【R18】兄と2人で公爵様に嫁いでみました【完結】

県田 星

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第173話 雷と悲鳴

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「すごい雨だなあ」

窓の方を眺めたデュランがつぶやく。
夜の闇の中から飛んできた雨粒が窓ガラスを叩いている。

アラーナの寝室にいるのは、いつもの4人。
アリィ(アラーナ)、アラーナ(タルバン)、そしてパルマとデュラン。
寝る前のひと時に談笑していた。

「オリシホン川付近は降っていないそうですから」

パルマの言葉を聞いて、アリィ(アラーナ)がいくらか安心した顔をみせた

カルトメリらが出征して半月ほど。
小競り合いが2回、大きめの戦いが1回との報告があった。
そして多くはないが死者が出ているとも。

【1日も早く収まってくれれば】

皆がうなずく。もちろん豪雨に加えて、戦争もだ。

「念のため、少し様子を見て回ろうか」

アラーナ(タルバン)が立ち上がった。
ついて行こうと3人も立ち上がったが、アラーナ(タルバン)は女2人を留める。

「アラーナとパルマは、もう休んで良いよ」
「そうですか?」
【2人だけ?】
「ザッと見回るだけだし、デュラン1人で問題ないさ」

アリィ(アラーナ)とパルマは納得する。

「かしこまりました」
【お休みなさい】

アラーナ(タルバン)はデュランのみを連れて別邸を見て回る。
相変わらず雨風が強いものの、特に問題は見当たらない。

「ご苦労様」
「ありがとうございます!」

「夜遅く大変ね」
「どういたしまして、奥様」

不寝番の騎士や当番を勤めていた女中にねぎらいの言葉をかけたくらい。

「せっかくだから、こちらも回ろうか」
「そうですね」

ワーレンバーグ公爵邸にも足を向けた。

タルバン・クリスパ伯爵として訪問した時は侯爵邸で寝泊まりする。
しかしアラーナ(タルバン)や召使のバルタ(タルバン)では、公爵邸に足を踏み入れることは少ない。
せいぜい先代公爵夫妻やテレシアと食事を共にする時や書庫にこもる時くらいだ。

「おっ!」
「光った!」

アラーナ(タルバン)とデュランが公爵邸に入ったところで、遠目に稲妻が見えた。
少し置いて遠くで雷鳴がとどろく。

「近づいてますね」
「ああ、でも問題ないだろう」

公爵邸は別邸よりも大きく広いが、違いはそれだけ。
騎士の多くが出征しているとは言え、留守番の騎士もいるので、忍び込んでくるような輩はいないだろう。

「ご苦労様」
「あ、ありがとうございます!」

こちらでも不寝番の騎士にねぎらいの言葉をかけた。

「うん?」

最上階まで上がったところで、アラーナ(タルバン)が足を止める。

「どうしました?」

デュランがランプを高めに掲げて周囲を見る。しかし、特に変わった様子は見当たらない。

「かすかに悲鳴が聞こえたような…」

アラーナ(タルバン)が足を向けると、デュランも付いてくる。

「あっ!」
「…うん」

今度はデュランも聞こえた。

「この先は確かテレシア様の…」
「うん、寝室だ」

2人がテレシアの寝室の前まで来たところで、一段と大きな雷鳴が響く。
直後に部屋から「キャッ!」とテレシアの声がした。

「雷のようですね。どうします?」

アラーナ(タルバン)は悩む。
様子を見た方が良いかもとは思うものの、女の寝室に入るのは気が引けた。

ドゴーン!

公爵邸から遠くない場所に雷が落ちたのか、大きな音がする。
やはり部屋の中から「キャッ!」と声がした。

意を決したアラーナ(タルバン)が扉を叩く。

トントントン

時間を置いて「どなた?」と小さな声が返ってきた。

「私よ、アラーナ」

中から扉が開いてテレシアが顔を出す。
アラーナ(タルバン)を確認すると、明らかに安心した表情となった。

それでも言葉が続かない様子に、アラーナ(タルバン)が話しかける。

「もしよかったら、お話でもしない?」

テレシアは、うれしそうにうなずいて、寝室にアラーナ(タルバン)を招く。

「デュラン、あなたは先に戻っていて」
「は、はい」

デュランは一礼して別邸に向かった。

アラーナ(タルバン)は扉を閉める。初めてテレシアの寝室に足を踏み入れた。
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