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第97話 国王の来訪
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「失礼します!」
夕食後の食堂に飛び込んできた家人がカルトメリ・ワーレンバーグ公爵に耳打ちした。
「陛下が?」
ゆったりと会話を交わしていた一同に緊張が走る。
「陛下がどうなされた?」
父親であるヴァインに聞かれたカルトメリは「お越しになられたそうです」と答えた。
「陛下らしいな」
顔を見合わせて苦笑するヴァインと妻のプリス夫人。
「部屋を用意してくれ」
「承知しました」
カルトメリに指示を受けた家人が出ていく。
改めてカルトメリはタルバンを見た。
「タルバンに会いに来た、と」
「しかし、明日お会いできるのですよね」
タルバンの言う通り、明日、テセント・クランダルク国王に謁見する予定を入れている。
「公の場では難しい気軽な話をしたいのだろう」
国王陛下を良く知っているヴァインとプリス夫人はうなずく。
「じゃあ、私はこれで戻りますね」
テレシアはタルバンに「おやすみなさいませ」と微笑みを投げかけて、食堂を出て行った。
「ふむ、カルトメリが同席すればよいだろう。私達も戻るとするか」
「ええ」
ヴァインとプリス夫人も食堂を出て行く。
「こうしたことは良くあるのですか?」
「まあな、我が国で至上の身分にありながら腰の軽いお方だ」
「はあ」
「さすがに若い頃は知らないが、父や母によると、今以上だった、と」
タルバンは先ほどの2人が見せた苦笑を思い出した。
用意ができた旨を知らせてきた家人に、カルトメリとタルバンが付いて歩く。
やがて大きな扉の前につくと家人が強くノックした。
「入れ!」
力強い声が返ってくると、家人が扉を開ける。
カルトメリが「失礼します」と一礼して入室する。タルバンもその後に続いた。
「そなたがタルバン・クリスパ伯爵か」
カルトメリが紹介する前に、テセント・クランダルク国王が歩みを進めた。
「はい!お初に…」
「固い挨拶は抜きだ」
クランダルクが右手を出して戸惑うタルバンの手を握った。
「王都クラマスにようこそ!」
「ありがたきしあわせ」
「固い言葉はよせと言うのに…」
クランダルクに勧められてタルバンはソファに座る。
家人を下がらせたカルトメリが、2人の前にワインの入ったグラスを置いた。
「うむ」
ひと息ついたクランダルクはグラスに口を付ける。
それに合わせて、カルトメリとタルバンもワインをひと口飲んだ。
「本当はアラーナ嬢がいた時に会いに来ようと思ったのだがな」
クランダルクが話し出す。
「王妃に止められたよ。『いきなり令嬢に会いに行って喜ばれるのは、カルトメリ公爵くらいですよ』とな」
その言いように、タルバンもカルトメリも笑ってしまう。
「公爵、そうなのか?」
「私くらいと言うのがよく分かりませんが、来訪をお止めになられたのは良い判断かと」
「そうか、“クリスパの宝石”を見たかったのだがな…」
心底残念そうな顔をした。
「あいにくですが、披露パーティーまでお待ちください」
「しかし、タルバンを見れば想像がつく。カルトメリ、そなた掘り出し物を見つけたな」
カルトメリは大きくうなずいた。
「タルバン、これまでいろいろと苦労したと思う」
「はい」
「だが“夜明け前が一番暗い”の言葉もある。これがきっかけとなってクリスパ領に陽が昇るに違いない」
「そう信じたいと思います。ただ…」
「ただ?」
「自らの努力も怠らないつもりです」
クランダルクは「そうだな」と笑った。
その後、ひとしきり話が盛り上がった後、クランダルクは帰って行った。
「ふぅ」
タルバンは大きく深呼吸する。
「これで明日、謁見しても緊張は少なくて済むだろう」
「そうしたお考えだったのですか?」
「まあ、そんなお方だ」
カルトメリはうなずいた。
夕食後の食堂に飛び込んできた家人がカルトメリ・ワーレンバーグ公爵に耳打ちした。
「陛下が?」
ゆったりと会話を交わしていた一同に緊張が走る。
「陛下がどうなされた?」
父親であるヴァインに聞かれたカルトメリは「お越しになられたそうです」と答えた。
「陛下らしいな」
顔を見合わせて苦笑するヴァインと妻のプリス夫人。
「部屋を用意してくれ」
「承知しました」
カルトメリに指示を受けた家人が出ていく。
改めてカルトメリはタルバンを見た。
「タルバンに会いに来た、と」
「しかし、明日お会いできるのですよね」
タルバンの言う通り、明日、テセント・クランダルク国王に謁見する予定を入れている。
「公の場では難しい気軽な話をしたいのだろう」
国王陛下を良く知っているヴァインとプリス夫人はうなずく。
「じゃあ、私はこれで戻りますね」
テレシアはタルバンに「おやすみなさいませ」と微笑みを投げかけて、食堂を出て行った。
「ふむ、カルトメリが同席すればよいだろう。私達も戻るとするか」
「ええ」
ヴァインとプリス夫人も食堂を出て行く。
「こうしたことは良くあるのですか?」
「まあな、我が国で至上の身分にありながら腰の軽いお方だ」
「はあ」
「さすがに若い頃は知らないが、父や母によると、今以上だった、と」
タルバンは先ほどの2人が見せた苦笑を思い出した。
用意ができた旨を知らせてきた家人に、カルトメリとタルバンが付いて歩く。
やがて大きな扉の前につくと家人が強くノックした。
「入れ!」
力強い声が返ってくると、家人が扉を開ける。
カルトメリが「失礼します」と一礼して入室する。タルバンもその後に続いた。
「そなたがタルバン・クリスパ伯爵か」
カルトメリが紹介する前に、テセント・クランダルク国王が歩みを進めた。
「はい!お初に…」
「固い挨拶は抜きだ」
クランダルクが右手を出して戸惑うタルバンの手を握った。
「王都クラマスにようこそ!」
「ありがたきしあわせ」
「固い言葉はよせと言うのに…」
クランダルクに勧められてタルバンはソファに座る。
家人を下がらせたカルトメリが、2人の前にワインの入ったグラスを置いた。
「うむ」
ひと息ついたクランダルクはグラスに口を付ける。
それに合わせて、カルトメリとタルバンもワインをひと口飲んだ。
「本当はアラーナ嬢がいた時に会いに来ようと思ったのだがな」
クランダルクが話し出す。
「王妃に止められたよ。『いきなり令嬢に会いに行って喜ばれるのは、カルトメリ公爵くらいですよ』とな」
その言いように、タルバンもカルトメリも笑ってしまう。
「公爵、そうなのか?」
「私くらいと言うのがよく分かりませんが、来訪をお止めになられたのは良い判断かと」
「そうか、“クリスパの宝石”を見たかったのだがな…」
心底残念そうな顔をした。
「あいにくですが、披露パーティーまでお待ちください」
「しかし、タルバンを見れば想像がつく。カルトメリ、そなた掘り出し物を見つけたな」
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「タルバン、これまでいろいろと苦労したと思う」
「はい」
「だが“夜明け前が一番暗い”の言葉もある。これがきっかけとなってクリスパ領に陽が昇るに違いない」
「そう信じたいと思います。ただ…」
「ただ?」
「自らの努力も怠らないつもりです」
クランダルクは「そうだな」と笑った。
その後、ひとしきり話が盛り上がった後、クランダルクは帰って行った。
「ふぅ」
タルバンは大きく深呼吸する。
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「まあ、そんなお方だ」
カルトメリはうなずいた。
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