【R18】兄と2人で公爵様に嫁いでみました【完結】

県田 星

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第116話 騎士と侍女

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「とてもよくお似合いですね」

間もなく結婚式が始まるであろう時間。
教会の前でオルギュールがパルマに話しかけた。

スラリと高い背にまとうのは明るい青色のドレス。
わずかに茶色がかった黒髪は、きれいにまとめられて銀細工の髪飾りで留められていた。
胸元にはドレスの青に合わせて、小さなサファイアのついた首飾りが光る。

「そうですか?お世辞と分かっていてもうれしいものですね」

オルギュールは「まさか!」と首を振った。

「本当によく似合っていますよ」
「ありがとうございます。素直に受け取っておきます」

パルマもオルギュールの服装に目をやる。

ワーレンバーグ公爵家に仕える騎士としての正装。
普段の制服とデザインは似ているが、式典向けに華やかさが加わっている。
鮮やかな肩章が付いているのは、オルギュールが騎士達の長である証。

「オルギュール様こそ、とても似合っておられますよ」

褒められたオルギュールが誇らしげに胸を張る。
ただし、次の言葉を聞いて肩が落ちた。

「ご婦人やご令嬢に人気があるのも分かりますね」
「えっ!」

パルマの笑みがオルギュールの心に刺さる。

「いえ、そんなことは…」
「それに娼館でもおモテになられるとか」

この言葉はオルギュールの胸から背中を貫いて、目に見えない大穴を開けた。

「カルトメリ公爵閣下が娼館に向かわれる際には、お供をされるそうですね」
「ええ…まあ…仕方なく…」
「時には一度に3人も4人も相手をされたことがあるとか」
「誰から、それを…」
「えっ!?」

パルマは適当に話を盛っただけなのだが、事実として的を射ていた。

「オルギュール様、本当にそんなことをなさったのですか?」

ここでオルギュールはパルマの軽口に乗ってしまったことを悟った。

『若さゆえの過ちか』

まだまだ若いオルギュールがそんな風に考える。

カルトメリ公爵のお供として向かった娼館で、欲望に任せて3人、4人と相手にしたことがある。
いずれもオルギュールの体力と精力で女達を屈服させてきたが、それでも後悔したことはない。

パルマに会うまでは。

「あ、その…申し訳ない」
「いえ…そんな…」

うつむくオルギュールを見て、その場の光景を想像したパルマも顔を赤らめる。
ただし、オルギュールが後悔の念で一杯なのに対して、パルマは別のことを考えていた。

『小説に精力絶倫の騎士を登場させたら面白そうね』

もちろんモデルは目の前にいる騎士だ。

「気になさらないで。殿方なら、そうしたアレの発散の場がないと困りますもの」
「…はあ」
「でも、お好きな相手ができたら控えた方がよろしいかと」
「…ですね」
「お相手の方に知られてしまったら大変ですし」
「…ええ」

オルギュールはかろうじて立っていた。
頭の中で『知られてしまったら大変』の言葉が飛び回る。
騎士として培った精神力のたまものながら、これまで経験したどんな戦場よりも苦戦を感じた。

「こ、これから、できるだけ身を正して行きますので…」
「そうね。あら…」

うつむいてばかりのオルギュールの顔にパルマが手を添えて上を向かせる。
一筋流れた髪をパルマが手櫛で整えた。

「せっかくの騎士様が台無しですよ」
「ありがとうございます」

ラマナイトの呼び声を聞いたパルマは「それでは、後ほど」と足早に去っていく。
オルギュールは、ドレスに開いたパルマの背中をまぶしそうに見送った。
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