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第64話 受け入れの準備
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「ご主人様、お部屋の用意が整いました」
執事のコーネリア・センシスに案内されて、アラーナが使う予定の部屋を見て回る。
広い公爵邸の中にあってこれまで使われていなかった別棟。
そこに手を入れることで、アラーナが中心となって住む屋敷へと変えた。
「ふむ、こんなものだな」
カルトメリはコーネリアの間違いない選択を再認識する。
若い女性であれば華やかな装飾や派手な内装を好むものは少なくない。
『彼女は違う…』
カルトメリは先日眺めたアラーナの服や靴の注文を思い出す。
明るいながらも適度に落ち着いた内装はアラーナの好みを外していないと考えた。
「うん?」
しかしながら使用人にあてがう部屋でカルトメリの足が止まる。
「これは…ちょっと…」
「どこか不十分でしたか?」
「いや、何と言うか…」
カルトメリは口ごもる。
「一緒に使用人が来るよ。若い男女2人ずつ」
そう聞いたコーネリアは訪問時のことを思い浮かべつつ、別棟の中に使用人向けの部屋を割り当てた。
その内装もアラーナほどではないものの、十分に質の良いものを整えている。
「まず女性の使用人である2人の部屋は、アラーナ嬢の部屋と隣り合うようにしてくれ」
「はい?い、いえ、か、かしこまりました」
カルトメリや父で執事としては先達であるフレード・センシスの言葉に「はい」か「YES」のどちらかで答えてきたコーネリア。しかし、この時の指示には一瞬ながらも疑問形の言葉がもれた。
「おかしいか?」
カルトメリは聞き逃さない。
「いえ、申し訳ありません」
「彼女はこれまで王都どころか、領地からほとんど出てこなかったんだ」
「はい」
「身近に見知った顔がいると心強いだろう」
「さようでございますね。行き届かず、失礼いたしました」
表面上はもっともらしいことを言いつつ、カルトメリは笑いをかみ殺している。
「いやねー、実は兄妹で入れ替わるためなんだよー」
そう大声で叫びたい気分も押し殺す。
「そうだな。夜具などもアラーナ嬢が使うものと同じものを用意してくれ」
「…はあ」
コーネリアは気を引き締めていたものの、今度は生返事になってしまう。
『うーん、まだまだ経験不足か。フレードならそうはならないだろうに』
またしても気づいたカルトメリは、今度も理由をでっちあげる。
「幼い頃から侍女と一緒に眠りについたことがあるそうで、今でもごくごくまれにそうすると聞いた」
コーネリアは『幼い頃の習慣を成長してからも引きずるのはどうだろうか』と考えた。
ただし、それ以上疑問を挟むのを止めて「かしこまりました」と答える。
「それでは男性向けはこのままでよろしいですね」
「いや、それも同じようにしてくれ」
「…かしこまりました」
コーネリアは部屋と部屋との間に扉を設ける突貫工事の計画を、頭の中で素早く考える。
「4人の中で変に差を付けるのもおかしいだろうからな」
「…さようでございますね」
それ以上でっちあげる理由を思い浮かばなかったカルトメリは強引に押し切った。
「実はねー、男の使用人の1人はタルバン・クリスパ伯爵なんだよー」
そんな叫びもかみ殺した。
『これでアラーナ嬢の部屋への行き来は廊下に出なくてもできるはず』
カルトメリ内心でほくそ笑む。
「頼むぞ」
「承知いたしました」
その後、カルトメリはアラーナに仕えるその他の使用人などを確認する。
こちらはコーネリアの差配もあり、カルトメリが異論をはさむことは無かった。
執事のコーネリア・センシスに案内されて、アラーナが使う予定の部屋を見て回る。
広い公爵邸の中にあってこれまで使われていなかった別棟。
そこに手を入れることで、アラーナが中心となって住む屋敷へと変えた。
「ふむ、こんなものだな」
カルトメリはコーネリアの間違いない選択を再認識する。
若い女性であれば華やかな装飾や派手な内装を好むものは少なくない。
『彼女は違う…』
カルトメリは先日眺めたアラーナの服や靴の注文を思い出す。
明るいながらも適度に落ち着いた内装はアラーナの好みを外していないと考えた。
「うん?」
しかしながら使用人にあてがう部屋でカルトメリの足が止まる。
「これは…ちょっと…」
「どこか不十分でしたか?」
「いや、何と言うか…」
カルトメリは口ごもる。
「一緒に使用人が来るよ。若い男女2人ずつ」
そう聞いたコーネリアは訪問時のことを思い浮かべつつ、別棟の中に使用人向けの部屋を割り当てた。
その内装もアラーナほどではないものの、十分に質の良いものを整えている。
「まず女性の使用人である2人の部屋は、アラーナ嬢の部屋と隣り合うようにしてくれ」
「はい?い、いえ、か、かしこまりました」
カルトメリや父で執事としては先達であるフレード・センシスの言葉に「はい」か「YES」のどちらかで答えてきたコーネリア。しかし、この時の指示には一瞬ながらも疑問形の言葉がもれた。
「おかしいか?」
カルトメリは聞き逃さない。
「いえ、申し訳ありません」
「彼女はこれまで王都どころか、領地からほとんど出てこなかったんだ」
「はい」
「身近に見知った顔がいると心強いだろう」
「さようでございますね。行き届かず、失礼いたしました」
表面上はもっともらしいことを言いつつ、カルトメリは笑いをかみ殺している。
「いやねー、実は兄妹で入れ替わるためなんだよー」
そう大声で叫びたい気分も押し殺す。
「そうだな。夜具などもアラーナ嬢が使うものと同じものを用意してくれ」
「…はあ」
コーネリアは気を引き締めていたものの、今度は生返事になってしまう。
『うーん、まだまだ経験不足か。フレードならそうはならないだろうに』
またしても気づいたカルトメリは、今度も理由をでっちあげる。
「幼い頃から侍女と一緒に眠りについたことがあるそうで、今でもごくごくまれにそうすると聞いた」
コーネリアは『幼い頃の習慣を成長してからも引きずるのはどうだろうか』と考えた。
ただし、それ以上疑問を挟むのを止めて「かしこまりました」と答える。
「それでは男性向けはこのままでよろしいですね」
「いや、それも同じようにしてくれ」
「…かしこまりました」
コーネリアは部屋と部屋との間に扉を設ける突貫工事の計画を、頭の中で素早く考える。
「4人の中で変に差を付けるのもおかしいだろうからな」
「…さようでございますね」
それ以上でっちあげる理由を思い浮かばなかったカルトメリは強引に押し切った。
「実はねー、男の使用人の1人はタルバン・クリスパ伯爵なんだよー」
そんな叫びもかみ殺した。
『これでアラーナ嬢の部屋への行き来は廊下に出なくてもできるはず』
カルトメリ内心でほくそ笑む。
「頼むぞ」
「承知いたしました」
その後、カルトメリはアラーナに仕えるその他の使用人などを確認する。
こちらはコーネリアの差配もあり、カルトメリが異論をはさむことは無かった。
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