58 / 69
二章 レベル50までの道のり
17 ルイの過去
なんだか、気まずい。周りからすれば、優雅にお茶を飲みながらのお花見に見えているのか、「ステキー」などと黄色い声援がかすかに聞こえる。
しかし、当の俺達といえば、マローネ様はルイを凝視しているし、周りもそれを察して何も言えずにいて、沈黙がきつい。いたたまれなくなったルイが場を去る。
「お茶のおかわりを入れてきますね」
ルイの背中を見送ったが、寂しそうと言うか、複雑な感情がみえた。
「俺ちょっと…」
「だめ」
後を追おうと席を立つとシュヴァに袖を引かれ動けなくなったので、俺は手を払いのけた。そして走りだす。
「シュヴァはこのままここにいてくれ」
しばらく走ると、モーゼが起こった。…俺にも道を開けてくれるなんて…触りたくないほどに嫌われているのだろうか?
走りやすいからまぁいい。
「ルイ!」
キッチンの手前でルイに追いつき呼び止める。
「どうしたの?」
…どうしたって聞かれてもわからない。ただ、ルイが無理してそうで…それで…。うまく言葉は出なかった。
「…」
ルイは何かを察したのか、ガチャっとキッチンの扉を開け進んでいく。
「気になった?」
「気になるというより…大丈夫かなって」
「そっか…」
「うん」
いつもとは少し違う気がする。俺はとまどつた。
「僕は捨てられたんだ…この国の王に…父に」
ルイはそう言いって、水が湧くまでねっとお茶の準備をしつつ話してくれた。
ルイは生まれつき魔力が少なかったので、生まれた事を発表すらしてもらえなかったらしい。しかし、長男。すぐに捨てられる事は無かったと言う。だからせめてコントロール力で頑張ろうと、とても努力をしたらしい。しかし、ルイが7歳のとき弟が生まれた。魔力の違いは目で見てわかる。もちろん発表もされ、国を上げて喜ばれた。もちろんルイも弟ができた事は嬉しく、喜んだ。
きっかけは、弟が5歳になった時だったらしい。初めて弟が魔法を使ったとき。才能に皆が、いや、父が喜んだとルイはいった。弟が才能あるのは分かっていた。弟が可愛がられているのも分かっていた。だけど頑張れば認められると思っていた。少しは見て欲しかった。しかし、弟が5歳の時王はルイを見限った。息子と認めない、お前は不必要だ、王の息子と名乗らず好きに行きなさいとハッキリ言われたらしい。それはルイが12歳の時、身分証が作れる年。ルイは貴族ではなく、庶民のカードを作った。それはすなわち、家を出るのとイコールだった。
それから冒険者登録をして、元々知り合いのダリアをパトロンに今まで生きてきた。そう語った。
「できれば会いたくなかった。弟には…俺はもう兄じゃないから。…本当の名前を捨ててルイになった時から俺は…」
思わず背中から抱きしめた。
俺も父に生んだのを後悔したみたいな事を言われたとき、すごく傷ついた。…息子として認められないと言われたルイはどれほど苦しかったんだろう。可愛かった弟。だからルイはツバキ達と暮らしているのだろう。しかし、父に認められている弟。きっと複雑なはずだ。
「…ありがとう。ごめんね変な話して」
「ううん。それより、まだ父親…王に認められたい?」
顔を見ずに聞く。…ルイも多分攻略対象。と言うことは、ヒロインがルイを選べば王に認められるかもしれない。だってこの乙女ゲームはプリンセスになる話なのだから相手は王子でなくてはならない。つまり、ヒロインが選ぶ相手は最終的に次の王なはず…。
グルンっとルイが体制を変えてこちらをむく。きっと、認められたいと…そう言うと思ってた。
「思わないとは言わないし、弟には複雑な感情がまだあるけど…。今はいいかな。父より大事な物ができたから」
ニコッと笑うルイはいつもの雰囲気に戻っていた。俺にはそれが、強がりなのか、話した事で一人の秘密じゃなくなり、肩が軽くなったのか、何か決意したのか、わからない。
「そっか。もし何かあったら言えよな。力になるから。大切な物…きっとツバキ達だろうけど、俺も守るの手伝うからな」
ルイの幸せを願おうと思った。もし、やっぱり認められたくなったら、ヒロインとくっつけてやろうとさえ思う。ルイの末路に俺の死があるかもしれないし、周りは反対するかもしれない。それでも…俺だけは手伝ってやろうと思った。
死んでもいいなんて友情は初めてで、不思議な気持ちだった。もう、家族に思えているから仕方ない。そんな俺の決意をよそにルイは苦笑いをしている。
「前途多難だね」
「やっぱり王に認められたいのか?」
「そうじゃないけど…はぁ…ストレートに言ったら伝わるのかな?」
「何が?」
「…弱味見せた後ってずるい気もするけど…」
どうしたんだろうか?
「あのね、ヴァイス…大事な物ってヴァイスだよ」
なるほど、今の生活が大事って事か。契約上は俺が主人だからな。生活を壊さないためにも大事って事だろう。それでも、嬉しい。
「俺も大切だぞ」
「えっ」
ルイの顔がまるで、豆鉄砲食らった鳩みたいだ。意外だったのだろうか? 失礼なやつ。
「俺だってなぁ、今の生活はとっても楽しくて、大切に決まっているだろ。ルイ達も使用人ではなくて家族の一員だと思っているよ」
「…なんの話?」
「ん? だから今の生活が大切だから、一応雇い主の俺が大事って話だろう?」
「はぁ…」
大きなため息をついているが、何か違ったのだろうか?
「二人共遅いので迎えに来ましたわ」
ツバキもキッチンに来たようで、早く戻りましょうとせかしてくる。
「今戻るよ」
「シュヴァ様そろそろ限界ですわよ。待てって言われましたので我慢しているようですが暴れだしそうですわよ。早く行ってください」
うわぁ…。置いていったからなぁ…。ちょっとぐらい我慢できんのかね。あいつ。全く仕方ないやつ。俺は再び走りだした。
「ツバキ…もしかして聞いてた?」
「えぇ、ヴァイス様は自分を男の子だと思っているのであれぐらいでは伝わりませんよ」
「はぁ…難しいなぁ…」
本日の成果→ルイの過去
しかし、当の俺達といえば、マローネ様はルイを凝視しているし、周りもそれを察して何も言えずにいて、沈黙がきつい。いたたまれなくなったルイが場を去る。
「お茶のおかわりを入れてきますね」
ルイの背中を見送ったが、寂しそうと言うか、複雑な感情がみえた。
「俺ちょっと…」
「だめ」
後を追おうと席を立つとシュヴァに袖を引かれ動けなくなったので、俺は手を払いのけた。そして走りだす。
「シュヴァはこのままここにいてくれ」
しばらく走ると、モーゼが起こった。…俺にも道を開けてくれるなんて…触りたくないほどに嫌われているのだろうか?
走りやすいからまぁいい。
「ルイ!」
キッチンの手前でルイに追いつき呼び止める。
「どうしたの?」
…どうしたって聞かれてもわからない。ただ、ルイが無理してそうで…それで…。うまく言葉は出なかった。
「…」
ルイは何かを察したのか、ガチャっとキッチンの扉を開け進んでいく。
「気になった?」
「気になるというより…大丈夫かなって」
「そっか…」
「うん」
いつもとは少し違う気がする。俺はとまどつた。
「僕は捨てられたんだ…この国の王に…父に」
ルイはそう言いって、水が湧くまでねっとお茶の準備をしつつ話してくれた。
ルイは生まれつき魔力が少なかったので、生まれた事を発表すらしてもらえなかったらしい。しかし、長男。すぐに捨てられる事は無かったと言う。だからせめてコントロール力で頑張ろうと、とても努力をしたらしい。しかし、ルイが7歳のとき弟が生まれた。魔力の違いは目で見てわかる。もちろん発表もされ、国を上げて喜ばれた。もちろんルイも弟ができた事は嬉しく、喜んだ。
きっかけは、弟が5歳になった時だったらしい。初めて弟が魔法を使ったとき。才能に皆が、いや、父が喜んだとルイはいった。弟が才能あるのは分かっていた。弟が可愛がられているのも分かっていた。だけど頑張れば認められると思っていた。少しは見て欲しかった。しかし、弟が5歳の時王はルイを見限った。息子と認めない、お前は不必要だ、王の息子と名乗らず好きに行きなさいとハッキリ言われたらしい。それはルイが12歳の時、身分証が作れる年。ルイは貴族ではなく、庶民のカードを作った。それはすなわち、家を出るのとイコールだった。
それから冒険者登録をして、元々知り合いのダリアをパトロンに今まで生きてきた。そう語った。
「できれば会いたくなかった。弟には…俺はもう兄じゃないから。…本当の名前を捨ててルイになった時から俺は…」
思わず背中から抱きしめた。
俺も父に生んだのを後悔したみたいな事を言われたとき、すごく傷ついた。…息子として認められないと言われたルイはどれほど苦しかったんだろう。可愛かった弟。だからルイはツバキ達と暮らしているのだろう。しかし、父に認められている弟。きっと複雑なはずだ。
「…ありがとう。ごめんね変な話して」
「ううん。それより、まだ父親…王に認められたい?」
顔を見ずに聞く。…ルイも多分攻略対象。と言うことは、ヒロインがルイを選べば王に認められるかもしれない。だってこの乙女ゲームはプリンセスになる話なのだから相手は王子でなくてはならない。つまり、ヒロインが選ぶ相手は最終的に次の王なはず…。
グルンっとルイが体制を変えてこちらをむく。きっと、認められたいと…そう言うと思ってた。
「思わないとは言わないし、弟には複雑な感情がまだあるけど…。今はいいかな。父より大事な物ができたから」
ニコッと笑うルイはいつもの雰囲気に戻っていた。俺にはそれが、強がりなのか、話した事で一人の秘密じゃなくなり、肩が軽くなったのか、何か決意したのか、わからない。
「そっか。もし何かあったら言えよな。力になるから。大切な物…きっとツバキ達だろうけど、俺も守るの手伝うからな」
ルイの幸せを願おうと思った。もし、やっぱり認められたくなったら、ヒロインとくっつけてやろうとさえ思う。ルイの末路に俺の死があるかもしれないし、周りは反対するかもしれない。それでも…俺だけは手伝ってやろうと思った。
死んでもいいなんて友情は初めてで、不思議な気持ちだった。もう、家族に思えているから仕方ない。そんな俺の決意をよそにルイは苦笑いをしている。
「前途多難だね」
「やっぱり王に認められたいのか?」
「そうじゃないけど…はぁ…ストレートに言ったら伝わるのかな?」
「何が?」
「…弱味見せた後ってずるい気もするけど…」
どうしたんだろうか?
「あのね、ヴァイス…大事な物ってヴァイスだよ」
なるほど、今の生活が大事って事か。契約上は俺が主人だからな。生活を壊さないためにも大事って事だろう。それでも、嬉しい。
「俺も大切だぞ」
「えっ」
ルイの顔がまるで、豆鉄砲食らった鳩みたいだ。意外だったのだろうか? 失礼なやつ。
「俺だってなぁ、今の生活はとっても楽しくて、大切に決まっているだろ。ルイ達も使用人ではなくて家族の一員だと思っているよ」
「…なんの話?」
「ん? だから今の生活が大切だから、一応雇い主の俺が大事って話だろう?」
「はぁ…」
大きなため息をついているが、何か違ったのだろうか?
「二人共遅いので迎えに来ましたわ」
ツバキもキッチンに来たようで、早く戻りましょうとせかしてくる。
「今戻るよ」
「シュヴァ様そろそろ限界ですわよ。待てって言われましたので我慢しているようですが暴れだしそうですわよ。早く行ってください」
うわぁ…。置いていったからなぁ…。ちょっとぐらい我慢できんのかね。あいつ。全く仕方ないやつ。俺は再び走りだした。
「ツバキ…もしかして聞いてた?」
「えぇ、ヴァイス様は自分を男の子だと思っているのであれぐらいでは伝わりませんよ」
「はぁ…難しいなぁ…」
本日の成果→ルイの過去
あなたにおすすめの小説
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!
碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった!
落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。
オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。
ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!?
*カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております
痩せすぎ貧乳令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます
ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。
そして前世の私は…
ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。
とあるお屋敷へ呼ばれて行くと、そこには細い細い風に飛ばされそうなお嬢様がいた。
お嬢様の悩みは…。。。
さぁ、お嬢様。
私のゴッドハンドで世界を変えますよ?
**********************
転生侍女シリーズ第三弾。
『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』
『醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』
の続編です。
続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。
前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!
ど天然で超ドジなドアマットヒロインが斜め上の行動をしまくった結果
宝月 蓮
ファンタジー
アリスはルシヨン伯爵家の長女で両親から愛されて育った。しかし両親が事故で亡くなり叔父一家がルシヨン伯爵家にやって来た。叔父デュドネ、義叔母ジスレーヌ、義妹ユゲットから使用人のように扱われるようになったアリス。しかし彼女は何かと斜め上の行動をするので、逆に叔父達の方が疲れ切ってしまうのである。そしてその結果は……?
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
表紙に素敵なFAいただきました!
ありがとうございます!
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
嫁ぎ先は悪役令嬢推しの転生者一家でした〜攻略対象者のはずの夫がヒロインそっちのけで溺愛してくるのですが、私が悪役令嬢って本当ですか?〜
As-me.com
恋愛
事業の失敗により借金で没落寸前のルーゼルク侯爵家。その侯爵家の一人娘であるエトランゼは侯爵家を救うお金の為に格下のセノーデン伯爵家に嫁入りすることになってしまった。
金で買われた花嫁。政略結婚は貴族の常とはいえ、侯爵令嬢が伯爵家に買われた事実はすぐに社交界にも知れ渡ってしまう。
「きっと、辛い生活が待っているわ」
これまでルーゼルク侯爵家は周りの下位貴族にかなりの尊大な態度をとってきた。もちろん、自分たちより下であるセノーデン伯爵にもだ。そんな伯爵家がわざわざ借金の肩代わりを申し出てまでエトランゼの嫁入りを望むなんて、裏があるに決まっている。エトランゼは、覚悟を決めて伯爵家にやってきたのだが────。
義母「まぁぁあ!やっぱり本物は違うわぁ!」
義妹「素敵、素敵、素敵!!最推しが生きて動いてるなんてぇっ!美しすぎて眼福ものですわぁ!」
義父「アクスタを集めるためにコンビニをはしごしたのが昨日のことのようだ……!(感涙)」
なぜか私を大歓喜で迎え入れてくれる伯爵家の面々。混乱する私に優しく微笑んだのは夫となる人物だった。
「うちの家族は、みんな君の大ファンなんです。悪役令嬢エトランゼのね────」
実はこの世界が乙女ゲームの世界で、私が悪役令嬢ですって?!
────えーと、まず、悪役令嬢ってなんなんですか……?
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。