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【番外編】ジン×デュラム
九話 ジンの相談
本当に最低だ、ヤり逃げなんて。
それを言うなら強姦の時点で最低なんだけど。
でも、謝るにしてもただ言葉だけなんて俺が許せない。
責任を取ろう。
結婚しよう。
いや、俺は先生と出会った時からずっと先生と結婚する事だけを考えて生きてきた。
先生は結婚にお金が必要だと言っていたから、俺は死にもの狂いで働いた。この年齢にしては稼げていると自分では思っている。
しかし、お金がどれだけあれば先生に認めて貰えるのかわからなかった。
全然足りないと断られたらどうしようと考えていたら、なかなかプロポーズできずにいたのだ。
待て、そもそも俺は告白すらしていない。
恋愛対象として好きと言っていないのではないか。
家族として好き好き言い過ぎたせいで完全に麻痺していた。
死にたい。
先生からしたら、なんの前触れもなく可愛がっていた子供に強姦されたのか?
最悪を通り越して絶望じゃないか?
嫌われていてもおかしくない。
いやいや普通は確実に嫌われるだろう。既に嫌われたと断定してもいいやらかし具合だ。
うわ死にたい。
だがこれは完全に俺が悪い。
クスリはむしろ素晴らしい性能を見せつけた。魔法も使わずにあれほどまでの効果を出せるのは媚薬以外にも用途がありそうだ。あの男はテリアさんの研究所に繋げてやろう。
仕事の顔になっている場合ではないが、先生に嫌われた事実を直視できない。
こうなったら時間をかけて罪を償ってからまたアプローチするしかない。
諦めるという選択肢はこの段になってもやはり出てこなかった。
そうだ、まず先生をケアするところからだ。
しばらくは先生の側にいられないかもしれないのだから、その間、先生をサポートする存在を用意しなければいけない。
結婚資金のつもりだったけど、もう今は慰謝料になるであろう金をかき集めている間に、ひとまず孤児院に人を出しておきたい。
いくら先生に体力があっても、どうしても一人では目の届かない事は多いのだ。単純に人員は常々増やしたかった。
しかし、信頼できる相手というのは難しい。
魔王だの勇者だの神だのと触れ合う可能性が高い環境で何も知らない一般人を雇うのは無理があった。
俺は魔道具の薄いプレートを取り出した。ユタカさんの世界ではタブレットと呼ばれていた物と近い。
そこには昨日専用のカードを渡した相手の名前が浮かび上がった。
ブレド。
セモリナから人が入るという段階で先生の関係者がいないか調べていた。
俺はブレドとパーティー会場で会う前から知っていたし、先生と親しい関係だという事をわかっていて泳がせていたのだ。
怪しい動きをしている事も勿論把握していたし、こちらに害があるのであれば消す準備もしていた。
しかし、突然の寝返りだ。
ブレドの様子を見れば、彼も好き好んで裏の世界にいたわけじゃない事がわかる。
人生最底辺からのスタートだっただけで、次に選べる道はほとんどない。道があることすら気付けない。
俺もそれをよく知っている。
先生に救い上げられ、温かい世界を知った上で俺は今の道を選んだ。
しかし、ブレドは温かい世界を知りたがっているように見えた。
先生と接触した時に、先生から影響を受けたことは明白だった。
それならそう簡単に先生を裏切る事はないと俺は考えた。
本当に問題がないのかのテストを兼ね、俺はブレドに孤児院の警護を依頼することにした。
◇◇◇
「早朝から呼び立ててすみません、ブレドさん」
「いえ、そんな、光栄ですよ。俺で良ければなんなりと」
結局俺は寝てない。
それならその時間を有効活用するしかない。
ブレドから昨夜貰った報告には、孤児院についての警備や防犯設備の無さに指摘が入っていた。
その点は先生の勇者としての能力と強さに任せきりの部分だ。
以前、一度先生は勇者の力を失う時があった。
すぐに魔王が同じ力を与えてくれたが、またいつ力がなくなるかなんてわからないのだから、一般的な対処も必要だと感じていた。
今回の事は良い見直しの機会だ。
「ブレドさんから頂いた資料には、各施設の警備の欠点が数多く書かれていました。この情報だけでも倉庫や館の持ち主に高く売れるでしょうね」
「是非、ラトラの役に立ててやってくださいよ」
「ええ。自ら防犯対策を打てる所は良いのですが、そんな資金的な余裕のない施設もあります。慈善事業をするついでに、あなたの能力を計りたいのですが」
「はあ、何をすれば」
俺の孤児院の出入りをブレドが把握しているかはわからないが、関係者でない風を装っておこう。
「この孤児院で働いてくれませんか。あなたはここの院長と旧知の仲ですし、馴染みやすいのではないかと思いまして」
「なんでも調べてますねぇ」
「まあそれが私の仕事でもありますから」
「ジンさんの出身ですから、やっぱり気になりますか」
やはり知っていたか。
「私の大切な場所をお任せするということは、それなりにブレドさんを信用しているのです」
「監視もしやすいでしょうね」
ブレドは口の端を持ち上げてこちらを見据える。
「そう邪険にしないでくださいよ。単純に院長の助けになりたいだけなんです」
俺が両手を上げておどけて見せると、ブレドも力を抜いた。
「フッ、で? 何をしましょうか」
ブレドも先生の助けになりたいという気持ちがあるのだ。
恐らく俺と似た感情すら持ち合わせているだろう。
だからこそ信用できるとも言える。
「俺の依頼である事を伏せ、何があっても孤児院に付随する全てを守ること。防犯設備の設置、強化も空いた時間にして頂ければ助かります。昨夜頂いた情報を既に売れた分はブレドさんにこの場で支払いますので支度金にしてください。報酬は言い値で構いません」
ブレドに投資する事は先生に使うのと変わらない。
金は惜しむ気はないがあとはブレドが納得してくれるかどうかだ。
「とりあえず……支度金だけで結構です。能力を見たいんでしょう? だったら成果に応じてそっちで決めてくれりゃいい。どうせ仕事中は大金持ってても意味ないですからね」
「そうですか。ではそうしましょう。個人的には院長の料理だけで元が取れると保証しますよ」
「そりゃあ楽しみですねえ」
俺達は小さく笑い合ったあと解散した。
支度金を子供達の土産に突っ込んだとセモリナの商人づてに聞いた時に、ブレドへの信用がまた上がった。
俺はまだ休日が余っているので、魔王の家に向かうことにした。
◇◇◇
「あれ……フランセーズさん」
「やあ」
魔王の家に行くと、魔王とユタカさんはわかるが、何故かフランセーズさんまで待っていた。
「休暇中にデュラムの所じゃなくて魔界に行くなんて、絶対デュラムと何かあっただろうなって思ってさ」
先生と同じくほとんど二十代から見た目が変わっていないフランセーズさんの微笑み。
しかし、この微笑みは子供っぽい悪戯を楽しんでいる時のものだ。
「まあ、ジン、とりあえず座れよ。疲れてるだろ」
俺を席に案内してくれるユタカさん。
ユタカさんは地球で暮らす時に年齢が上がらないのは困るらしいので、見た目の調整をしているらしく、幼さがなくなった年相応の青年になっている。
フランセーズさんよりも年上に見えるくらいだ。
「とうとうヤったか?」
魔王が珍しく声を弾ませている。
意外だが、魔王は人の恋バナが好きみたいだ。
昔から俺の恋を応援してくれているが、半分は面白がっている。
どうせなら笑われた方がマシなので、俺は投げやりに言った。
「強姦ですけどね」
「……ごうかん……?」
俺は改めて最悪な事実を自分に突き付けて凹んでいるのに、三人は何故か顔を見合わせて首を傾げていた。
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