異世界転生だと思ったら乙女ゲームの悪役令嬢でした。

水無月 あざみ

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二章 レベル50までの道のり

17 ルイの過去

 なんだか、気まずい。周りからすれば、優雅にお茶を飲みながらのお花見に見えているのか、「ステキー」などと黄色い声援がかすかに聞こえる。

 しかし、当の俺達といえば、マローネ様はルイを凝視しているし、周りもそれを察して何も言えずにいて、沈黙がきつい。いたたまれなくなったルイが場を去る。

「お茶のおかわりを入れてきますね」

 ルイの背中を見送ったが、寂しそうと言うか、複雑な感情がみえた。

「俺ちょっと…」

「だめ」

 後を追おうと席を立つとシュヴァに袖を引かれ動けなくなったので、俺は手を払いのけた。そして走りだす。

「シュヴァはこのままここにいてくれ」

 しばらく走ると、モーゼが起こった。…俺にも道を開けてくれるなんて…触りたくないほどに嫌われているのだろうか?
走りやすいからまぁいい。

「ルイ!」

 キッチンの手前でルイに追いつき呼び止める。

「どうしたの?」

 …どうしたって聞かれてもわからない。ただ、ルイが無理してそうで…それで…。うまく言葉は出なかった。

「…」

 ルイは何かを察したのか、ガチャっとキッチンの扉を開け進んでいく。

「気になった?」

「気になるというより…大丈夫かなって」

「そっか…」

「うん」

 いつもとは少し違う気がする。俺はとまどつた。

「僕は捨てられたんだ…この国の王に…父に」

 ルイはそう言いって、水が湧くまでねっとお茶の準備をしつつ話してくれた。

 ルイは生まれつき魔力が少なかったので、生まれた事を発表すらしてもらえなかったらしい。しかし、長男。すぐに捨てられる事は無かったと言う。だからせめてコントロール力で頑張ろうと、とても努力をしたらしい。しかし、ルイが7歳のとき弟が生まれた。魔力の違いは目で見てわかる。もちろん発表もされ、国を上げて喜ばれた。もちろんルイも弟ができた事は嬉しく、喜んだ。

 きっかけは、弟が5歳になった時だったらしい。初めて弟が魔法を使ったとき。才能に皆が、いや、父が喜んだとルイはいった。弟が才能あるのは分かっていた。弟が可愛がられているのも分かっていた。だけど頑張れば認められると思っていた。少しは見て欲しかった。しかし、弟が5歳の時王はルイを見限った。息子と認めない、お前は不必要だ、王の息子と名乗らず好きに行きなさいとハッキリ言われたらしい。それはルイが12歳の時、身分証が作れる年。ルイは貴族ではなく、庶民のカードを作った。それはすなわち、家を出るのとイコールだった。

 それから冒険者登録をして、元々知り合いのダリアをパトロンに今まで生きてきた。そう語った。

「できれば会いたくなかった。弟には…俺はもう兄じゃないから。…本当の名前を捨ててルイになった時から俺は…」

 思わず背中から抱きしめた。

 俺も父に生んだのを後悔したみたいな事を言われたとき、すごく傷ついた。…息子として認められないと言われたルイはどれほど苦しかったんだろう。可愛かった弟。だからルイはツバキ達と暮らしているのだろう。しかし、父に認められている弟。きっと複雑なはずだ。

「…ありがとう。ごめんね変な話して」

「ううん。それより、まだ父親…王に認められたい?」

 顔を見ずに聞く。…ルイも多分攻略対象。と言うことは、ヒロインがルイを選べば王に認められるかもしれない。だってこの乙女ゲームはプリンセスになる話なのだから相手は王子でなくてはならない。つまり、ヒロインが選ぶ相手は最終的に次の王なはず…。

 グルンっとルイが体制を変えてこちらをむく。きっと、認められたいと…そう言うと思ってた。

「思わないとは言わないし、弟には複雑な感情がまだあるけど…。今はいいかな。父より大事な物ができたから」

 ニコッと笑うルイはいつもの雰囲気に戻っていた。俺にはそれが、強がりなのか、話した事で一人の秘密じゃなくなり、肩が軽くなったのか、何か決意したのか、わからない。

「そっか。もし何かあったら言えよな。力になるから。大切な物…きっとツバキ達だろうけど、俺も守るの手伝うからな」

 ルイの幸せを願おうと思った。もし、やっぱり認められたくなったら、ヒロインとくっつけてやろうとさえ思う。ルイの末路に俺の死があるかもしれないし、周りは反対するかもしれない。それでも…俺だけは手伝ってやろうと思った。

 死んでもいいなんて友情は初めてで、不思議な気持ちだった。もう、家族に思えているから仕方ない。そんな俺の決意をよそにルイは苦笑いをしている。

「前途多難だね」

「やっぱり王に認められたいのか?」

「そうじゃないけど…はぁ…ストレートに言ったら伝わるのかな?」

「何が?」

「…弱味見せた後ってずるい気もするけど…」

 どうしたんだろうか?

「あのね、ヴァイス…大事な物ってヴァイスだよ」

 なるほど、今の生活が大事って事か。契約上は俺が主人だからな。生活を壊さないためにも大事って事だろう。それでも、嬉しい。

「俺も大切だぞ」

「えっ」

 ルイの顔がまるで、豆鉄砲食らった鳩みたいだ。意外だったのだろうか? 失礼なやつ。

「俺だってなぁ、今の生活はとっても楽しくて、大切に決まっているだろ。ルイ達も使用人ではなくて家族の一員だと思っているよ」

「…なんの話?」

「ん? だから今の生活が大切だから、一応雇い主の俺が大事って話だろう?」

「はぁ…」

 大きなため息をついているが、何か違ったのだろうか?

「二人共遅いので迎えに来ましたわ」

 ツバキもキッチンに来たようで、早く戻りましょうとせかしてくる。

「今戻るよ」

「シュヴァ様そろそろ限界ですわよ。待てって言われましたので我慢しているようですが暴れだしそうですわよ。早く行ってください」

 うわぁ…。置いていったからなぁ…。ちょっとぐらい我慢できんのかね。あいつ。全く仕方ないやつ。俺は再び走りだした。

「ツバキ…もしかして聞いてた?」

「えぇ、ヴァイス様は自分を男の子だと思っているのであれぐらいでは伝わりませんよ」

「はぁ…難しいなぁ…」



本日の成果→ルイの過去
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