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第136話 ハルトの心境
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「最初は怖かったんですよ」
ハルト・ラント・ココットはわざとらしく身を縮こませた。
「公爵家の家人が驚かせてしまったようですね」
ハルトは「ええ」と大きくうなずいた。
「私の身元調査をしているらしいと分かるまでは、お父様もお爺様も私を閉じ込めておこうとしたり…」
「申し訳ありませんでした」
直接関わっていないものの、この場にいるワーレンバーグ公爵家の一員としてアラーナ(タルバン)が謝罪した。
「いえいえ、事情を察してからは、身に余る光栄と言うか、まさか私がと言うか…」
ハルトの言いように、アラーナ(タルバン)が「フフッ」と笑う。
「ところで、アラーナ様のクリスパ領ではいかがでしたか?」
「今にして思えば、見知らぬ人がいるなあと言うくらいで…」
「そうなんですね」
「まあ、クリスパ領自体が貧しい土地ですので、取られるものがないと言っても良いくらいで」
「でも“クリスパの宝石”が狙われていたんですよね」
アラーナ(タルバン)が笑みを強める。
後ろで聞いていたアリィ(アラーナ)は厚めの化粧の下で頬を赤らめた。
「その呼び方がふさわしいのかどうか…」
アラーナ(タルバン)の言葉にハルトが大笑いする。
「お似合いですよ。選ばれなかった私は言うのも変ですけど」
反応に困ったアラーナ(タルバン)は苦笑する。
「ただ、まさか私が公爵夫人にって気持ちが強かったので、落ち込むようなことはありませんでした」
「……」
「まあ、それはそれとして選ばれた人が気になりました」
「それで……」
「ええ、『ぜひ』なんですよ」
アラーナ(タルバン)はうなずいた。
「それで、いかがでしたか?」
ハルトは右手の人差し指を立てる。
「1つだけ、1つだけ確実に負けた……って、思いました」
「そう…1つ…。どこかお聞きしても?」
ハルトは「ここです」と自分の胸を両手でつかんで、ギュギュッと揉んだ。
一瞬、部屋が静まり返った後、アラーナ(タルバン)が噴き出した。
アリィ(アラーナ)とパルマも笑いをこらえるのに必死になる。
さらにアラーナ(タルバン)は腕と扇子で胸-パルマの傑作-を隠す。
この辺りのしぐさは、もはや自然なもの。
「失礼いたしました」
ハルトが深く頭を下げる。
「もっとも、その他が優っているってわけでもありませんし、素敵な公爵夫人だと思います」
「ありがとうございます」
アラーナ(タルバン)も深く頭を下げた。
それで終わりかと思ったものの、ハルトが話しを続ける。
「それに、王都で開催された結婚披露パーティーでも、ひと騒動あったとか」
「……そうでしたか?」
アラーナ(タルバン)は素知らぬふりをしようとしたが、ハルトは逃がさない。
「私だったら、逆に噴水へ突き落していたかもしれませんね」
「まあ!」
アラーナ(タルバン)は大げさに反応する。
ココット商会の耳目は、いろいろと遠くまで見聞きできるようだ。
「さて…」
ハルトは姿勢を正す。
「随分、お話が反れてしまいましたね」
「いいえ、楽しいお話でした」
「今回は何かご入用と伺いましたが…」
「はい」
アラーナ(タルバン)が目くばせすると、パルマが用意した本を広げた。
ハルト・ラント・ココットはわざとらしく身を縮こませた。
「公爵家の家人が驚かせてしまったようですね」
ハルトは「ええ」と大きくうなずいた。
「私の身元調査をしているらしいと分かるまでは、お父様もお爺様も私を閉じ込めておこうとしたり…」
「申し訳ありませんでした」
直接関わっていないものの、この場にいるワーレンバーグ公爵家の一員としてアラーナ(タルバン)が謝罪した。
「いえいえ、事情を察してからは、身に余る光栄と言うか、まさか私がと言うか…」
ハルトの言いように、アラーナ(タルバン)が「フフッ」と笑う。
「ところで、アラーナ様のクリスパ領ではいかがでしたか?」
「今にして思えば、見知らぬ人がいるなあと言うくらいで…」
「そうなんですね」
「まあ、クリスパ領自体が貧しい土地ですので、取られるものがないと言っても良いくらいで」
「でも“クリスパの宝石”が狙われていたんですよね」
アラーナ(タルバン)が笑みを強める。
後ろで聞いていたアリィ(アラーナ)は厚めの化粧の下で頬を赤らめた。
「その呼び方がふさわしいのかどうか…」
アラーナ(タルバン)の言葉にハルトが大笑いする。
「お似合いですよ。選ばれなかった私は言うのも変ですけど」
反応に困ったアラーナ(タルバン)は苦笑する。
「ただ、まさか私が公爵夫人にって気持ちが強かったので、落ち込むようなことはありませんでした」
「……」
「まあ、それはそれとして選ばれた人が気になりました」
「それで……」
「ええ、『ぜひ』なんですよ」
アラーナ(タルバン)はうなずいた。
「それで、いかがでしたか?」
ハルトは右手の人差し指を立てる。
「1つだけ、1つだけ確実に負けた……って、思いました」
「そう…1つ…。どこかお聞きしても?」
ハルトは「ここです」と自分の胸を両手でつかんで、ギュギュッと揉んだ。
一瞬、部屋が静まり返った後、アラーナ(タルバン)が噴き出した。
アリィ(アラーナ)とパルマも笑いをこらえるのに必死になる。
さらにアラーナ(タルバン)は腕と扇子で胸-パルマの傑作-を隠す。
この辺りのしぐさは、もはや自然なもの。
「失礼いたしました」
ハルトが深く頭を下げる。
「もっとも、その他が優っているってわけでもありませんし、素敵な公爵夫人だと思います」
「ありがとうございます」
アラーナ(タルバン)も深く頭を下げた。
それで終わりかと思ったものの、ハルトが話しを続ける。
「それに、王都で開催された結婚披露パーティーでも、ひと騒動あったとか」
「……そうでしたか?」
アラーナ(タルバン)は素知らぬふりをしようとしたが、ハルトは逃がさない。
「私だったら、逆に噴水へ突き落していたかもしれませんね」
「まあ!」
アラーナ(タルバン)は大げさに反応する。
ココット商会の耳目は、いろいろと遠くまで見聞きできるようだ。
「さて…」
ハルトは姿勢を正す。
「随分、お話が反れてしまいましたね」
「いいえ、楽しいお話でした」
「今回は何かご入用と伺いましたが…」
「はい」
アラーナ(タルバン)が目くばせすると、パルマが用意した本を広げた。
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