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【番外編】ジン×デュラム
四話 ジンの仕事
「本日はこのような素晴らしい場にお招きいただき光栄です」
「いやいや、何をおっしゃる! ジンさんにお会いできる事こそ光栄ですよ!」
中年のでっぷり太った髪の薄い男が俺にすり寄ってくる。
これが先生よりも年下とは信じられない。
げんなりする気持ちを悟られないようにとびっきりの営業スマイルで対応する。
この男は、表向きは茶葉の取引をしたいらしいが、本命はクスリだ。
俺はラトラに新たに入ってくる怪しい商品を調べて、流通を管理する役目がある。
フランセーズさんからの王命であることは先生も知らない。
過去のラトラは国全体が腐敗した貿易を行っていた。
臓器だパーツだ奴隷だの人間工場だったり、生死を左右するドラッグ製造だったり、非人道的なものの密輸密売の中心だった。
魔王が一旦ラトラを滅ぼしたことでその拠点は無くなったものの、ラトラを取り囲むように色々な国が存在しているため、復興後も自然と物や人が集まり、貿易の中心となりつつあった。
フランセーズさんは世間では清廉潔白の見本のように思われているけど、かなり割り切った性格をしている。
禁止されればしたくなる人間の性も知っているし、放置し過ぎても大変なことになるのもわかっている。
フランセーズさんは悪とも共存しようと考えたみたいだ。
皆、好き好んで悪になっている訳ではないと、誰よりも知っている。
見る角度の違いで、良い行いが悪になることもフランセーズさんは神とのやり取りで良く理解していた。
ユタカさんに貰った本の中に『マフィアのボス』という裏の王様の事が書かれていたらしく、そんな組織を作って裏社会を管理しようと考えたそうだ。
そこで俺に声がかかった。
付き合いも長く、フランセーズさんの信頼を得られている唯一の一般市民だからだと思う。
俺は先生を楽させるための金が稼げれば何でも良かった。
そのためになら何でもするし、今までもそうしてきたから迷いなんてなかった。
表向きは貿易会社の社長をしつつ、ラトラの裏社会の顔役となったのは15歳の時だ。
「いやはや、こんなにお若いのに国を牛耳ってらっしゃるとは!」
「とんでもない。英雄がいてこそ私も自由に動けるのですよ」
「それは確かに。この短期間で国を再生するなんて誰も予想していなかったでしょう。犯罪者にも慈悲深いと他国でも評判ですしね。英雄の称号に相応しい王だと私も思います」
ラトラは俺の許可があれば他国で禁止されているような危ない商売もできる。
他国民の移住も、犯罪歴など関係なく積極的に受け入れている。
しかしそれは全てフランセーズさんの意思であり、俺が得た情報は全てフランセーズさんに筒抜けだ。
国王を軽んじる言動があれば即失格になるが、こいつは一先ず合格だ。
最近は先生の出身であるセモリナから、かなりの数の人間が移ってきていた。
この男もその一人だ。
セモリナは典型的な貴族主義で、平民を大切にしない。
我慢の限界に来た下々の人間がラトラに流れて来ているのだ。
下がいて支えられてこその上でいられる事を忘れ、格差社会に胡坐をかけば、いずれ起きるのは革命や破滅だとユタカさんが勉強の時に教えてくれた。
「ささ、こちらへ」
通されたホールには着飾った男女が大勢いた。
このパーティーはセモリナの人間の顔見せで、みんな俺に近付きたくてウズウズしている。
俺はいつものように全員の顔と名前と声を覚える仕事をするだけだ。
◇◇◇
事前に一般的な解毒剤は飲んでいるし、飲食には最大限に気を使っていた。
しかし、じわじわと俺の体温が上がって全身が気怠くなるのを感じる。
いつの間にか相手の術中にはまっていたらしい。
全員との会話は終わっているから退出しても問題はないだろう。
足取りがおぼつかない俺に気付いた主催の男が近付いて声をかけてくる。
「ジンさん、少し飲み過ぎましたかな?」
「そうかもしれませんね」
「少しお部屋で休んでいかれては」
こうなると踏んで気を付けていたのに、まんまと何かを盛られてクラクラしてくる頭に苛立ってしまう。
商談の上で狡猾な所はマイナスにはならない。俺の対策を上回ってきた事は評価しようと思う。
「男でも女でも、気になる者がいれば案内させますよ」
「いえ、結構です。私はこれで失礼を」
「そうですか、では馬車を呼びましょう」
引き際を弁えている。
抱かせる事がメインではないようだ。
「助かります。セモリナではどのような暑さ対策を?」
俺だけがこうなっている理由を教えろと伝える。
男は顎の肉を撫でながら笑った。
「女性の華やかな香りは暑さ寒さを吹き飛ばし、愛をもたらすと言いますね。一振りよりも二振り、しかしつけ過ぎはただの悪臭だ」
「ふふ、なるほど、セモリナで流行している香水の宣伝も兼ねていると」
揃いも揃って女から同じ香りがすると思ったら、少しずつじわじわとその毒を吸わされていたわけか。
少量吸う程度では問題ないが、次から次へと人と対応する俺はその香りを吸い続ける。
俺から離れた女はすぐに香りを拭い、他や自分に影響が出ないようにする。
全員と接触が終わる頃、俺にだけ毒がまわるということだ。
俺は正式なやり取りのできる連絡先を記載したカードを男に手渡した。
「ぜひ次は私の会社へいらしてください。ゆっくりお話しをしましょう」
「はっ……はい! ありがとうございます!!」
面接通過だ。
今後も付き合っていけると俺は判断した。
「もたらされた愛はどうなるのでしょうか?」
「ジンさんならすぐに去るでしょうね。包み隠さず話すなら、1を100にできますが、0を1にできないのです」
「ははは、それがわかって安心しました」
「馬車で休んでいる間に効果はなくなりますよ。いやはや、噂通りのお方ですね」
「ああ、インポ野郎ですか?」
抱いてくれだの迫られるのが面倒で、俺はずっと『ここだけの話、私は不能なのであなたがいくら魅力的でも抱きたくても抱けないのです。内緒ですよ』と言い続けた。
内緒と言えば面白い程に人の口は軽くなり、あっという間に広まったのだ。
俺がニヤニヤと口を持ち上げて言うと、男は噴き出した。
「ふっふふふ、あははは! いやぁ、自慢の商品なら絶対にいけると思ったんですがねぇ」
「シモで考えるような相手と取引なんてしたくないでしょう」
「甘く見ておりました。逆にこっちが支配し、上手く利用してやろうなんて考えておりましたよ」
「素直な人は好きですよ」
体の熱さと怠さの土産以外はなかなか良いパーティーとなった。
しかし、帰路の馬車でうたた寝をして、体調がかなり楽になった事に俺は油断していた。
完全に抜け切るまで、もっと時間を置けば良かったのに、先生に早く会いたいという気持ちが先走ったのだ。
帰宅を出迎えてくれた先生を前にした俺に、この毒はよく効いた。
1を100にできるが、0を1にできないの言葉を、ちゃんと理解しておくべきだった。
気付いた時には、俺は先生を無理矢理犯していた。
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