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第167話 消えた女(少しH描写あり)
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「ようこそお越しくださいました」
デュランの姿を認めたヴァーチエイドは丁寧に頭を下げた。
公爵家と伯爵家の兼任執事の収入であっても、高級娼館「甘い口づけ」ともなれば、月に1回来られるかどうか。
だからと言って、それで態度を変えるヴァーチエイドではない。
「夜くらいまで、ゆっくりしようと思って」
「かしこまりました」
ヴァーチエイドが傍らの男に視線を向けると、男がデュランを席まで案内する。
「こちらへどうぞ」
「ああ」
まだ日が高いだけに客も女も多くない。
それでも娼館ならではの雰囲気にあふれている。
デュランは正面に並んだ女達に目をやるが、お目当てが見当たらない。
「アルカンはいる?」
馴染みの名前を口にした。しかし男は首を振る。
「休み?それともまだ寝てるとか?」
デュランの冗談にも、男は再度首を振って「いえ」と否定する。
「もうアルカン様は、こちらにはいらっしゃいません」
「………そうか」
デュランが「どこに…」と聞きかけたところで、男が口を固く閉じて目を伏せた。
娼婦の行き先など、聞かれて答えるものでもなければ、聞くこと自体が礼儀知らずでもある。
「少し考える。酒と何か…」
「かしこまりました」
男が手を振ると、別の男がすぐに酒と食べ物を持ってきた。
「どうぞごゆっくり」
「うん」
女達を眺めながら、アルカンの言葉を思い出す。
「ミュルガリル様がそうして今のお店を持ったので」
「貴族様のお屋敷で私を見かけても、知らないふりをしてくださいね」
「貴族様とまでは行かなくても騎士様とか、お金持ちの商人とか、地方の地主とか」
どんな道に進んだのかは分からないが、今のデュランにできるのは幸せを祈るのみ。
そして、どこかで会った時のために…
「知らないふりの練習か」
並んだ女達をゆっくりと眺めた。
気のない素振りをする女もいれば、視線だけ送ってくる女、笑みを見せる女、体ごとこちらに向けて手を振る女もいる。
アルカンと同じく黒髪の女が目に付いた。
デュランは軽く手を上げる。
近寄って来た男に「あの黒髪で黄色いドレスの…」とささやいた。
すぐに男が女を連れてくる。
「初めまして、スタルティスです」
優雅に頭を下げると、デュランに密着して座る。
いきなりの接触にデュランが体を固くすると、スタルティスが微笑みながらデュランに腕を絡めた。
「えっと、飲む?」
「いただきます」
乾杯をした後、他愛のない話をする。
ついデュランはアルカンのことを尋ねたくなるが、何とか口からこぼれるのを耐えた。
「よろしければ、そろそろ…いかが?」
スタルティスの方から誘われたのを幸いとデュランも応じた。
個室に入ると、スタルティスがデュランに抱き着いて唇を重ねる。デュランもスタルティスの唇を吸う。
そのままベッドに進もうとしたデュランにスタルティスがささやく。
「ここだけの話にしてくださいね」
「何を?」
「アルカンのこと、知りたくありません?」
デュランが「知ってるの?」と尋ねると、スタルティスはうなずいた。
スタルティスはデュランがアルカンばかりを指名していたのを知っていた。
「本当は話しちゃだめなんですけど、とーっても心配そうに見えたので。どうします?」
聞かれたデュランは「うーん」と悩む。
聞きたい気持ちは山々ながら、聞きたくないとの思いもある。
「君が罰を受ける…なんてことは?」
「さて、どうでしょうね。まあ、独り言を言うだけですし」
スタルティスがクスクスと笑う。
「…聞きたいな。独り言」
そっぽを向いたスタルティスは「とある貴族様の後添えになったそうですよ」とつぶやいた。
デュランは寂しそうな顔をしながらも、安心した様子を見せた。
「ぜーったい内緒にしてくださいね」
「それなら、口封じが欲しいな」
デュランが唇を突き出すと、クスッと笑ってスタルティスが強めに吸い付く。
2人は抱き合ったままベッドに倒れ込んだ。
汗で額に髪を張り付けたスタルティスが、精液と愛液に濡れたデュランの肉棒をぬぐう。
「んっ」
敏感な刺激を受けてデュランが腰を浮かせた。
スタルティスが微笑みつつ、デュランに覆いかぶさった。
チュッ!
「もう一度、します?」
スタルティスの手がデュランの肉棒をさする。
3度の放出を重ねながら、またも硬さを取り戻していく。
「いや、そろそろ戻らないと」
名残惜しそうに言いつつ、デュランもスタルティスの唇を吸い、乳首をつまんだ。
「あんっ」
負けずにスタルティスもデュランに肉棒を握る。
強く互いの唇を吸い合って、3度の交わりが終演に至った。
「よかったら、また指名してくださいな」
ディランが苦笑する。
「月に一度、来られるかどうか…だよ」
「それでもお待ちしています」
「…次に来た時はいなくなってたりして」
デュランの軽口にスタルティスが笑った。
「その時はどこかの貴族様に引き取られたと思ってください」
「あはは」
「デュラン様のお相手をすると貴族様に引き取られる、なーんて評判が立つかもしれませんね」
したたかな考えに、デュランは「むう」とうなり声をあげた。
かろうじて「それは、モテるかな」とひねり出す。
「ええ、いーっぱいモテますよ」
笑顔のスタルティスに見送られて、デュランが「甘い口づけ」を後にする。
すっかり辺りは暗くなっていた中で、デュランの腰と心がいくらか軽くなっていた。
デュランの姿を認めたヴァーチエイドは丁寧に頭を下げた。
公爵家と伯爵家の兼任執事の収入であっても、高級娼館「甘い口づけ」ともなれば、月に1回来られるかどうか。
だからと言って、それで態度を変えるヴァーチエイドではない。
「夜くらいまで、ゆっくりしようと思って」
「かしこまりました」
ヴァーチエイドが傍らの男に視線を向けると、男がデュランを席まで案内する。
「こちらへどうぞ」
「ああ」
まだ日が高いだけに客も女も多くない。
それでも娼館ならではの雰囲気にあふれている。
デュランは正面に並んだ女達に目をやるが、お目当てが見当たらない。
「アルカンはいる?」
馴染みの名前を口にした。しかし男は首を振る。
「休み?それともまだ寝てるとか?」
デュランの冗談にも、男は再度首を振って「いえ」と否定する。
「もうアルカン様は、こちらにはいらっしゃいません」
「………そうか」
デュランが「どこに…」と聞きかけたところで、男が口を固く閉じて目を伏せた。
娼婦の行き先など、聞かれて答えるものでもなければ、聞くこと自体が礼儀知らずでもある。
「少し考える。酒と何か…」
「かしこまりました」
男が手を振ると、別の男がすぐに酒と食べ物を持ってきた。
「どうぞごゆっくり」
「うん」
女達を眺めながら、アルカンの言葉を思い出す。
「ミュルガリル様がそうして今のお店を持ったので」
「貴族様のお屋敷で私を見かけても、知らないふりをしてくださいね」
「貴族様とまでは行かなくても騎士様とか、お金持ちの商人とか、地方の地主とか」
どんな道に進んだのかは分からないが、今のデュランにできるのは幸せを祈るのみ。
そして、どこかで会った時のために…
「知らないふりの練習か」
並んだ女達をゆっくりと眺めた。
気のない素振りをする女もいれば、視線だけ送ってくる女、笑みを見せる女、体ごとこちらに向けて手を振る女もいる。
アルカンと同じく黒髪の女が目に付いた。
デュランは軽く手を上げる。
近寄って来た男に「あの黒髪で黄色いドレスの…」とささやいた。
すぐに男が女を連れてくる。
「初めまして、スタルティスです」
優雅に頭を下げると、デュランに密着して座る。
いきなりの接触にデュランが体を固くすると、スタルティスが微笑みながらデュランに腕を絡めた。
「えっと、飲む?」
「いただきます」
乾杯をした後、他愛のない話をする。
ついデュランはアルカンのことを尋ねたくなるが、何とか口からこぼれるのを耐えた。
「よろしければ、そろそろ…いかが?」
スタルティスの方から誘われたのを幸いとデュランも応じた。
個室に入ると、スタルティスがデュランに抱き着いて唇を重ねる。デュランもスタルティスの唇を吸う。
そのままベッドに進もうとしたデュランにスタルティスがささやく。
「ここだけの話にしてくださいね」
「何を?」
「アルカンのこと、知りたくありません?」
デュランが「知ってるの?」と尋ねると、スタルティスはうなずいた。
スタルティスはデュランがアルカンばかりを指名していたのを知っていた。
「本当は話しちゃだめなんですけど、とーっても心配そうに見えたので。どうします?」
聞かれたデュランは「うーん」と悩む。
聞きたい気持ちは山々ながら、聞きたくないとの思いもある。
「君が罰を受ける…なんてことは?」
「さて、どうでしょうね。まあ、独り言を言うだけですし」
スタルティスがクスクスと笑う。
「…聞きたいな。独り言」
そっぽを向いたスタルティスは「とある貴族様の後添えになったそうですよ」とつぶやいた。
デュランは寂しそうな顔をしながらも、安心した様子を見せた。
「ぜーったい内緒にしてくださいね」
「それなら、口封じが欲しいな」
デュランが唇を突き出すと、クスッと笑ってスタルティスが強めに吸い付く。
2人は抱き合ったままベッドに倒れ込んだ。
汗で額に髪を張り付けたスタルティスが、精液と愛液に濡れたデュランの肉棒をぬぐう。
「んっ」
敏感な刺激を受けてデュランが腰を浮かせた。
スタルティスが微笑みつつ、デュランに覆いかぶさった。
チュッ!
「もう一度、します?」
スタルティスの手がデュランの肉棒をさする。
3度の放出を重ねながら、またも硬さを取り戻していく。
「いや、そろそろ戻らないと」
名残惜しそうに言いつつ、デュランもスタルティスの唇を吸い、乳首をつまんだ。
「あんっ」
負けずにスタルティスもデュランに肉棒を握る。
強く互いの唇を吸い合って、3度の交わりが終演に至った。
「よかったら、また指名してくださいな」
ディランが苦笑する。
「月に一度、来られるかどうか…だよ」
「それでもお待ちしています」
「…次に来た時はいなくなってたりして」
デュランの軽口にスタルティスが笑った。
「その時はどこかの貴族様に引き取られたと思ってください」
「あはは」
「デュラン様のお相手をすると貴族様に引き取られる、なーんて評判が立つかもしれませんね」
したたかな考えに、デュランは「むう」とうなり声をあげた。
かろうじて「それは、モテるかな」とひねり出す。
「ええ、いーっぱいモテますよ」
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すっかり辺りは暗くなっていた中で、デュランの腰と心がいくらか軽くなっていた。
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