【R18】魔王様は勇者に倒されて早く魔界に帰りたいのに勇者が勝手に黒騎士になって護衛してくる

くろなが

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【第四章】魔王様との魔界生活

八話 ユタカは天使とようやく話す

 

「私達よりも先に魔界を救済してくださった事、感謝致します」


 ファリーヌが俺に礼を言うが、そもそも天使と魔界は一切関係ないんだけど。
 反論するのも面倒だから黙ってるけどさ。


「魔王をしっかり手懐けているようですし、私達の仕事はありませんね」


 そこでハッとした。
 リズ様がとんでもない事を言い出したから、俺の理性が半壊していたんだ。
 肩を抱いて引き寄せているリズ様を見ると、完全に力を抜いて俺の胸に頭を預け、もたれ掛かっていた。

 少し呼吸が乱れて、唇は潤い、皮膚の薄い所が色付いている。
 俺が付けた浅い噛み跡を確かめるように指でなぞっているリズ様は恍惚に浸っているようだ。

 ヤバい。

 発情していると言っていたのは本当なんだ。
 いつも余裕をどこかに必ず残しているリズ様が、ここまで余裕を捨ててしまうとは。
 弱肉強食の世界、恐るべし。

 いくら神の力を取り戻しても魔物であることを望んだリズ様だから、本能というか染み付いた習性は魔物そのものだ。
 それを今、まざまざと見せつけられている。


「お、おう。安心していいぞ」
「壊れない人間に興味はありますが、ただの勇者ではないようですし、遊んでいただく事もできませんね」


 こいつらがちょくちょく言う遊びって何だろう。
 多分、今頃イーグルがファムエールと遊んでるだろうし今度聞いてみよう。
 イーグルなら何があっても死なないだろうし。
 ろくでもない事なのはなんとなくわかるので、自分では絶対に関わりたくないが。


「パノヴァみたいになりたくなければやめておけよ」
「ええ、さすがに勝てない戦いはしたくありませんので」


 そう言ったファリーヌがパノヴァの所へ降り立つ。


「パノヴァ、生きてますか?」


 ファリーヌが落ちている枝を拾ってパノヴァをつついている。
 俺も少しやってみたいが、子供っぽいので我慢がまん。
 せっかくリズ様にカッコイイ所を見せられたのに。


「私が治そう」


 少し落ち着いたらしいリズ様が俺の腕から抜け出し、パノヴァを回復した。
 顔が酷く腫れていたが、すぐにそれもひいて元の綺麗な顔立ちに戻る。


「え……何、この状況」


 意識が戻ったパノヴァは、ファリーヌと俺とリズ様に囲まれている事に困惑している。


「あなたはこの勇者に顔面を殴られて敗北しましたが、覚えていますか?」
「うっそ!? 私の美しい顔を殴ったのぉ!?」


 パノヴァは飛び起きて涙目で俺の肩を揺さぶる。
 何をされたのかもわからず沈められたようで良かった。
 特訓に付き合ってくれた山里に帰ったら報告しよう。


「こら、ユタカを離せ。自分で確認してみろ」


 リズ様は俺からパノヴァを剥がし、魔法で水を運んで来て水鏡を見せてやった。


「あ~良かったぁ、相も変わらず私は美しいね……」


 どうやらパノヴァはナルシストなようだ。
 無傷を喜んだと思ったら、水鏡をうっとり覗き込んでどんどん静かになる。


「ユタカ、何故パノヴァばかり見ている? お前は私の容姿が好きなのだから、私を見れば良いではないか」


 演技か? と一瞬思ったがこれはガチですわ。
 魔力が繋がってるって、こういう感情がわかるのが便利だ。
 繋がっているからといって感情が常に垂れ流しということはない。相手に伝えたいという気持ちがなければ伝わらない。
 それを踏まえた上でこれはリズ様の嫉妬です、本当にありがとうございました。


「リズ様、嬉しいんですけど、今リズ様を見つめていたらよこしまな気持ちが溢れてしまいそうです」


 包み隠さず妄想のリズ様を念じ届ける。
 するとリズ様は固まり、目を丸くしてビクリと肩を跳ねさせ、すぐに顔が赤く染まる。


「ユタカッ……お前は、こ、こんな、破廉恥な事を考えていたのか!?」
「ええ」


 俺は天使達に聞こえないように、リズ様の耳元へ口を寄せる。


「初めて会った時から、ずっとこうしたいって思っていました」


 言っておくが変なプレイとかじゃない。
 ごくごく普通の愛の営みである。アブノーマルな趣味は俺にはない。


「いやはや、本当に勇者と魔王がつがっているのですね。私達は遠出し過ぎて、ここ千年ほど情報に疎くなっていたようです」
「ね~、まさかこんなに変わっているなんてね」


 ファリーヌもパノヴァも自らの情報不足に気付いてくれたようで良かった。
 人間と違って他の種族は時間感覚がだいぶ緩い。それは神も同じだ。
 基本的に死ななかったり、生命力が強い存在は時間の概念が薄くなる。


「では、神の世界も変わっているのでしょうか?」


 ファリーヌがおっとりとした口調で首を傾げながら疑問を口にする。
 神界の事はリズ様の知識がまるっと空白になっている。
 魔界にいた間の神界の事をほとんど知らないのだ。


「今の神界を統括しているのはどの神でしょうね。私の予想ではレジャンデール様ではないかと思うのですが」
「はぁ!?」


 突然ファリーヌの口から見知った名前が出てきて俺はめちゃくちゃ驚いてしまった。
 もしかしてレジィって凄い奴なのか!?

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