【R18】おのぼりさんが帝都の貴族屋敷で奉公することになりました【完結】

県田 星

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第15章 突然の宣言(善吉編)

第42話 家族4人で

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「ねえ、春奈さん」

集まった親戚のひとりが切り出した。

「子爵家と書生では、さすがに身分が…」

最後まで言いきらなかったものの、明らかに難色を示していた。
その意見に同意のようで、言葉こそ発しないものの、うなずく親族もいる。

「身分?」
「ええ、まあ…」

春奈は善吉に合図して下に降ろさせると、皆に向き直る。

「お父様はどう思いますの?」

春奈は父である健太郎に尋ねる。

「いや、身分と言ってもなあ。善吉も…」

健太郎の後に春奈が続ける。

「善吉の岡岳おかたけ家も元々は黒峰家から分かれたもので、江戸の頃には家老も務めたことのある家柄ですわ」
「まあ、そうだな」
「維新をくぐり抜けて華族と士族に分かれましたが、それほどまでに家格に違いがあるとは思えませんの」

春奈が言い切ると、先に「身分が」と言い出した親戚が目を伏せた。

「お父様にお尋ねします」

春奈が健太郎を見る。

「私の婿として善吉は足りませんか?」

健太郎が真っ先に思い浮かべたのは、善吉が施してくれる整体だ。
その後の夫人との交わりも合わせて、もう善吉の整体なしの暮らしは考えられないくらいだ。
それと合わせて、日ごろの誠実さや事業に欠かせない片腕となっていることも思いだす。

「そんなことはない。善吉なら春奈の婿としてふさわしいな」

うれしそうに微笑んだ春奈は、春代夫人にも同じように問いかけた。

「お母様はいかがですか?善吉は婿になり得ませんか?」

春代夫人は「いいえ」と即答した。

そんな春代夫人の脳裏に浮かんだのは、やはり整体のこと。
夫である健太郎との交わりが復活したこともうれしかったが、それ以上に善吉の整体が女としての新たな楽しみとなっていた。

「善吉が黒峰の婿に来てくれたらうれしいわ。この先も一緒に暮らせるし」

善吉に向かって春代夫人が微笑むと、善吉が額の汗をぬぐいつつ無言で頭を下げた。

両親の意向を確認した春奈は、善吉の方を向くと改めてゆっくりと告白した。

「善吉、突然ごめんなさい。でも私の気持ちに嘘は無いの。私と結婚してくれる?」
「私で…よろしいのですか?」

善吉が聞き返すと、春奈は大きくうなずく。

「善吉が奉公に来て以来、これまで知らなかったことをたくさん教えてもらったわ」
「…はあ」

“教えてもらった”とは、言うまでもなく“まら勉強”のこと。

「男の人のまらが、あーんなにいろいろと変わるなんて、善吉ので試すまで知らなかったの。善吉だけ気持ち良くなってたのは、ちょっと不満足だけど。一度だけ気持ち良くしてもらったしね」

さすがにそこまでは口に出せない。

「善吉から見ればわがままな娘なのだろうけど、私はこの先ずっと善吉と一緒にいたいの」

そこまで聞いた善吉は春奈の手を取って力強く握る。

「私でよろしければ、ぜひよろしくお願いいたします」
「うれしい!」

春奈は善吉に飛び付くと、その頬に思い切り吸い付いた。

「まあ、春奈さんったら」

集まった親戚や知人の中には、まだ渋い顔をする者もいたが…

「とってもお似合いですわ。ねえ、皆さん!」

そう言って場を盛り上げたのは、ふすまの側にいた福だった。

「できるだけ応援するからさ」

以前に福が湯船で言った言葉を証明した格好。

福と智が拍手すると、健太郎と春代夫人もそれに続く。
親戚の何人かが手を叩き始め、最後には全員が祝福の拍手を送った。

春奈を床に降ろした善吉が皆に向かって深く頭を下げる。
それに習って春奈も軽く頭を下げた。

「まさに瓢箪ひょうたんからこまだったか」
「ただ、お似合いだったなあ」
「両想いでしたら、私達の出る幕ではありませんね」
「何でも黒峰くろみね騎士きしと呼ばれているそうだ」
「ええ、聞いたことありますわ」

縁談を持ち込んできた親戚や知人が黒峰家を後にした。

「ごゆっくりどうぞ」

後片付けを終えた福と智が居間を出ていく。
残ったのは黒峰家の3人と善吉。

春奈がこれ以上ないくらいにうれしそうにしているのに対して、善吉は表情も姿勢も固い。

「ところで、だ。善吉」
「は、はいっ!」

健太郎が厳しい顔で息子となるであろう善吉に問いかける。

「お前、春奈に手を出していないだろうな」
「えっ!?」

途端に善吉がうろたえる。
どちらかと言えば、春奈に手を出されて、出されて、出されまくって気持ち良くさせられている方だ。
そして1回だけながら、春奈の乳房を触り、陰部を舐めまわし、尻の穴に舌をねじ込んだこともある。

「おい、何かあるのか?」
「いや、その…」

春代夫人が善吉をかばう。
むしろ善吉に手を出されているのは春代夫人だ。

「ねえ、あなた、善吉を信じてあげないと。ねえ、春奈」
「お父様は善吉を信じられないの?」
「それは、まあ、そうだなあ」

その後も健太郎からの控えめな問いかけが続く。
善吉は、休みの日にいろんなところに連れて行くよう頼まれたり、いろいろとご馳走になっていたことを明かした。

「おい、春奈、せっかくの休みが何にもならんではないか」
「そうよ、善吉が疲れてしまうわ」
「…ごめんなさい。反省するわ」

そこで健太郎は念押しで聞いてくる。

「と言うことは、その時に連れ込み宿とかに行くように命令されて春奈が押し倒したってことはないだろうな?」
「いいえ、そんなことは全く」

善吉はしっかり否定する。
春奈は呆れたように「「お父様!」と怒鳴どなった。

「とにかく!」

健太郎は立ち上がって、善吉を睨みつけた。

「結婚は許す。しかし結婚まで手を出すことは許さんからな!」
「はいっ!」

善吉はしっかりと返答したのを聞いて、健太郎は満足そうにうなずく。
その陰で春奈は不満そうな顔をみせ、それに気づいた春代夫人が微笑んだ。

「当たり前だろう。大事な一人娘なのだからな。そして結婚しても、生涯大切にするんだぞ」
「はい、父上」

健太郎は「父上」と呼ばれて驚くが、まんざらでもなさそうな顔をした。

「あら、私は呼んでくれないの?」

春代夫人が不満げに言う。

「おくさ…いえ、母上もよろしくお願いいたします」
「やっぱり息子ってのも良いわねえ」

春奈が善吉の腕にしがみつく。

「お父様もお母様も、善吉を取らないでよ!」

黒峰家の居間が笑いに包まれた。
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