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【番外編】ジン×デュラム
十四話 デュラムとジンの告白
ジンは俺の目を見て、ゆっくりと話し始めた。
「先生と……魔王城で出会って、添い寝してくれた時……俺、死ぬんだなって思ってたんです。この人は俺の魂を迎えに来たんだと。幸せな幻想を最期に見せてもらえたのだと……そう思っていました」
出会った時、いつ死んでもおかしくないくらい痩せこけてたもんな。
「でも、死んでなくて……起きた時には先生がいました。俺を抱き上げて、食事の席に連れていってくれて……最初、警戒してスープに手をつけないでいた俺を、何も言わずただ見つめていて」
施しは危険が多い。
優しい顔して食事を振る舞い、毒を盛ってもがき苦しむ様子を愉しんでから殺したり、薬で眠らせて奴隷にするなんて大人はよくいる。
そうやっていつの間にか消えていく子供を俺はたくさん見てきたし、ジンも同様な例を見てきたのだろう。
だから俺は無理強いはしなかった。
「先生はスープが冷めてから、冷製スープでも美味いんだぜって笑って……俺はその時、この食事が毒入りだったとしても、この人の笑顔が最期に見れるのなら幸せなんだろうなって思って……食べました」
あの時は嬉しかったな。
でもそんな悲痛な覚悟だとは思ってなかった。
「本当に冷たくても美味しくて、でも、せっかく食べるんだったら……冷める前に食べれば良かったって……後悔しました。先生はすぐに俺の考えがわかったんでしょうね……俺は炎の料理人だって言ったろって指を鳴らしたら一瞬でスープが熱くなって、ほんと……俺、凄く感動して、なんてカッコイイ大人なんだろうって思いました」
子供にウケがいいからそれからもよく使う技だ。
俺の料理はいつ食べても美味しいが、温かい食事はまた格別だよな。
「先生は家族になってくれて、それ以上何も望む事なんてないはずなのに……すぐに俺は先生の特別になりたくなった。先生は子供達を救いたいと言っていて、俺もその大勢の中の一人なのはわかっていたのに、それだけじゃ満足できなくて……。あなたの唯一無二の存在になるのが、俺の夢になっていました」
なんとなくジンのその気持ちはわかっていた。
でも、初めて優しくされたことで、刷り込みみたいになってるんじゃないかと俺は懸念し、知らないフリをしていた。
いずれジンには本当に心から大切な相手が現れるんだからと。
「俺は先生と本当の親子ほど歳が離れています。先生を諦めなければいけない理由ならいくらでも見つけられた。それなのに、時間が経てば経つほど、俺は先生を愛していた」
うん、知ってた。
知っていたのに、こうして言葉で聞くのは初めてだ。
俺は嗚咽が込み上げるのを必死に抑え、ジンの言葉を邪魔しないよう努める。
「俺はただの人間で、先生みたいに強くない。それでも、先生が結婚にはお金が沢山あった方がいいって言っていたので、俺を選んでもらえる可能性を上げるために、できる限り用意しました。先生が求めている要素で俺にできる唯一の事だったんです」
「唯一って……そんなわけねーだろ……!」
我慢できなくて俺は叫んでいた。
ジンは簡単に言うが、そもそもお金を稼ぐのだって並大抵の事じゃない。
その大変さを知っているからこそ、俺は金が大切だと言っていた。
でも、それは本質ではない。
金なんかなくても、俺はジンと一緒にいたい。
「お前がずっと側にいてくれて、助けてくれたから俺はここまでやってこれた……お前が支えてくれなかったら、俺は……!」
俺はユタカみたいに神にすらなれる信念や、世界を救える強大な魔力がある訳でもない。
フランセーズみたいに国を背負えるほど強い意志がある訳でもない。
ジンみたいに努力家でもない、優秀でもない。
神から貰った力がなきゃ、俺には何もない、本当にただの凡人なのに。
ジンは静かに俺の手を口元に運んで口付けた。
「俺は臆病だった……自信がなかった……。先生に拒絶される事が一番怖いと思っていたから。でも……やっとわかったんです。俺は拒絶されたところで先生を諦められないし、一番怖いのは何もしないうちに先生を誰かに取られることだって」
「ジン……」
「怖がってる場合じゃなかった。先生……俺は、先生を一人の男として愛しています。家族としても愛していますけど、心も体も全部欲しい。あんな形で体を繋げてしまいましたが、それすら紛れもなく俺の欲望でした。順番が色々おかしくなってしまいましたが……好きです。愛しています。先生、俺と結婚を前提に付き合ってください」
俺達は握る両手に力を込めて、二度と離さないとでも言いたげで。
互いを見つめる視線だって離さずいる。
もう俺の返事は決まっているのに、息が詰まって、声を出そうにもヒグッとかエグッとか変な音しか出ないのだ。
早く気持ちを伝えたいのに伝えられなくてもどかしい。
そう焦れば焦るほど、嗚咽がより酷くなる。
「ねえ、先生」
ジンは俺を抱きしめた。
俺の涙やら鼻水やらよだれがジンの胸元を汚してしまうのも構わずに俺の後頭部をゆっくり撫でてくれる。
「みんな、強姦じゃなくて合意だって言うんです」
「……ん」
俺は頷いた。
「先生も俺のことを好きなんだって、みんな言うんですよ」
「……ぅん」
再び頷く。
本当、俺達には心強い仲間がいて良かった。
後押ししてくれる友人達がいなければ、互いに気持ちを誤魔化し、すれ違い、離れていたかもしれない。
俺はようやく少しだけ呼吸が落ち着く。
ジンもそれに気付いたのか、大事な部分を再び聞いてくれた。
「俺と……結婚してくれますか?」
「……う゛ん!」
頷くだけじゃ足りなくて、俺は精一杯ジンの背中に腕をまわして掻き抱く。
ジンの言うカッコイイ大人な俺とは真逆の返事になって恥ずかしい。
でも、これくらいが俺らしいと思った。
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