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【最終章】魔王を護る黒騎士
エピローグ *ユタカ視点 -寝室後編-
俺はユタカ。
挙式を無事終えた俺はリズ様と魔城の寝室で愛の営みをしていた訳なのだが、この一年でリズ様が行為中に辛そうにしているのが気になっていた。
リズ様は気持ち良いと言うし、魔力の流れも苦痛を感じている様子はない。
しかし、何がキッカケで嫌われてしまうかわからない。
小さな綻びでも大きく影響が出るかもしれないし、俺はリズ様に不満がないか直接聞いてみた。
「ふむ。ではユタカに伝わりやすくするか……まだ勃つか?」
するとこれだ。
既に二回俺はリズ様の中に出しているが、まさか次の誘いがあるとは思わなくて驚いた。
「えっ、あ、ハイ!」
実は行為に飽きているのではとリズ様を心配していたはずなのに、俺は元気に返事をしてしまう。
しかも俺の返事を聞くやいなや、リズ様は俺の性器を口に含んで舌を絡めた。
「アッ……ん、リズ、さま……ッ」
「は……ッんむ……ふぅ……ふふ、もう大きくなったな」
即座に臨戦態勢になった俺の先端を、リズ様は指先でいやらしく撫でた。
こんなに愛おしそうに触れるのだから、確かにリズ様がセックスに嫌な印象を持っているようには思えない。
リズ様は気持ちが良くて声を押し殺してしまうと言っていた。
そういう反応もあると理解しているはずなのに、俺の中にある『沢山喘いでいた方が気持ち良さそう』という固定観念が邪魔をしていたのだと思う。
俺は無責任にそれをリズ様に押し付けているんだと自覚して、胸の奥がズシリと重く感じた。
「あの、リズ様……」
「なんだ?」
「俺、最低な事言ってますよね……俺にとってわかりやすい反応が欲しいなんて、自分でどうこうできるものじゃない部分にケチをつけてるなんて……」
自分の未熟さが嫌になる。不仲になるとすれば、俺の愚かさが原因だ。
リズ様は俺が気落ちしている事に気付いたのか、頭を優しく撫でてくれた。
「言いにくい事を我慢して、不仲になるのが嫌なのは私も同じだ。要は私が快感を得ているとユタカに伝わればいいのだろう?」
なんという事もないように言うリズ様。
俺の全てを包み込むリズ様の優しさに救われる。
「ユタカ、私の中へ来てくれ」
「……はい」
甘い誘いに抗える筈もなく、俺はリズ様の脚を抱えて中心を押し進む。
「ん……ぁ……あ」
柔らかく熟れたソコは俺を嬉しそうに迎える。
そう感じる程に、リズ様の中は俺をギュウギュウと締め付けた。
熱い抱擁をされているみたいだといつも思う。
「……はぁ……ユタカ……しばらく、そのままにしていてくれ」
「わかりました」
俺が奥まで行き着くとリズ様はそう言った。
動かずにリズ様の様子を窺うと、リズ様は自らのヘソの下辺りに指先を走らせ、何かを書いているようだった。
「ウッ……はぁ、んぅッ」
「リズ様!?」
書いている途中にリズ様があられもない声をあげてビックリした。
声に合わせてリズ様の中もビクビクと強く蠢いている。
「ユタカ……ッ突いて……」
「っぁ、はい!」
言われた通りに俺は腰を動かす。
数度叩きつけた後、リズ様の下腹が淡く輝いた。
「えっ」
「……ぅ……ん……ッ」
花のような紋章が浮かび、何度も小さく輝いている。
リズ様の小刻みな震えと連動しているような。
俺は驚きつつも動きを再開する。
「っ……ぅ……」
リズ様が顔を顰めて苦しげに息を飲んでいるが、下腹の花は消える事なく光っている。
過去に性的な事を沢山調べたのだが、その時に知った“淫紋”を思い出していた。
この輝きがリズ様の絶頂や快感を知らせているなら、確かにわかりやすい。
俺はありがたくその花を眺めながら、リズ様を存分に責め立てた。
◇◇◇
「そう、まさに淫紋だ」
互いに事後の気怠さに負けてベッドでゴロゴロしている中で、リズ様はそう言った。
今は光もなく何も見えないが、魔力を通した視界だとその印は見る事ができる。
「種類は色々あるが、これは性奴隷の調教用に使われるタイプのものだ。演技ではなく完全に身体が仕上がっているかを確認するためのな」
「うっ……なんかすみません」
俺のワガママに付き合ってそんなものを。
もう十分リズ様が満足してくれている事がわかったので今回限りで大丈夫だ。
「それって一回きりで消えるものなんですか? それとも解除するものなんでしょうか……」
恐る恐る俺はリズ様に聞いた。
リズ様はそれはそれは美しく愉快そうに目を細め、口を三日月のようにつり上げた。
とても嫌な予感がする。
「これは言わば隷属の証。一度刻めば二度と消えない。なに、天使に説明した私がユタカの奴隷であるという嘘が本当になっただけの話だ。訂正する手間が省けたな」
「……ま、マジですか」
「本気も本気。大真面目だ」
唖然とする俺の頬にリズ様は楽しそうに微笑みながらキスをする。
俺と魔力で繋がり、指輪で来世を繋ぎ、更に隷属まで。
今までリズ様は俺にまだ逃げ道をつくってくれていた。結婚までは解除が可能だった。
だが、指輪はもう外せず、互いの魂を縛った。その誓いがリズ様を吹っ切らせたのかもしれない。
俺が付き従う側であると疑わなかったのに、まさかリズ様が奴隷になるなんて。
最初はリズ様が『愛』という知らない感情に、なんとなく流されてくれていると思っていた。
俺はそれに上手くつけこめていると思っていた。そうして掴んだ相思相愛だと思っていた。
しかし、俺はとんでもない誤解をしていたみたいだ。
リズ様は幾重にも俺に太い鎖を巻き付けている。
あらゆる手段で俺という存在に入り込み、何があっても手放さないという執念を感じる。
俺の背筋にゾクリと寒気が走った。
「どうしたユタカ……私が怖いか?」
深い闇が見え隠れする瞳が俺を見つめる。
挑発するような笑みを浮かべるリズ様はやっぱり美しくて、その底の見えない暗さに、このお方は魔王で神なのだと改めて実感する。
なのに、俺と繋がっているリズ様の魔力は不安に揺らめいているのだ。
「怖がっているのはリズ様でしょう?」
俺はそう言ってリズ様を抱き寄せ、深い口付けをした。
頼りなげに俺に身を委ねる姿はまるで幼子のようだ。
さっきまで何度も抱いていたのに、まだ俺の身体はリズ様を求めていた。
リズ様が自ら刻んだ隷属の証を俺は何度も撫でる。
「俺が怖いと感じたのは、リズ様にじゃなくて自分にです。あなたの騎士でありたかった。あなたに付き従う事が幸せだと思っていたのに……こうしてリズ様が俺のモノになったとわかった途端、それに喜びを感じてしまったんです」
「……喜んでくれるのか」
「リズ様がどんどん俺の事を好きになってくれてるんだなって実感できて嬉しいですよ」
俺は気付いていた。
リズ様が本当に俺を愛すようになり、人の知識を持っているが故に人ではない愛し方をする己を恐れている事に。
だからちゃんと伝えなければ。
「俺がいつか人でなくなった事に後悔したら、リズ様と出会わない未来を与えるって言ってましたよね」
「ああ……言った」
「でも、もうリズ様は選べない。選びたくない」
「……ああ」
「ふふ、やっと俺はリズ様が手放したくないと思える存在になれたんですね」
そう言って、黒く長い髪を手に取り口付け微笑むと、リズ様は目を見開いた。
それから安心したように表情を緩める。
「人をやめさせたのに、人であるユタカが好きなんだ」
「はい」
「……それは、私の我儘だろうか」
神はよっぽどの事がなければ死ぬことのない存在なのに、リズ様は来世を考えていた。
言いはしないけど、俺が人の心を失った時の事を想定していたんだろう。
リズ様は俺の事でこんなにも悩み、苦しんでいる。
それすら嬉しいと思ってしまうんだから、俺達はお似合いの夫婦だと思う。
「ねえリズ様。指輪を貰った時に俺は決めたんです。俺が俺でなくなったら今世を終わらせると」
「ユタカは、それで……いいのか?」
「終わりが選べるなんて、人間ではなかなかできませんからね、幸せな事だなって思いますよ」
もうリズ様の顔に暗さはなかった。
深く頷いて、ハッキリと言った。
「人は強いな」
「はい」
これからも互いに不安を抱えたり、変化に怯えるのだと思う。
それでも変わらないのは相手を愛しているという事だ。
最も大切なその部分が強固であれば心配ない。
それに、それはまだまだ先の話なのだ。
こんな心配をしていたという事すら思い出になり、笑い合うようになると俺は確信していた。
◇◇◇
しかし、淫紋によって隷属と言われ、どれだけリズ様との関係が変化するのかとても気になっていた。
確認したら、淫紋は登録した俺のモノ以外が侵入しようとすれば相手が焼け死ぬというなかなか過激な貞操帯だった。リズ様に害がないようなので安心した。
一番の変化は、俺の意思でリズ様が妊娠可能になったことだろう。
俺がリズ様の花の両側に葉のような紋様を追加すれば良いらしい。
確かに、そんな重要な事を一方的に決定ができてしまうのは隷属関係とも言えるかもしれないが、相思相愛の俺達にはなんの問題もなかった。
結局俺はリズ様の手のひらの上で踊らされたんだと悟った。
リズ様は魔王様というより小悪魔だと思ったのは内緒だ。
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