」

 それからは色々あった。すべてが懐かしく感じる。

「あぁこれはリディアがツバキを連れてきたとき、これは婚約者ができたとき…」

 リディアがツバキ達を雇ってからこの家は騒がしくなった。

「ははっ。これは、マリ君とレオの料理対決の時か。両方美味しかったが、ルイ君が来て結局ルイ君が勝っちゃったんだよな~」

「あら? あなた何見ていらっしゃるの?」

 妻がそばによってくる。

「これかい? 昔の思い出だよ」

「懐かしいですわね。これはあの子達が初めてモンスターと戦って負けてきた夜ですわね」

 それは、息子達とマリ君、フィラ君がパーティを初めて組んで、レベル的には子供にしては強いのに、スライムにボロ負けにされて来た日のだった。

 4人ともボロボロだったが、特にマリ君とレオがムスッとして、そっぽを向いている。次の瞬間に大喧嘩した。

「あの2人は本当に似た者同士だねぇ」

「そうですわね。でも、レオは昔より伸び伸びできているようですわ」

 確かに、昔から時々凄い事をやらかすが、普段は大人っぽく振る舞っているレオがあそこまで子供っぽく大声で喧嘩するのはマリだけで、だんだんと、微笑ましいものに見えてくる。

「リディアも明日で12歳か…」

 そう、明日はリディアの12歳の誕生日。ついにリディアも貴族の一員としての、身分証明を作る時が来たのだ。

「早いものですわね。レオもシオも今年から中等部に入学して寮ですし、来年から皆いなくなると思うと寂しいですわね」

 本当に寂しく感じる。レオとシオは今年から中等部に入学したが、その際のお付きが、マリ君とフィラ君になった。形式上マリ君とフィラ君はツバキ専属だったのだが、どうせなら入学させようと言った時に、レオとシオの1個下に入学は嫌だと直談判に来たのだ。そこで、本当は1歳上なのだが、どうせなので同い年として入学する事になった。

 1年間パーティを組んでいたので負けられない思いがあったのだろう。まぁ、入ってしまえば飛び級もできる学校だ。留年もあるので大丈夫だろう。しかし、騒がしい子達が4人もいなくなったので、少し寂しい。

「あら、これですわ。入学式の日4人とも不機嫌ですわね」

「ふふっどうせだからと思って4人部屋にしてあげたら凄い嫌がってたね。うまくやってるかなぁ…?」

「大丈夫ですわよ。皆もう、総合Dランクですと連絡がありましたわ」

「もう? はやいなぁ…」

 マリ君とフィラ君は冒険者としては元々Dランクだったのだが、学園に入学したとき、使用人ランクは最低のFランクだったのに…。

 学園は貴族の使用人も受け入れている代わりに、合同授業とは別に、貴族学と執事・メイド学があり、貴族学では貴族たる由来から振る舞いまで、執事・メイド学では1流の使用人になるた為の振る舞いからオールマイティにできるように学べる。

 しかし、それだけ厳しく、中等部から高等部までて、最近ではどちらもBランクが支流となっている。

 もちろん、校外活動として、冒険者の依頼もこなせるので、冒険者ランクも上げることができるので、総合Dと言うことは、どちらもDランクなのだろう。

「僕の子達は天才だねぇ」

 もちろんマリ君とフィラ君も含めて、である。

「私達も天才と言われて、Aランクですけど、こされてしまいまいそうですわね」

 Sランクなど誰もが憧れる夢である。

「SSランクになったらどうします??」

「それは、夢みすぎだろう」

 SSランクとは本職がSランクで、副職も全部Sの事を合わせてSランクが2つ以上と意味を込めて呼ばれる称号で、副職は何個でも選べるのだが、1個でもSでなければSSと呼ばれることはない。ちなみに、3つ以上Sの事をSSSランクと呼ぶ事もあり、昔僕も憧れた。

 まぁ、結果としては、ABランク止まりである。貴族としてはA、副職パラディンとしてはBだ。そんな僕だから、息子達がSSになったら嬉しいが、無理はさせたくない。

「そう? あの子達はいける様な気がしますわ。もちろんリディア達も。だって私達の息子ですもの。」

 妻のあまりにも自身のある発言に息子と娘、そしてその使用人達が、皆SSランクまで行くところを想像する。不覚にも想像できてしまった。

「そうだね。君の子だもの。行けるさ」

 皆の輝かしい未来と姿を思い浮かべながら、明日のリディアとツバキのカードの、鑑定防止対策に付いて考える。いくら考えても浮かばないが、なぜか上手く行く気がしている。

「さて、続きを見ようか?」

「えぇ、明日には誕生日ですものね」

 そうして妻と写真を見ながら夜が老けていくのであった。



「やっぱりシュヴァちゃんは大きくなってるわね~」

「今やクマ並みだけど、どうやって学園に付いていくのかな?」

「あなた知らないの? シュヴァちゃん男の子になれるのよ?」

「ま、まさか…」

「そのうち娘をくださいとか来るかもね」

「…シュヴァ君よりはルイ君に言われた方がいい」

「あら? そんなこと言って、ルイ君も来るわよ。ほらこのお茶入れてる時とか、ルイ君の目、完全に狙ってるわよ。」

「…どちらにもあげないよ。リディアは男として生きたのだろう? きっと大丈夫さ」

「ふふっ。女の子扱いされてたらコロッと行っちゃうわよ」



ーーーー作者コメントーーーーーーー
明日から二章が始まります。
ヴァイスは12歳になっております!
よろしくお願いします、
感想 3

あなたにおすすめの小説

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった! 落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。 オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。 ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!? *カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております

痩せすぎ貧乳令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とあるお屋敷へ呼ばれて行くと、そこには細い細い風に飛ばされそうなお嬢様がいた。 お嬢様の悩みは…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴッドハンドで世界を変えますよ? ********************** 転生侍女シリーズ第三弾。 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 『醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!

ど天然で超ドジなドアマットヒロインが斜め上の行動をしまくった結果

宝月 蓮
ファンタジー
アリスはルシヨン伯爵家の長女で両親から愛されて育った。しかし両親が事故で亡くなり叔父一家がルシヨン伯爵家にやって来た。叔父デュドネ、義叔母ジスレーヌ、義妹ユゲットから使用人のように扱われるようになったアリス。しかし彼女は何かと斜め上の行動をするので、逆に叔父達の方が疲れ切ってしまうのである。そしてその結果は……? 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。 表紙に素敵なFAいただきました! ありがとうございます!

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

嫁ぎ先は悪役令嬢推しの転生者一家でした〜攻略対象者のはずの夫がヒロインそっちのけで溺愛してくるのですが、私が悪役令嬢って本当ですか?〜

As-me.com
恋愛
 事業の失敗により借金で没落寸前のルーゼルク侯爵家。その侯爵家の一人娘であるエトランゼは侯爵家を救うお金の為に格下のセノーデン伯爵家に嫁入りすることになってしまった。  金で買われた花嫁。政略結婚は貴族の常とはいえ、侯爵令嬢が伯爵家に買われた事実はすぐに社交界にも知れ渡ってしまう。 「きっと、辛い生活が待っているわ」  これまでルーゼルク侯爵家は周りの下位貴族にかなりの尊大な態度をとってきた。もちろん、自分たちより下であるセノーデン伯爵にもだ。そんな伯爵家がわざわざ借金の肩代わりを申し出てまでエトランゼの嫁入りを望むなんて、裏があるに決まっている。エトランゼは、覚悟を決めて伯爵家にやってきたのだが────。 義母「まぁぁあ!やっぱり本物は違うわぁ!」 義妹「素敵、素敵、素敵!!最推しが生きて動いてるなんてぇっ!美しすぎて眼福ものですわぁ!」 義父「アクスタを集めるためにコンビニをはしごしたのが昨日のことのようだ……!(感涙)」  なぜか私を大歓喜で迎え入れてくれる伯爵家の面々。混乱する私に優しく微笑んだのは夫となる人物だった。 「うちの家族は、みんな君の大ファンなんです。悪役令嬢エトランゼのね────」  実はこの世界が乙女ゲームの世界で、私が悪役令嬢ですって?!  ────えーと、まず、悪役令嬢ってなんなんですか……?

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです