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第185話 タルバンの発案
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【どうでした?】
アラーナ(タルバン)が別邸に戻ると、アリィ(アラーナ)が心配そうに駆け寄ってくる。
「一応は良い知らせ…」
夜が明けた頃から、立て続けに3人の使者が到着した。
1人目の急使はオルギュールが書いたさらに詳しい手紙を運んできた。
ただし、事故が起きた状況を詳しく知らせるのみで、新たな情報はない。
2人目の急使は捜索が続いていることの報告のみ。
そして3人目。
汗を滝のように流した使者が転がり込んでくる。
「公爵閣下が見つかりました!」
アラーナ(タルバン)はもちろん、ヴァイン・ワーレンバーグ先代公爵とプリス夫人、そしてテレシアが明るい顔を見せた。フレードとコーネリアも顔を見合わせてうなずく。
「…ただ、意識が戻っていません」
一転して皆の顔が凍り付く。
「現地の医師がついていますが、予断を許さない状況とのことでした」
「……分かりました。ありがとう」
言い終えた使者は敬礼すると、ふらつきながら居間を出て行った。
執事のフレードがアラーナ(タルバン)に話しかける。
「奥様、いかがなさいますか?」
「ワーレンバーグ公爵家からも医師を送ってください」
「はい」
フレードはコーネリアに目で合図する。
「私も向かいたいところだけど…」
「奥様1人くらいならよろしいのでは?」
「……少し考えがあります」
「かしこまりました」
テレシアを伴ってアラーナ(タルバン)が別邸に戻ってくる。
「…と、そんな状況だ」
【そうなのですね】
相変わらずアリィ(アラーナ)の顔色はさえなかった。
両側でテレシアとパルマが手を添えるのも変わっていない。
「それで思いついたんだが…」
【どうしました?】
「タルバン伯爵に現地へ行って貰おうと思うんだ」
皆から「ああ」と賛同する声が返ってくる。
「良いお考えです。タルバン様が戻ってくるまで、アラーナ様は私達でお支えします」
パルマの言葉にデュランやテレシアも同意した。
アリィ(アラーナ)も【お兄様にお任せします】と板を見せる。
「違う違う。そうじゃない!」
アラーナ(タルバン)は皆が全く考えていなかったことを口にした。
「アラーナがタルバンになって現地に行くんだ」
一瞬置いて「ええっ」の声があがる。
「それは、さすがに難しいかと」
デュランが重い口を開いた。
パルマもテレシアも言葉にはしないものの、否定的な顔を見せる。
「結婚式は腕を組んで歩くだけでしたから、何も話さなくても問題にはなりませんでしたが…」
デュランの言葉通り、アラーナがタルバンになって大勢の人前に出たのはその一度きり。
その後も遠目にタルバンと見える振りをしたことはあったものの、あくまでも遠目に、だ。
「アラーナ様として現地に向かわれるのは難しいでしょうけど、アリィとしてなら向かっても良いのでは?」
デュランの助言にアラーナ(タルバン)は「だめだ」と否定する。
「侍女として向かうとなれば馬車だ。着くまでに1週間はかかるだろう」
「…そうですね」
「タルバンとしてなら馬で行ける」
「…まあ、そうでしょうが」
アラーナ(タルバン)はアリィ(アラーナ)に向き直る。
「どうする?」
アリィ(アラーナ)は声の出ない口で「行きます」と答えた。
アラーナ(タルバン)が別邸に戻ると、アリィ(アラーナ)が心配そうに駆け寄ってくる。
「一応は良い知らせ…」
夜が明けた頃から、立て続けに3人の使者が到着した。
1人目の急使はオルギュールが書いたさらに詳しい手紙を運んできた。
ただし、事故が起きた状況を詳しく知らせるのみで、新たな情報はない。
2人目の急使は捜索が続いていることの報告のみ。
そして3人目。
汗を滝のように流した使者が転がり込んでくる。
「公爵閣下が見つかりました!」
アラーナ(タルバン)はもちろん、ヴァイン・ワーレンバーグ先代公爵とプリス夫人、そしてテレシアが明るい顔を見せた。フレードとコーネリアも顔を見合わせてうなずく。
「…ただ、意識が戻っていません」
一転して皆の顔が凍り付く。
「現地の医師がついていますが、予断を許さない状況とのことでした」
「……分かりました。ありがとう」
言い終えた使者は敬礼すると、ふらつきながら居間を出て行った。
執事のフレードがアラーナ(タルバン)に話しかける。
「奥様、いかがなさいますか?」
「ワーレンバーグ公爵家からも医師を送ってください」
「はい」
フレードはコーネリアに目で合図する。
「私も向かいたいところだけど…」
「奥様1人くらいならよろしいのでは?」
「……少し考えがあります」
「かしこまりました」
テレシアを伴ってアラーナ(タルバン)が別邸に戻ってくる。
「…と、そんな状況だ」
【そうなのですね】
相変わらずアリィ(アラーナ)の顔色はさえなかった。
両側でテレシアとパルマが手を添えるのも変わっていない。
「それで思いついたんだが…」
【どうしました?】
「タルバン伯爵に現地へ行って貰おうと思うんだ」
皆から「ああ」と賛同する声が返ってくる。
「良いお考えです。タルバン様が戻ってくるまで、アラーナ様は私達でお支えします」
パルマの言葉にデュランやテレシアも同意した。
アリィ(アラーナ)も【お兄様にお任せします】と板を見せる。
「違う違う。そうじゃない!」
アラーナ(タルバン)は皆が全く考えていなかったことを口にした。
「アラーナがタルバンになって現地に行くんだ」
一瞬置いて「ええっ」の声があがる。
「それは、さすがに難しいかと」
デュランが重い口を開いた。
パルマもテレシアも言葉にはしないものの、否定的な顔を見せる。
「結婚式は腕を組んで歩くだけでしたから、何も話さなくても問題にはなりませんでしたが…」
デュランの言葉通り、アラーナがタルバンになって大勢の人前に出たのはその一度きり。
その後も遠目にタルバンと見える振りをしたことはあったものの、あくまでも遠目に、だ。
「アラーナ様として現地に向かわれるのは難しいでしょうけど、アリィとしてなら向かっても良いのでは?」
デュランの助言にアラーナ(タルバン)は「だめだ」と否定する。
「侍女として向かうとなれば馬車だ。着くまでに1週間はかかるだろう」
「…そうですね」
「タルバンとしてなら馬で行ける」
「…まあ、そうでしょうが」
アラーナ(タルバン)はアリィ(アラーナ)に向き直る。
「どうする?」
アリィ(アラーナ)は声の出ない口で「行きます」と答えた。
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