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第139話 水入らずの結晶
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「こんなことになるとは…」
ベッドに横たわる愛妻ラマナイトの手をホルスト・ラッペルが握る。
「でも、思い当たる節はあったからねえ」
「それはそうだが…」
「パルマとデュランには手紙を送るよ」
「ああ、それが良いねえ」
話は数日前にさかのぼる。
「どうした?」
「このところ何だか体が重くってねえ」
ラマナイトが伸びをする。
さらに首を左右に曲げると、コリコリと音がする。
「もう年かねえ」
「何を言っとる」
ここまで大きなケガや病気には縁のなかったラマナイト。
しかし、その後も微熱が続いたこともあり、今朝になって医師のガッサンを呼んだ。
「どれどれ」
「どうですか?」
「慌てるな」
「そうは言っても…」
心配そうなホルストを横に、医師として経験豊富なガッサンは冷静だ。
頭のてっぺんから足の先まで診察したガッサン・ショウキュは、ひとつの診断を下した。
「うむ、間違いなく、お・め・で・た、つまり妊娠だな」
ホルストとラマナイトは同時に「「はあ?」」と聞き返す。
「もう6カ月か7カ月くらいか。覚えはあるんだろう?」
「ええ、まあ、いや、その…」
アラーナの結婚以来、当主であるタルバン・クリスパ伯爵とともに、娘のパルマと息子のデュランも王都に出ている。
さして広くはないクリスパ伯爵の家ながら、ホルスト夫婦は2人っきりの水入らず。
倦怠期ともなれば別ながら、仲の良い夫婦がすることなど決まっている。
いや、一番最初は…
「6カ月前…、そうか、タルバン様達が王都に行った時…」
その夜にからタルバンらがクリスパ領に戻ってくるまで、夫婦で何度も励んだ覚えが……あった。
「しかしデュランが生まれて20年以上、全く音沙汰がなかったのに…」
「こういうのはめぐり合わせだからな。手紙でも書いて知らせてやるが良かろう」
「それは、そうだが…」
「パルマとデュランもそうだったが、アラーナ様にお子がお生まれになったら、良い遊び相手になりそうだな」
「まあ、そう言うことにでもなれば…」
ガッサンの言葉で、いくらか光明が差した。
「黙っている訳にもいかないし、知らせてあげましょうよ」
「そうだな、…おや?」
「誰か来ましたかね?」
2人の耳に馬のいななきと車輪の音が聞こえる。
クリスパ伯爵家の前に馬車が止まったようだ。
「ちょっと見てくるよ」
「ええ」
ホルストは妻の手を名残惜しそうに放した。
ベッドに横たわる愛妻ラマナイトの手をホルスト・ラッペルが握る。
「でも、思い当たる節はあったからねえ」
「それはそうだが…」
「パルマとデュランには手紙を送るよ」
「ああ、それが良いねえ」
話は数日前にさかのぼる。
「どうした?」
「このところ何だか体が重くってねえ」
ラマナイトが伸びをする。
さらに首を左右に曲げると、コリコリと音がする。
「もう年かねえ」
「何を言っとる」
ここまで大きなケガや病気には縁のなかったラマナイト。
しかし、その後も微熱が続いたこともあり、今朝になって医師のガッサンを呼んだ。
「どれどれ」
「どうですか?」
「慌てるな」
「そうは言っても…」
心配そうなホルストを横に、医師として経験豊富なガッサンは冷静だ。
頭のてっぺんから足の先まで診察したガッサン・ショウキュは、ひとつの診断を下した。
「うむ、間違いなく、お・め・で・た、つまり妊娠だな」
ホルストとラマナイトは同時に「「はあ?」」と聞き返す。
「もう6カ月か7カ月くらいか。覚えはあるんだろう?」
「ええ、まあ、いや、その…」
アラーナの結婚以来、当主であるタルバン・クリスパ伯爵とともに、娘のパルマと息子のデュランも王都に出ている。
さして広くはないクリスパ伯爵の家ながら、ホルスト夫婦は2人っきりの水入らず。
倦怠期ともなれば別ながら、仲の良い夫婦がすることなど決まっている。
いや、一番最初は…
「6カ月前…、そうか、タルバン様達が王都に行った時…」
その夜にからタルバンらがクリスパ領に戻ってくるまで、夫婦で何度も励んだ覚えが……あった。
「しかしデュランが生まれて20年以上、全く音沙汰がなかったのに…」
「こういうのはめぐり合わせだからな。手紙でも書いて知らせてやるが良かろう」
「それは、そうだが…」
「パルマとデュランもそうだったが、アラーナ様にお子がお生まれになったら、良い遊び相手になりそうだな」
「まあ、そう言うことにでもなれば…」
ガッサンの言葉で、いくらか光明が差した。
「黙っている訳にもいかないし、知らせてあげましょうよ」
「そうだな、…おや?」
「誰か来ましたかね?」
2人の耳に馬のいななきと車輪の音が聞こえる。
クリスパ伯爵家の前に馬車が止まったようだ。
「ちょっと見てくるよ」
「ええ」
ホルストは妻の手を名残惜しそうに放した。
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