18 / 250
第17話 アラーナの来訪
しおりを挟む
「アラーナ様だ!」
馬車の窓から顔を覗かせると、民衆の中から声があがる。
「このところお顔を拝見できなかったが、どうやらお元気そうだ」
「あの事故だからなあ、笑顔を見るだけでも安心できるよ」
「しかしお声を聞けなのは寂しいな」
「おいおい、あまり無理を言っちゃあいけないぞ」
そうした話が聞こえたのではないだろうが、不意に馬車が止まった。
「あれ?」
「もしかして…」
「まさか?」
戸惑う民衆だったが、ひそひそ声が次第に歓声へと代わる。
御者台から降りたホスルトが扉を開けると、まずは侍女のパルマが、そしてアラーナが姿を現した。
たちまち民衆が集まってくるが、ホルストとパルマが適度に制する。
いくらかの距離を置いて民衆はアラーナを取り囲んだ。
「もうお体は良いのですか?」
「ご無理をなさらないでください」
「お元気そうで何よりです」
民衆から声がかけられる。
アラーナは微笑んで会釈すると、ゆっくり口を開く。
民衆が声を潜めたところにアラーナの声が響いた。
「ありがとう」
久しぶりにアラーナの声を聞いた民衆は大喜びするが、アラーナが会釈したところで再び静かになる。
「皆には心配をかけましたが、この通りすっかり元気になりました。とても、とても悲しいことがありました。けれども、それを乗り越えていかなくてはなりません。新たに伯爵となった兄のタルバン・クリスパを、私とともにどうか皆で支えてあげて下さい」
言い終えたアラーナが深く礼をすると、より大きな歓声があがる。
「アラーナさまあ」
民衆の中から10歳にもならないだろう女の子が歩み出てくる。
ホルストは止めようとしたが、アラーナがしゃがんで迎え入れた。
「どうぞー」
可愛らしい花束を差し出した。
「ありがとう」
花束を受け取ったアラーナは、そこから一本抜き取って女の子の髪に差す。
またも大きな歓声が上がった。
「野菜を持って行っておくれ」
「果物をどうぞ」
「こんなお菓子でよかったら」
いろんな贈り物で馬車が一杯になった。
去り際に馬車の窓からアラーナが身を乗り出して大きく手を振る。
大勢の民衆が声を上げつつ彼女を見送った。
やがて馬車はクリスパ家の屋敷に戻る。
出迎えたデュランが油断なく周囲を見回して、アラーナを迎え入れた。
「つっかれたあー」
執務室に戻ったアラーナがソファに勢いよく腰を下ろす。
そう、アラーナではなく、彼女に変装したタルバンだ。
「お疲れー」
執務室には2人だけどなったことで、デュランが気安く声をかける。
立ち上がったタルバンはデュランに背を向けた。
「もう、これ、早く取ってくれ」
「あいよ」
なるべく体形を隠すために選んだゆったり目のアラーナの普段着。
それを脱いだタルバンの背中にデュランが触れる。
「よっと」
腰を絞っていたコルセットを外すと、タルバンは深呼吸した。
「ほんっとにきつかったあ」
次にアラーナの胸に近づけるための詰め物を抜き取る。
最後にデュランが持ってきた桶で何度も顔を洗った。
「どうやら成功だったようだな」
「ああ、皆、喜んでくれたよ。いろんな土産がたんまりと、ね」
「そりゃよかった。なら、毎日あちこちを回ろうか」
「勘弁してくれ。せいぜい月に2・3度くらいだな」
馬車の窓から顔を覗かせると、民衆の中から声があがる。
「このところお顔を拝見できなかったが、どうやらお元気そうだ」
「あの事故だからなあ、笑顔を見るだけでも安心できるよ」
「しかしお声を聞けなのは寂しいな」
「おいおい、あまり無理を言っちゃあいけないぞ」
そうした話が聞こえたのではないだろうが、不意に馬車が止まった。
「あれ?」
「もしかして…」
「まさか?」
戸惑う民衆だったが、ひそひそ声が次第に歓声へと代わる。
御者台から降りたホスルトが扉を開けると、まずは侍女のパルマが、そしてアラーナが姿を現した。
たちまち民衆が集まってくるが、ホルストとパルマが適度に制する。
いくらかの距離を置いて民衆はアラーナを取り囲んだ。
「もうお体は良いのですか?」
「ご無理をなさらないでください」
「お元気そうで何よりです」
民衆から声がかけられる。
アラーナは微笑んで会釈すると、ゆっくり口を開く。
民衆が声を潜めたところにアラーナの声が響いた。
「ありがとう」
久しぶりにアラーナの声を聞いた民衆は大喜びするが、アラーナが会釈したところで再び静かになる。
「皆には心配をかけましたが、この通りすっかり元気になりました。とても、とても悲しいことがありました。けれども、それを乗り越えていかなくてはなりません。新たに伯爵となった兄のタルバン・クリスパを、私とともにどうか皆で支えてあげて下さい」
言い終えたアラーナが深く礼をすると、より大きな歓声があがる。
「アラーナさまあ」
民衆の中から10歳にもならないだろう女の子が歩み出てくる。
ホルストは止めようとしたが、アラーナがしゃがんで迎え入れた。
「どうぞー」
可愛らしい花束を差し出した。
「ありがとう」
花束を受け取ったアラーナは、そこから一本抜き取って女の子の髪に差す。
またも大きな歓声が上がった。
「野菜を持って行っておくれ」
「果物をどうぞ」
「こんなお菓子でよかったら」
いろんな贈り物で馬車が一杯になった。
去り際に馬車の窓からアラーナが身を乗り出して大きく手を振る。
大勢の民衆が声を上げつつ彼女を見送った。
やがて馬車はクリスパ家の屋敷に戻る。
出迎えたデュランが油断なく周囲を見回して、アラーナを迎え入れた。
「つっかれたあー」
執務室に戻ったアラーナがソファに勢いよく腰を下ろす。
そう、アラーナではなく、彼女に変装したタルバンだ。
「お疲れー」
執務室には2人だけどなったことで、デュランが気安く声をかける。
立ち上がったタルバンはデュランに背を向けた。
「もう、これ、早く取ってくれ」
「あいよ」
なるべく体形を隠すために選んだゆったり目のアラーナの普段着。
それを脱いだタルバンの背中にデュランが触れる。
「よっと」
腰を絞っていたコルセットを外すと、タルバンは深呼吸した。
「ほんっとにきつかったあ」
次にアラーナの胸に近づけるための詰め物を抜き取る。
最後にデュランが持ってきた桶で何度も顔を洗った。
「どうやら成功だったようだな」
「ああ、皆、喜んでくれたよ。いろんな土産がたんまりと、ね」
「そりゃよかった。なら、毎日あちこちを回ろうか」
「勘弁してくれ。せいぜい月に2・3度くらいだな」
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる