【R18】兄と2人で公爵様に嫁いでみました【完結】

県田 星

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第89話 クリスパ領へ

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「皆様、お世話になりました」

アラーナ(タルバン)がスカートの裾を頭を摘まみつつ頭を軽く下げる。
その後ろでパルマと本物のアラーナが深々とお辞儀した。

「またいらしてね」

別棟の侍女らと共に見送りに出たプリス夫人が笑顔を見せる。
ヴァインとテレシアは早々に出かけていた。

「はい、ぜひ」

アラーナ(タルバン)が別棟を見上げると、いくつかの窓から本邸付きと思われる公爵家の使用人らが顔を覗かせていた。微笑みつつ手を振ると、あちこちから「わあ!」や「きゃっ!」と歓声があがる。

「…全く」

カルトメリが少し困った顔をしたものの、アラーナ(タルバン)が「怒らないで」と言うように首を振った。

「皆様にも挨拶したかったのですけど」
「そうだな」
「昨日の衣装合わせが早めに終われば良かったかなと」
「うーむ、そうか」

カルトメリは最初にパルマの手を軽く取って馬車に導く。
次に侍女の格好をしたアラーナの手をしっかり握ると、先ほどよりゆっくり目に馬車へと導いた。
アラーナは「ありがとうございます」と口で形作る。

最後にアラーナ(タルバン)の手を取る。

「閣下には本当にお世話になりました」
「いや、あの夜は私も楽しかった」
「そうなのですか?」
「オルギュールらと夜通し語り合ったことはあったが…」

公爵家の馬車を護衛するオルギュール・ビルギイトに目を向けた。

「はい」
「どうしても立場があるのでな」
「…そうですね」
「兄弟とは良いものだ」
「ええ」
「それはそうと、今度は娼館だからな」

アラーナ(タルバン)もさすがに答えに困った。
そのままアラーナ(タルバン)を馬車に乗せ終えたカルトメリは上半身を突っ込む。

「「閣下!」」

アラーナ(タルバン)とパルマが驚く中、カルトメリは外から見えないことを確認すると、アラーナの手を引き寄せて口づけした。そのまま軽く頬に手を当てて、二度三度と撫でる。

「必ず、また」

アラーナもうなずいた。

馬車から降りかけたカルトメリがパルマを見る。

「どうだ?5000リー」
「お断りいたします」

パルマが首を振ったのを見て、カルトメリは笑いながら馬車の扉を閉めた。

「出発!」

オルギュールの号令で一行が動き出す。
アラーナ(タルバン)が扇子で口元を隠しつつ、馬車の窓から顔を覗かせて会釈した。

ワーレンバーグ公爵邸の敷地を出ると馬車の窓を閉める。

【皆様 親切な方ばかりでした】
「それだけに挨拶ができなかったのは残念だ」
「この次はタルバン様の番ですので、多少は余裕があるでしょう」

パルマがそう言うものの、アラーナ(タルバン)は先ほどの「今度は…」を思い出す。

「そうだと良いんだがなあ」
【違うのですか?】
「うーん…昼間なら…」
【昼間?】
「昼間?」

悩むアラーナ(タルバン)らを乗せて、馬車はクリスパ領へと向かった。
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