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【最終章】魔王を護る黒騎士
十話 黒騎士ユタカは魔王様に甘える
「ただいま戻りました」
俺と双子は魔界へ戻って来た。
外の机と椅子で仲良く話し合っているリズ様とレジィを見て、色々と溢れてきた。
「お帰り、ユタカ」
「リズ様」
椅子から立ち上がったリズ様を抱き寄せてキスした。
「っん……」
一瞬驚いていたリズ様も、すぐに俺の背中に手を回してキスに応えてくれる。
何度も啄み、少しずつ深くしていく。
リズ様の体温、香り、舌の感触がじわじわ俺を癒してくれる。
「……落ち着いたか?」
「はい、すみません、有難うございます」
やっぱり好きだ。何があっても離れたくない。
その気持ちが確認出来たことで、俺はようやくリズ様に笑顔を向けることができた。
「クラウンはどうした」
「ブルガーとイチャついてるので置いてきました」
俺の言葉に虚を衝かれたリズ様は双子を見る。双子は俺の言葉を肯定するように頷いた。
「問題は解決しました。ブルガーは正気に戻り、クラウンとすれ違っていた部分を話し合っている所です」
「詳細は本人から聞いて頂けたらと」
「ああ、ありがとう。助かった。ユタカの治療も感謝している」
あちゃー、怪我バレてる。
まあ魔力が繋がっているからある程度伝わっちゃうんだけど。
「僕達もグリストミル様に会いたくなったので戻ります」
「グーデ、リエール、ありがとなー!」
手を振って見送ると、双子は転移魔法を発動して姿が見えなくなった。
「レジャンデール、私達は自室へ戻りたい」
「うん、わかった、ゆっくりユタカを休ませてあげて」
レジィはふわりと宙に浮かんで、俺の頭を撫でてから客室へ入っていった。
俺達も寝室へ向かい、お互い部屋着になる。
リズ様は俺をベッドに座らせ、両手を握ってくれた。
「さあユタカ、何かあったのだろう」
「闇の魔剣に言われました。俺が若いから、いつか人をやめた事を後悔すると」
「魔剣が?」
「リズ様はどう思いますか」
リズ様は俺の問いに答える前に、額や頬にキスしてくれた。
慈愛に満ちた表情を向け、真っ直ぐに目を見つめる。
「そんな事はわからない。でも、もしもユタカが後悔した時には、私の全てを使ってお前を元の生活に戻してやるさ」
「元の生活……?」
「そうだ、私と出会うことのない、勇者にならない未来を与えよう」
リズ様にはそれが出来る。出来てしまう。俺の世界の神様だから。
それを俺は猛烈に嫌だと思った。理不尽だけど、少し怒っていた。
リズ様をベッドに引き上げて押し倒すと、漆黒の黒い髪がシーツに広がり落ちる。
「リズ様にとって、消してしまえるような存在で収まるつもりはありません。どれだけ俺が後悔しようとも、縛り付けたいと思える存在になりますから、そんな未来有り得ません」
「ふふ……それでこそユタカだ」
リズ様は覆いかぶさっている俺を抱き寄せ、背中や頭をポンポンと優しく叩く。
俺はそれが心地よくて、リズ様の首筋に顔を埋めて力を抜いた。
「リズ様、愛してます」
「私も愛しているよ……だが」
「あでっ!」
もう一度キスしたくて、少し上体を上げた所で、急にリズ様からデコピンをされた。
「戦闘で無茶をしただろう。いくらお前が強くても、人間の肉体は攻撃を食らえば死ぬんだ。自分から将来を摘む事があったら私は許さないからな」
「へへ……すみませんでした」
「まったく、嬉しそうにするんじゃない。私は怒っているのだ」
全然怒っているようには見えないけど、俺の頬をうにうに引っ張るリズ様が可愛いので甘んじて怒られます。
「結局、魔剣が問題だったのか」
「ふぁい」
俺はリズ様に魔剣が原因だったこと、ブルガーは魔剣の効果でおかしくなっていたこと、魔王の所持品に戻りたかったこと、今は魔力のほとんどを奪って封印していることを伝えた。
「私のユタカを心身共に傷付けた物なぞいらん」
今回は少し声が低いので本気で怒ってますねリズ様。
俺、愛されてるなぁ。
「ユタカが許さなければ私が完全消滅させてやるものを」
「一応グラハムなりに俺を心配してたみたいなんで」
「殺されかけてよくもそんな」
「リズ様だってグリストミルを許したし、レジィだって双子を許してるじゃないですか」
「む……」
みんな自分の事には無頓着なのに、他人のためには怒るのだ。
リズ様は何か思い付いたように、パッと表情が明るくなった。
「ああ、そうだ。内祝いとしてグリストミルに魔剣の核をプレゼントしたらどうだ。とても喜ぶだろうし、素晴らしい魔道具に生まれ変わるやもしれぬ」
ダメだ、リズ様の怒りは収まりそうにない。
もう魔剣が魔王に代々受け継がれる未来はないかもしれないな。
『ま、待って待って謝るから、魔王、怒らないでよぉ、ね?』
突然グラハムの声がした。俺は手甲だけ装備して核を取り出す。
リズ様は核を爪で挟んで今にも割ってしまいそうな勢いだ。
「ほう、謝って済むレベルの話ではないが、一応は聞いてやろう」
『ホラホラ、ユタカ君って剣術持ってないしさ、拳っていうちゃんと別の武器があるんだから魔剣は飾りでしょ?』
「まあな」
リズ様にも納得されてしまった。俺もそう思ってます。
剣持ってたらカッコイイという気持ちだけで使ってました。
『私がユタカ君を傷付けた償いに、今後私が自らの意思でユタカ君を守るというのはどうだろうか。ユタカ君に傷一つ付けなかったら、また魔王に代々引き継いで欲しいなぁ』
「……お前がユタカの騎士になると」
『そういうこと、そういうこと。そのまま核は魔王が持っていてくれ。そして私が裏切り行為をしそうだと思えば直ぐに壊してくれればいい』
核という魔剣の命まで差し出され、リズ様も黙りこくる。
しばしの沈黙の後、リズ様が指をパチンと鳴らした。
すると、人間の姿のグラハムが現れる。
と、いうことはリズ様が魔力を与えたのか。
「よっグラハム、さっきぶり」
「ユタカ君、手を」
「え」
跪いたグラハムに手を取られ、甲にキスされた。
まさか自分がされる事になるとは想像もしていなかった。
「私はユタカ君の剣。ユタカ君は私の鞘だ。必ず君を守り、君の元へ戻ろう」
「あ、え、うん……よろしく?」
「まあ、あんまり堅苦しく考えずにユタカ君の使い魔とでも思っておいてよ」
そう言ったグラハムに、バチンとハートが飛びそうなウインクを投げられる。
突然、俺には魔剣ではなく使い魔ができてしまった。
結果的には俺が剣を振るうより圧倒的に戦力になって、俺自身が戦う事がほとんどなくなったのでとても優秀だった。
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