異世界転生だと思ったら乙女ゲームの悪役令嬢でした。

水無月 あざみ

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二章 レベル50までの道のり

8 ダンスのお相手


「少しは踊れるようになったかな…」

 ツバキに協力してもらって、足は踏まなくなった。

「そうですね。これなら大丈夫ですよ」

 踊れるようになった事は嬉しいのだが、過程が後ろめたい。

「何度も踏んでごめん」

 そう、練習相手はツバキ。女の子の足を踏むなんて…俺のバカ!

「問題ありません。身体強化を覚えましたので痛くありません」

 優しいツバキはそう答えるが、俺のプライドはズタボロだった。唯一プライドが踏ん張れているのは明日に迫った新入生との交流目的のパーティーでちゃんと踊れそうなとこぐらい。もし駄目だったら心はバキッと逝くだろう。

「そういえば、お相手は誰でしょうか?」

 ホワイ? オアイテ?

「なんの話?」

 俺が全くわかんない所を察したツバキが困った顔をする。

「ヴァイス…。普通は男が女の子をエスコートするものです。周りは婚約者やペアで来ますわ」

 あちゃ…。婚約者いない。お相手もちろんなし。俺って…すでに失敗の道に来てるのか…?

「でもほら、兄様もシュヴァも相手はいないはず…」

 ツバキ少し考えている。

「でも、どちらもお誘いが多いとお聞きましたので、もしかしたらいるかもしれませんわ」

 これは…バレンタインで俺だけチョコもらえないパターンだ。母からしか、もらえないやつ。

「つ、ツバキは相手は…?」

 ツバキは目を伏せ、ゆっくりと開く。

「もちろん。マローネですわ」

その声は絶望と期待が混ざっているような気がした。

「だよね」

「ええ…表面上は婚約者ですもの。…マローネは別の人が好きでしょうけど」

 ツバキがボソッとつぶやくが聞き取れない。

「ん? なに?」

 もう一度聞こうとしたが、笑顔で誤魔化された。

「いえ、何でもありませんわ。それより、お兄様方にきいてらしてはどうでしょうか?」

 はっそうだった! 相手!

「いってくる!」

 俺は慌てて部屋から飛び出し、兄の元に向かった。

「いってらっしゃいませ」

 背中にツバキの声が届いたが、俺は走って部屋を後にした。


「兄様達は明日お相手いるのですか?」

「「いるよ」」

即答だった。ショックすぎる。

「そうですか」

「なんか、勝手に決まってたんだよなー」

「うん。去年もだけど、候補が争ったすえ、クジで決まってたんだよね。顔も知らないのにエスコートに決まって驚いたっけ。今年もだけど」

 なにそれモテ男エピソード? 非モテに対するいやみかよっ!

「そういえばマリもフィラも今年は人気だったよな」

 え、そうなの!? でも執事クラスは踊れなくない?
給仕係をしているだろう。


「2人とも踊りは上手いけど、執事クラスだからパーティーの係なのに相手決まってて見ていて面白かったね。結局執事としてのエスコートまではするらしいよ」

 まって、前も思ったけど、俺の周り優秀すぎじゃないか??
俺だけなんか…。みにくいアヒルの子じゃん。あ、違うや。あれは実は美しいって、おちだもんな。

「はぁ…」

 自然とため息がでる。この分だとシュヴァも決まってそうだ。

「どうした?」

 シオ兄様に、心配される。しかし俺の心はやさぐれている。このモテ男がっ

「この分だとシュヴァにも相手いて、いないのは俺だけかなって」

「俺はいない」

 シュヴァが会話に入ってきた。それより、今いないって…。

「本当に??」

 期待を込めた目でみる。ボッチ同盟来たかな?

「ヴァイスと行くって断った」

 おい。まって。君今だにファンいるよね?
仲間が出来た嬉しさより自身の危険を感じる。

「当日は俺がエスコートする」

「誰を?」

「ヴァイス」

「誰が?」

「俺」

 男同士だと変だろ!

「ずるー僕も相手断ればよかった!」

「ツバキと行くのかと思っていたから受けたのに…シュヴァと…」

 双子も会話に混ざって男同士でもOKに聞こえてくる。

「女子をエスコートが必須じゃないのか?」

俺はたまらず聞いてしまった。駄目なら絶対遠慮である。

「どうだろう。女の子達はエスコートされる人が多いけど、別に決まってはないからね。友達と行く人もいるんじゃないかな? 僕がヴァイスと行きたかった…今からでも断って…」

レオ兄様が教えてくれるが、最後が不穏すぎる。

「僕も断りに行ってこようかな…」

 シオ兄様も止めてくれ。そのうち俺学園中の女子からリンチくらいそう。

「兄様方、一度決まったんだったらしっかりしてください」

 双子は口を尖らせる仕草をする。あざといか。

「だってさ~。先生から勝手に誰々に決まったからなって言われるんだよ? 従うしかないじゃん」

 え、そんな感じなの?

「決定すら来ない俺って…」

「あ、普通は来ないよ。僕達はさっきも言ったけど去年すごくてね。喧嘩しないように、先生監視のくじ引きが行われているんだよ。しかも断ったらまた争いになりそうでね…。先生から来る」

 うわぁ…壮絶。肉食女子怖っ。

「それでも断ればいいのに…。俺は断ったし、睨んだら皆黙った」

 こっちも壮絶だった。シルヴィア家争奪戦が行われている。…俺もシルヴィア家なんだけどな。悲しくなったが、明日は本番だし頑張ろう。



そう思ったのが昨日のこと…。
朝席に座ると、紙が回ってきた。中には…。

『昼休み、校舎裏、一人でこい』

はい、お昼休みに2度目の呼び出しくらいました。
幸いパーティーは放課後だが、うまく行くのだろうか?
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