魔物になった四人の臣下を人間に戻すため王様は抱かれて魔王になる

くろなが

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【四章】王と魔王

二話

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 クワルク、エダムと共にしっかりと昼まで眠った俺は、カンタルに呼ばれて研究所で食事となった。
 すでにウルダとリヴァロは席についている。
 ちなみに娼館の支払いは飲み物一杯程度の金額だった。本当にどうやって判定しているんだ。そこら辺のシステムが気になってしまうが、今はそんな場合じゃない。

 人魔は人間の要素が強いため飲食は必須ではないものの、食事からの方が栄養を摂取しやすいそうだ。
 魔物の部分が最低限の命を繋ぐため、食べなくても死ぬ事はないらしい。人魔の体は便利だなぁ。


 カンタルの足をぶつ切りにして味を付けて揚げたものは、外はカリカリしていながらも中はジューシーで本当に美味しかった。今度俺も肉虫を差し入れようかな。食材の見た目を気にしない者達なら気に入ると思う。
 食事をしながら、カンタルは町の様子を報告してくれた。


「人魔の王という初めての存在が生まれ、パニールの王は“魔王”と称する事になりました。人間も人魔も魔物も共存できる国として、民は動揺も混乱もなく受け入れております。魔王様はわしの父親だと説明したら誰もが納得してくれましたわ、ホッホッホ」


 研究所に来るまでの道ですれ違った子供に『魔王様だ』と言われた理由はこれか。
 俺がカンタルの父親だという紹介だけで民がすんなり受け入れてしまうのだから、カンタルの人望の厚さがわかる。
 いつまでもカンタルにおんぶに抱っこでは情けない。カースと悪魔の件が片付いたら、俺もしっかり民に挨拶しなければ。
 食事も落ち着いた所で、長モードを解いたカンタルが今後について聞いてきた。


「パパ、これからどうするつもり?」
「ひとまず、皆にやってもらいたい事がある」


 そう言って全員を顔を見渡すと、真剣な面持ちで頷いてくれる。
 これからは対カースに備えての行動となる。


「リヴァロは召喚魔術の研究をしてくれ。勿論、目的は悪魔召喚だ。まだまだ知らない契約方法や未知の情報があるだろうからな」
「はいよ」
「クワルクは悪魔そのものの調査を頼む。弱点でも好物でも、今は何でも知りたい」
「お任せを」


 まずはあの悪魔という反則級の存在をどうにかしないと話にならない。
 パニールの研究所はお世辞にも大きな施設とは言い難い。しばらくの間カンタルから資料や機材を借りて、俺達は塔のあった場所を拠点とする事になるだろう。
 しかし、本格的な研究となると今はまだ設備も道具も揃っていない。次に俺はエダムに声を掛けた。


「エダムはシャウルスの所へ行って、現状報告と協力の要請を。パニールは小国だから、戦争になった場合の後ろ盾が欲しい。あとは魔術研究所を使わせて貰えないかも確認してくれ」
「かしこまりました」


 元ユンセンの魔術研究所が今も稼働している事は俺自身が確認している。
 ちゃんと未来の魔術師達のために活用してくれて嬉しかった。
 俺が建てた魔法学校も図書館も全て運営が続けられており、新しい知識を得るにしろ、古い知識を得るにしろ、ブルーミー以上に適した研究拠点はないだろう。
 シャウルスが許してくれれば、ブルーミーでしばらくは研究させて貰いたい。


「カンタルから見てブルーミーの王はどんな感じだ?」
「ブルーミー国王は代々パニールに対してとても友好的だよ。ずっと魔物になったオレにも親切にしてくれてる。ユンセンと統合してからは一番大きな国になったし、パパへの義を感じるね」
「そうか。ユンセンをブルーミーに任せたのは正解だったようだ」


 当時のブルーミーの王はシャスランという、場を和ませる空気を纏った不思議な男だった。
 虫も殺せなさそうな、ふわふわニコニコした王だが、妻が十人おり、誰が第一夫人だとかいう区別は無かった。俺と四人を同時に娶ろうとするシャウルスがシャスランの血筋なのは間違いない。

 シャスランは差別意識もないし、俺の事をよく気に掛けてくれた。
 物資を融通してくれる対価として俺は武力を貸していた。持ちつ持たれつで良い関係だったと思う。
 口に出してはいなかったが、俺は今でもシャスランを親友だと思っている。

 数百年経った今もユンセンはブルーミーという名になっただけで、ほとんど変化もなくそのままの姿を残していた。
 それがシャスランからの友としての敬意のように感じて嬉しくなったものだ。


 ──だから、口約束ではあったものの、何かあれば本当にシャウルスに輿入れしても良いとさえ思っていた。
 もちろん、今はもうその選択肢は無くなったがな。

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