【R18】魔王様は勇者に倒されて早く魔界に帰りたいのに勇者が勝手に黒騎士になって護衛してくる

くろなが

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【第一章】魔王様と三人の勇者

十四話 魔王リスドォルは迎え討つ【後編】

 

 魔獣の視覚的特徴は角だ。
 動物型でも人型でも植物型でも必ず角がある。
 私の考えは正しかったようで、群れをなした者たちには漏れなく角があった。


「デュラム」
「あいよ」


 右の拳を胸に当て、目を瞑り、デュラムの祈りが開始する。
 土と岩しかない大地に、魔力が絨毯のように薄く敷き詰められていく。
 大群がその範囲に入ると、デュラムは咆哮する。


「逆巻く炎よ、荒れ狂え!」


 デュラムの魔力が拡がった場所に、隙間なく無数の火柱が噴き上がる。
 力の強くない者は跡形もなく消滅した。中途半端に力のある者は魔力は防げても、魔力が抜け落ちた、地面で燃え盛るただの炎に焼かれて転がり回っている。


「城にいたらこれをやられていたのか」


 私はげんなりした気持ちを隠すつもりもなく、顔をしかめた。
 デート様々である。これを受けた自分を想像したくない。


「魔王には物足りないくらいっしょ」
「馬鹿言え、不意打ちだったら即帰還している」


 曲がりなりにも勇者だ。
 一瞬で七割以上の魔獣が戦闘不能に陥った。
 まだ動けるものの消耗の激しい弱った魔獣は、デュラムが炎の矢を上空から落としてとどめを刺した。


「うげ、全然ダメージくらってないのもいるなぁ」
「魔物も魔獣もピンキリだから仕方あるまい。しかし、十分に数は減った」


 次は私の仕事だ。
 隠し持っていた植物の種をばら蒔き、地面に魔力を注ぎ芽吹かせる。


「デュラム、合図をしたらこの植物を燃やして欲しい」
「お? わかった」


 まだまだ力の有り余った魔獣が雄叫びを上げ、こちらへ向かってくる。


奸佞邪智かんねいじゃちの器を棄てよ」


 その言葉と共に、地中からおびただしい数の根が飛び出す。
 しかしそれは細く柔らかいため、殺傷能力は皆無だ。
 勢いよく飛び出したところで、ふわふわとひげ根が風に流れていく。
 警戒の強い者は触れないように飛び退いたが、ほとんどは繊維状の根に触れる。
 触れた者は全てその場にバタバタと倒れた。


「デュラム、燃やしてくれ」
「え、お、おう」


 目を白黒させながらデュラムは言う通りに植物に火をつける。
 小さな植物はあっという間に灰になり、倒れ伏していた魔獣も同じように灰になった。


「え、怖いんだけど……なんだよこれ」


 ドン引きといった様子でデュラムは頬を引き攣らせる。


「私が特別に栽培した、根に触れると悪しき魂を移す事ができる植物だ。人間を大量に減らすにも、無差別よりは悪い者を選べないかと思って造ったのだが、魔獣にも効くようで良かった」


 今回の仕事で余った物を持ってきたが、百程度しかなかったため、デュラムに数を減らしてもらう必要があった。
 それに、なんでもかんでも効果があるわけではない。
 まずその対象は、善行より悪行が多くなければ発動しないのだ。
 この判断は私ではなく神に基準を聞いて欲しい。
 更に私の魔力の十分の一以下の存在でなければ、根が触れたところで魂を取り出せない制限もある。


 それでも両手で数えられる程度にまで魔獣は減った。
 人型の魔獣が一人と、他は全て獣型だ。


 成果は上々だが、デュラムは口をへの字に曲げ、顔をしかめている。


「地味なのに、めちゃくちゃえげつないな……」
「血を見なくて済む良い方法だと思ったのだが」
「気遣いそこなの?」


 死体が溢れると疫病で死者が増えてしまうかもしれない。
 減らしたものを増やすことは私にはできないのだから、作業は慎重に進めなければいけないのだ。


「さすが魔王と勇者、素晴らしい」


 突如、人型の魔獣が声を発する。
 真っ白な肌に、大きな角が三本。
 眼鏡をかけ、長い銀髪を三つ編みにしている。
 人間で言うならば、四十代の紳士といった風貌だ。


「もう少し、お相手願いましょうか」


 明らかにこいつが親玉である事がわかる。
 静かな佇まいとは裏腹に、獲物を早くいたぶりたいという感情が、魔力を介して伝わってくる。
 あまり個人の戦闘は好きではないのだが、やるしかあるまい。


「デュラム、他を頼めるか」
「わかった」


 デュラムも正確に力量を見定めたようで、すぐに私から離れ、他の魔獣を引き付けてくれる。


「私に用があるようだな」
「用に足る存在であるか試させて頂きます。そのお力、存分に奮って下さいね」
「お前では私に勝てんぞ」
「それはどうでしょうか」


 自信があるらしい。
 はぁ、と溜め息をつき、私は重いマントを外し、襟元を開け、袖を捲る。


「私は勇者以外に負けぬ」

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