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一話 人間の常識
しおりを挟む学校から帰ってきた息子、リゲルが第一声にこう言った。
「パパならもちろん知ってると思うけど、人間って父親と子供でセックスするんだって」
「ふ、ふふふ。当然知っているさ……常識だろう」
ぜんっぜん知らなかった。マジかよ人間。クレイジーだな。だが可愛い可愛い息子に知識不足で幻滅されたくない。その一心で平静を装ってしまった。実際は目玉が飛び出るかと思ったがな。
吾輩はかれこれ千年もの間、どの種族とも関わらずに引きこもっていた魔王である。
昔は女神とバチバチに戦ったり、人間に力を与えて戦争を引き起こしたりとか色々してたが、それは黒歴史だ。吾輩が好き放題していたつもりが、実は利用されていただけと知った時に寝込んで、そのまま誰とも会いたくなくて城にこもり、一切の交流を断った。
それが変化したのは10年前だ。毎日暇なので日課の庭掃除をしに外へ出ると、人間の子供が瀕死で転がっていた。擦り傷が沢山あって、靴も履いていなかった。それでも構わずに走っていたのか歩いていたのか、足の裏は酷く傷ついていた。きっと何かに追われていたのだろう。4歳ほどの幼子が精も根も尽き果て苦しんでいるのを見ていられなくて、その場でありったけ知識を総動員し、あらゆる回復系魔法をかけた。
その甲斐あって子供はしっかりとした寝息になり、顔色が良くなった。だが外に放置しておけばいずれ死ぬ。ちょうど一人の生活を寂しいと感じ始めていた所だ。吾輩はその子供を育てる事にした。
子供は名前を聞いても答えなかったので、仕方なく吾輩は『足』の意味を持つリゲルと名付けたのだ。
衣食住は城の敷地内だけで問題なかったのだが、吾輩は千年も知識の更新がされていない化石のような存在だ。そもそも元から人間の知識が豊富だった訳でもない。それなのに吾輩は、相手が何も知らない子供だからいけるだろうと、張りぼての威厳のためについ知ったかぶりを貫いてしまった。
それでもちゃんと人間の常識は身に付けさせてやりたい。吾輩は外の世界に行きたくはないので、リゲルだけでも自由に人間の暮らす街へ行けるよう、転移魔方陣を用意した。これで学校にも通えるようになり、吾輩のようなはぐれ者と暮らしている割に、リゲルはなかなかまともな人間に育ってくれた……と思う。多分。
「じゃあパパ、今日からセックスしようね!」
オレンジ色の綺麗な髪を揺らしながらリゲルは嬉しそうに言った。14歳の息子からそんな言葉聞きたくなかったよ。セックスってハッキリ言い過ぎじゃない? 今時の人間の子供ってそんな明け透けなの?
「ん……いや、それは……絶対にしなければいけなかったか?」
いくらなんでも絶対ということはないだろう。どんな常識だろうとしない家庭もあるに決まっている。吾輩はそれに賭けた。
「そりゃ絶対じゃないけど……」
「そうだろう」
良かった~。さすがに人間の世界の常識でも息子とセックスはちょっとな。やっぱりさぁ罪悪感ヤバいじゃん。心から安堵していたのも束の間、リゲルは言葉を続けた。
「でも、愛しているならするよ……。そっか、パパは僕の事好きじゃないんだね……知らなかった……ごめんなさい……てっきりパパは僕を愛してくれてると思ってた……」
「吾輩はリゲルの事をめちゃくちゃ愛してるからするよな~!! うん、するする!! 絶対する!!」
「本当!?」
馬鹿野郎、可愛い息子に涙目でそんな事言われて拒否できるか。覚悟を決めろ。よし、がんばろ。近親相姦が常識とか人間って本当にヤバい種族だな。やっぱりリゲル以外の人間を好きになれそうにないわ。
「では……風呂の後にな」
「あ、パパの世代では違うかもしれないから一応言っておくね。今は父親が子供を抱くのはダメだけど、子供が父親を抱くのは大丈夫なんだよ」
どの世代とか知らんよ。オッケー、吾輩が抱かれる……抱かれるのか!? いや、でも確かに子供を抱くよりはマシだな気分的に。
「大丈夫だ、それは昔から変わらない。リゲルの好きにするがいい」
「はーい! じゃあ僕、宿題してからご飯用意するね」
はい、イイ子。天使だね。吾輩に任せると肉ばかりになるからといつの間にかリゲルが食事を作ってくれるようになった。吾輩はお風呂掃除をしよう。
リゲルは可愛いからよく街でおすそ分けだのオマケなどの食料を貰ってくる。それだけで吾輩も人間の世界の一端に触れているみたいで新鮮な気持ちになれた。
今のリゲルは可愛さの方が強いが、少しずつ男らしさも顔つきに現れている。親バカと言われようとも、リゲルは絶世の美男子になると吾輩は確信していた。近く嫁候補なんかも連れてくるようになるのかもしれんな。ああ、そうか、なるほど。これは繁殖のための予行練習なのか。父親ならば孕む事はないもんな。案外理にかなっているのかもしれない。
「吾輩は図書室で調べものをする。すまないが夕食ができたら呼んでくれるか」
「うん! パパもお勉強頑張ってね!」
自室へ向かうリゲルを見送り、姿が見えなくなったのを確認した吾輩はダッシュで図書室へ向かった。もちろん、セックスに使えそうな魔法を調べて全て会得するためだ。その前にどうやって男同士でセックスするのかという所から調べる事になるのだが……。
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