194 / 250
第135話 ココット商会
しおりを挟む
「ハルト・ラント・ココットと申します」
ワーレンバーグ公爵家の別邸を訪れたのは、まだ20代半ばに見える女。
『美人だ』
これはタルバンの、つまり男の目で見た感想。
『街中で10人の男とすれ違ったら、9人は振り返るだろうな』
わずかに暗さがある金髪は肩ほどで真っすぐに切りそろえている。
青い瞳に通った鼻筋と引き締まった唇は、男は言うまでもなく女の視線も引きつけるだろう。
しかし化粧っ気を押さえているため、あからさまな女らしさは感じない。
『これで化粧をして着飾れば、貴族令嬢と言ってもおかしくない』
そんな男の目を抑えて、アラーナ(タルバン)として応対する。
「アラーナ・ワーレンバーグです。お呼びたてして申し訳ありません」
「いいえ、お目にかかることができて、うれしく思います」
その後にハルトが付け加える。
「ココット商会の当主は私の祖父にあたります」
アラーナ(タルバン)は「ああ」と納得した。
勧められてソファに腰を降ろしたハルト。
テーブルを挟んで向かいにアラーナ(タルバン)が座り、その背後にアリィ(アラーナ)とパルマが立つ。
訪問客に対峙するいつもの配置。
「訪れるのに良いお天気で何よりでした」
初対面ゆえに、会話は当たり障りのない内容から始まる。
そして次第に突っ込んだ内容に変わってくる。
その流れで出てくるのが結婚話だ。
「遅れましたが、ご結婚おめでとうございます」
「ありがとうございます」
互いに軽く頭を下げた。
「ワーレンバーグ公爵家とは、あまりお取引がございませんでしたので…」
「そのようですね」
「パーティーにお招きいただけなかったのが残念でした」
「そうでしたか…」
微笑みこそ変わらないものの、ハルトの雰囲気が変わったのをアラーナ(タルバン)らが感じた。
「ですので、今回のお話が持ち込まれた時、お爺様に『ぜひ』とお願いしたのです」
「はあ…」
「なぜか分かります?」
「……」
アラーナ(タルバン)は少し考える。
「どこかで、お会いしましたか?」
「いいえ、お会いするのは、初めてです」
ハルトは「お会いするのは」を強めに口にした。
「…そうですか」
「お名前は何度もお聞きしていましたけど…」
考え込むアラーナ(タルバン)。
パルマが「最終候補者ではありませんか」と耳打ちした。
「ああ!」
先日のカルトメリが言いかけたことを思い出す。
『はっきり言ってくれれば、いや、無理か…』
アラーナ(タルバン)はチラッとアリィ(アラーナ)を見た後、改めてハルト嬢の顔を見つめる。
パルマの声が届いたようで、「そうです」と言わんばかりの表情をしていた。
この若さで商会における取引の一端を担っているのであれば、商才、つまり能力的にも問題ないだろう。
ワーレンバーグ公爵家の調査で最終候補として残っただけのことはある。
『しっかり着飾れば、兄さんの横に立っていてもお似合いか』
ただし、その後に『まあ、アラーナには及ばないが』と兄バカを発揮する。
「最後の8人の中のお1人でしたのね」
「新聞によっては、10人とも12人ともありましたけど」
「8人、と聞いています」
「それなら4分の1がここにいることになります」
ハルトは笑みを大きくした。
アラーナ(タルバン)はハルトの意図を詳しく聞いてみたくなる。
「先ほどの『ぜひ』をお伺いしてもよろしいかしら?」
3人の緊張をよそに、ハルトはうなずいた。
ワーレンバーグ公爵家の別邸を訪れたのは、まだ20代半ばに見える女。
『美人だ』
これはタルバンの、つまり男の目で見た感想。
『街中で10人の男とすれ違ったら、9人は振り返るだろうな』
わずかに暗さがある金髪は肩ほどで真っすぐに切りそろえている。
青い瞳に通った鼻筋と引き締まった唇は、男は言うまでもなく女の視線も引きつけるだろう。
しかし化粧っ気を押さえているため、あからさまな女らしさは感じない。
『これで化粧をして着飾れば、貴族令嬢と言ってもおかしくない』
そんな男の目を抑えて、アラーナ(タルバン)として応対する。
「アラーナ・ワーレンバーグです。お呼びたてして申し訳ありません」
「いいえ、お目にかかることができて、うれしく思います」
その後にハルトが付け加える。
「ココット商会の当主は私の祖父にあたります」
アラーナ(タルバン)は「ああ」と納得した。
勧められてソファに腰を降ろしたハルト。
テーブルを挟んで向かいにアラーナ(タルバン)が座り、その背後にアリィ(アラーナ)とパルマが立つ。
訪問客に対峙するいつもの配置。
「訪れるのに良いお天気で何よりでした」
初対面ゆえに、会話は当たり障りのない内容から始まる。
そして次第に突っ込んだ内容に変わってくる。
その流れで出てくるのが結婚話だ。
「遅れましたが、ご結婚おめでとうございます」
「ありがとうございます」
互いに軽く頭を下げた。
「ワーレンバーグ公爵家とは、あまりお取引がございませんでしたので…」
「そのようですね」
「パーティーにお招きいただけなかったのが残念でした」
「そうでしたか…」
微笑みこそ変わらないものの、ハルトの雰囲気が変わったのをアラーナ(タルバン)らが感じた。
「ですので、今回のお話が持ち込まれた時、お爺様に『ぜひ』とお願いしたのです」
「はあ…」
「なぜか分かります?」
「……」
アラーナ(タルバン)は少し考える。
「どこかで、お会いしましたか?」
「いいえ、お会いするのは、初めてです」
ハルトは「お会いするのは」を強めに口にした。
「…そうですか」
「お名前は何度もお聞きしていましたけど…」
考え込むアラーナ(タルバン)。
パルマが「最終候補者ではありませんか」と耳打ちした。
「ああ!」
先日のカルトメリが言いかけたことを思い出す。
『はっきり言ってくれれば、いや、無理か…』
アラーナ(タルバン)はチラッとアリィ(アラーナ)を見た後、改めてハルト嬢の顔を見つめる。
パルマの声が届いたようで、「そうです」と言わんばかりの表情をしていた。
この若さで商会における取引の一端を担っているのであれば、商才、つまり能力的にも問題ないだろう。
ワーレンバーグ公爵家の調査で最終候補として残っただけのことはある。
『しっかり着飾れば、兄さんの横に立っていてもお似合いか』
ただし、その後に『まあ、アラーナには及ばないが』と兄バカを発揮する。
「最後の8人の中のお1人でしたのね」
「新聞によっては、10人とも12人ともありましたけど」
「8人、と聞いています」
「それなら4分の1がここにいることになります」
ハルトは笑みを大きくした。
アラーナ(タルバン)はハルトの意図を詳しく聞いてみたくなる。
「先ほどの『ぜひ』をお伺いしてもよろしいかしら?」
3人の緊張をよそに、ハルトはうなずいた。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる