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第16章 新婚初夜(千寿編)
第43話 洋装と和装
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結婚が決まってしまえば話は早い。
翌日から変わったのは千寿の部屋。
使用人向けの部屋も千寿にとっては十分なものだったが…
「ここ…です…か?」
一段と広い部屋が用意され、家具も寝具も豪華なものに変わった。
「よいしょっと」
とりあえず、これまでに綾香夫人から頂いた洋服や着物をタンスに収めたものの、空いている引き出しや棚の方が多い。
「これから千寿の好みでいろいろそろえて行けば良いのよ」
「…はい、ありがとうございます」
綾香夫人の言葉に千寿も小さくうなずいた。
幸や静、通いの女中達の態度も変わる。
これまでは「千寿ちゃん」「千寿さん」と呼んでいたものが、「若奥様」となった。
「そんな、まだ…」
千寿は恥ずかしそうにして断ろうとしたものの、そんな態度も皆の微笑みを誘った。
「なじんでいるからなあ」
唯一、源太郎だけが「千寿ちゃん」と呼び続けたが、それも千寿にとってはうれしいもの。
そして千寿は「若奥様」と呼ばれても、家事に精を出す姿は変わらなかった。
千寿の結婚について実家にも連絡が届く。
千寿の実家である鳴海家にしても、結婚について反対するはずもない。
都合を合わせて日取りの良い日を選んで両親が上京しての結納が行わる。
「お父様!お母様!」
「おお!千寿か、見違えたぞ!」
「千寿、本当にきれいになって」
そこから間を置かずに結婚式が行われる。
千寿の両親はもちろん、兄弟姉妹や近しい親戚がそろって上京した後、皆盛装で式に参列した。
「お姉ちゃん、とってもきれい」
「若奥様、素敵」
「千寿、とっても似合ってるわ」
神前式ながら千寿はウェディングドレスで伸佑はモーニング姿。
「ほら、伸佑も何か言わんか」
「…きれいだ」
「ありがとうございます」
その後に両親の希望もあり、千寿は文金高島田と金襴緞子の和装となり、伸佑は五つ紋の黒羽織姿となった。
「世が世なら若殿様と奥方様ですしねえ」
「まさに一幅の掛け軸ですな」
「いやあ、本当に目の保養だよ」
結婚式が終わった後は披露パーティーとなり、和洋の料理と共に酒が振舞われる。
家族や親族、そして招待客が盛り上がる中、夕刻になって千寿が一足先に場を後にする。
伸佑も頃合いを見計らってパーティーの席から外れた。
「お坊ちゃま、お疲れ様です」
幸が声をかけて伸佑を居間へと引っ張っていく。
居間では、軽めの食事を前に千寿が伸佑を待っていた。
「お待たせー」
伸佑が部屋に入ると、千寿が立ち上がって迎える。
「それでは、私はこれで。後は若い人達で…」
思わせぶりな笑みを浮かべつつ幸が居間を出ていくと、部屋には2人っきりとなる。
かすかにパーティーの喧騒が聞こえるものの、2人は互いの心臓の音の方が大きく感じた。
「伸佑…様、どうぞ」
「ああ、千寿は?」
「伸佑…様をお待ちしていましたので」
「一緒に食べようよ」
「はい」
式やパーティーの最中、ほとんど何も食べられなかった千寿。
そして酒ばかりを勧められた伸佑。
振り返れば、全くの2人きりで食事を取るのは初めてだった。
ご飯やおかずを口に運びながら、チラリチラリと相手を見る。
時折視線が合うのだが、どちらもサッと視線を反らしてしまう。
「お代わりは?」
「あー、いや、一膳でいいや」
「はい」
後片付けをしつつ、千寿は「お風呂の用意ができております」と告げる。
伸佑は「一緒にどう?」と言いかけたが、自重と観察力が勝った。
「千寿はもう済ませたの?」
「はい、少し前に」
「じゃあ、入ってくるよ」
「先にお待ちしております」
「ああ」
湯殿から上がった伸佑は自分達の寝室に向かう。
早くも肉棒は元気になっており、はやる気持ちを抑えつつ、わざとゆっくり歩く。
寝室に入ると灯りは抑えめになっていた。
ベッド脇のテーブル前に千寿は座って待っていた。
「何かお飲みになりますか?」
「うーん、水を一杯貰おうかな」
向かいに座った伸佑に水を注いだグラスを手渡そうとすると、伸佑は手ごと握りしめた。
「あ、お坊ちゃま!」
つい千寿が言ってしまう。
伸佑がクスッと笑うと、千寿は顔を赤らめてうつむいた。
できるだけ「伸佑」と呼ぶように頼まれていたが、千寿はどうしても「様」を付けてしまう。
そんな千寿が一番言い慣れているのは、やはり「お坊ちゃま」だった。
グラスを受け取った伸佑は一気に水を飲み干す。
「ふぅ」
グラスをテーブルに置くと、小さく「コトン」と音がする。千寿の肩が小さく震えた。
「ベッドに行こうか」
千寿は無言で小さくうなずいた。
翌日から変わったのは千寿の部屋。
使用人向けの部屋も千寿にとっては十分なものだったが…
「ここ…です…か?」
一段と広い部屋が用意され、家具も寝具も豪華なものに変わった。
「よいしょっと」
とりあえず、これまでに綾香夫人から頂いた洋服や着物をタンスに収めたものの、空いている引き出しや棚の方が多い。
「これから千寿の好みでいろいろそろえて行けば良いのよ」
「…はい、ありがとうございます」
綾香夫人の言葉に千寿も小さくうなずいた。
幸や静、通いの女中達の態度も変わる。
これまでは「千寿ちゃん」「千寿さん」と呼んでいたものが、「若奥様」となった。
「そんな、まだ…」
千寿は恥ずかしそうにして断ろうとしたものの、そんな態度も皆の微笑みを誘った。
「なじんでいるからなあ」
唯一、源太郎だけが「千寿ちゃん」と呼び続けたが、それも千寿にとってはうれしいもの。
そして千寿は「若奥様」と呼ばれても、家事に精を出す姿は変わらなかった。
千寿の結婚について実家にも連絡が届く。
千寿の実家である鳴海家にしても、結婚について反対するはずもない。
都合を合わせて日取りの良い日を選んで両親が上京しての結納が行わる。
「お父様!お母様!」
「おお!千寿か、見違えたぞ!」
「千寿、本当にきれいになって」
そこから間を置かずに結婚式が行われる。
千寿の両親はもちろん、兄弟姉妹や近しい親戚がそろって上京した後、皆盛装で式に参列した。
「お姉ちゃん、とってもきれい」
「若奥様、素敵」
「千寿、とっても似合ってるわ」
神前式ながら千寿はウェディングドレスで伸佑はモーニング姿。
「ほら、伸佑も何か言わんか」
「…きれいだ」
「ありがとうございます」
その後に両親の希望もあり、千寿は文金高島田と金襴緞子の和装となり、伸佑は五つ紋の黒羽織姿となった。
「世が世なら若殿様と奥方様ですしねえ」
「まさに一幅の掛け軸ですな」
「いやあ、本当に目の保養だよ」
結婚式が終わった後は披露パーティーとなり、和洋の料理と共に酒が振舞われる。
家族や親族、そして招待客が盛り上がる中、夕刻になって千寿が一足先に場を後にする。
伸佑も頃合いを見計らってパーティーの席から外れた。
「お坊ちゃま、お疲れ様です」
幸が声をかけて伸佑を居間へと引っ張っていく。
居間では、軽めの食事を前に千寿が伸佑を待っていた。
「お待たせー」
伸佑が部屋に入ると、千寿が立ち上がって迎える。
「それでは、私はこれで。後は若い人達で…」
思わせぶりな笑みを浮かべつつ幸が居間を出ていくと、部屋には2人っきりとなる。
かすかにパーティーの喧騒が聞こえるものの、2人は互いの心臓の音の方が大きく感じた。
「伸佑…様、どうぞ」
「ああ、千寿は?」
「伸佑…様をお待ちしていましたので」
「一緒に食べようよ」
「はい」
式やパーティーの最中、ほとんど何も食べられなかった千寿。
そして酒ばかりを勧められた伸佑。
振り返れば、全くの2人きりで食事を取るのは初めてだった。
ご飯やおかずを口に運びながら、チラリチラリと相手を見る。
時折視線が合うのだが、どちらもサッと視線を反らしてしまう。
「お代わりは?」
「あー、いや、一膳でいいや」
「はい」
後片付けをしつつ、千寿は「お風呂の用意ができております」と告げる。
伸佑は「一緒にどう?」と言いかけたが、自重と観察力が勝った。
「千寿はもう済ませたの?」
「はい、少し前に」
「じゃあ、入ってくるよ」
「先にお待ちしております」
「ああ」
湯殿から上がった伸佑は自分達の寝室に向かう。
早くも肉棒は元気になっており、はやる気持ちを抑えつつ、わざとゆっくり歩く。
寝室に入ると灯りは抑えめになっていた。
ベッド脇のテーブル前に千寿は座って待っていた。
「何かお飲みになりますか?」
「うーん、水を一杯貰おうかな」
向かいに座った伸佑に水を注いだグラスを手渡そうとすると、伸佑は手ごと握りしめた。
「あ、お坊ちゃま!」
つい千寿が言ってしまう。
伸佑がクスッと笑うと、千寿は顔を赤らめてうつむいた。
できるだけ「伸佑」と呼ぶように頼まれていたが、千寿はどうしても「様」を付けてしまう。
そんな千寿が一番言い慣れているのは、やはり「お坊ちゃま」だった。
グラスを受け取った伸佑は一気に水を飲み干す。
「ふぅ」
グラスをテーブルに置くと、小さく「コトン」と音がする。千寿の肩が小さく震えた。
「ベッドに行こうか」
千寿は無言で小さくうなずいた。
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