【R18】兄と2人で公爵様に嫁いでみました【完結】

県田 星

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第100話 2人の執事

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「いってらっしゃいませ」

カルトメリ・ワーレンバーグ公爵とタルバン・クリスパ伯爵を乗せた馬車が王宮に向かう。
見送りに出た使用人達は、馬車の影が見えなくなると、それぞれの仕事に戻って行った。

残されたデュランは『さて、どうするか』と考える。

『公爵邸を見て回りたい気もするが、勝手に動き回るのもなあ。誰かに案内を頼めれば良いけど…」

主人であるタルバンからは「王都でも見物してきたらどうだ?」と言われている。

王都行きに備えて、お金はそこそこ持ってきた。
と言っても、公爵が馴染みの娼館へ行くには程遠い。

『本屋にでも行ってみるか。目新しい本があるかも…』

そう考えて振り向いたところ、コーネリア・センシスが立っていた。

「デュラン様、よろしければ、ワーレンバーグ公爵邸をご案内しましょうか?」

声をかけられたデュランは固まる。

「お、女、だったのか…」

言われた瞬間、コーネリアの顔が厳しくなる。

「女が執事になってはいけませんか?それとも女には見えなかったとでも?」

ハッとしたデュランは「申し訳ありません!」と腰から曲げて頭を下げる。
それでもコーネリアは見下げた表情を崩さない。

しかしデュランが一向に頭を上げないのを見ると、「止めてください」と声をかけた。

「本当に申し訳ありませんでした。あえて言い訳をさせてもらえれば…」
「いえ、もう構いません」

コーネリアの言葉にも関わらず、デュランは続ける、

「以前、クリスパ領に来られた際、同じ格好をされていたのを少し離れたところで見て『小柄な男性だな』と思い込んでいたので…」
「この格好は動きやすいからしているだけです」
「随分と髪を短かくしているんですね」
「執事の仕事に髪は無関係です。特に着飾る機会がもありませんし」
「そうですか?でも…」

コーネリアは話しをさえぎる。

「公爵邸の案内は不要ですか?」
「ぜひ!お願いします!それと“様”は止めてください」
「それでは、デュラン、さん」
「はい!コーネリアさん」

一瞬、コーネリアは不快そうに目を細める。
それでもデュランがこぼれそうな笑顔を見せたので、そのまま受け入れた。

「付いて来てください」
「はい!」

コーネリアの後を追っかけるデュラン。

短く整えた黒髪、その下の白い首筋、しっかり伸びた背筋に引き締まった尻、そしてきびきび動く両足。
これを上下に何度も眺めつつ、少し後方を歩く。

「こちらが書物庫です」
「はい」

説明を聞きながら、デュランはコーネリアの横顔を観察する。
切れ長の黒い瞳、小さめの鼻、わずかに赤みを帯びた唇。胸は…控えめ。

「何か?」

不審気にコーネリアがデュランを見る。

「あ、いえ、すごい数の本ですね」
「それだけに管理も大変ですが」
「確かに」

ここで「大人向けの絵物語はあるんですか?」のように聞かないくらいのわきまえは、デュランも持っていた。

それでもコーネリアの横顔をチラリと見るデュラン。

『姉さんなら、どんな風に化粧をするだろうなあ』

その後も公爵邸をひと通り回りつつ、出会った使用人を紹介してもらう。

「家人の数も多いですね」
「ええ、クリスパ家は4人とか」
「はい、家族経営です」

主だったところを回り終えると、コーネリアがデュランに尋ねる。

「このくらいですが、何か聞きたいことはありますか?」

少し考えたデュランが切り出す。

「ちょっと、いやかなり下世話なことを聞いても良いですか?」
「下世話なこと?まあ、どうぞ」
「こちらでは2000リーグル貰えると聞いています」
「ああ、そのようですね」

新たに増える4人の給金についてはコーネリアも聞いていた。

「コーネリアさんはどのくらいの給金なのですか?」
「最初は1600リーグルでした。見習いが取れた今は2400リーグルです」
「…すごい」
「父はあなた達と同じ2000リーグルですよ」
「えっ!」
「加えて自分の領地を持っていますけどね」

自分のことではないが、コーネリアが胸を反らす。
デュランは「ああ!」と納得した。
ワーレンバーグ公爵家の執事ともなれば、自領の経営次第で収入を増やせるのだろう。

「実はクリスパ領の給金は300リーグルでした」
「はあ…」
「四半期ではなく、年300リーグルです」
「えっ?」

コーネリアは聞き間違いかと思ったが、デュランの様子からすると間違いではないらしい。
以前に見た資料に使用人の数は書かれていたが、給金までは載っていなかった。

「さらに付け加えれば、私1人ではなく、家族4人で年300リーグルなんです」
「本当ですか?」
「そんな貴族もあるってことです」

わざとらしくデュランが肩をすくめると、コーネリアから「クスッ」と笑いがこぼれる。

「ようやく笑ってくれましたね」
「あ、失礼しました」

一瞬で真顔に戻るコーネリアにデュランが耳打ちする。

「着飾っても似合うと思いますよ」
「えっ!?」

意味をつかみ損ねたコーネリアに、デュランは「案内ありがとうございました!」と告げて走って行った。
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