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第144話 芋の苗
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「こんなところかな」
デュランが腰を上げた。
土を小高く盛った山が彼の足元から長く続いている。
同じ様な土の山がパルマ、アラーナ(タルバン)、アリィ(アラーナ)の足元からも伸びている。
「じゃあ、苗を植えていきましょう」
パルマが3人に苗を手渡す。
芋を水に浸して生えてきたツルを手ごろなところで切ったもの。
一見同じような苗に見えるが、葉の色形や茎の太さが違う。
ハルト・ラント・ココットから譲り受けた種類の異なる4つの芋。
それぞれの違いを際立たせるために、4人が別々の芋の苗を担当することにした。
「はいよ」
デュランは慣れた調子で苗を植えていく。
アラーナ(タルバン)とアリィ(アラーナ)も貴族らしからぬ手際の良さを見せた。
パルマも手早く自分の畝に苗を植え終わる。
「まさか公爵邸の片隅に芋畑があるとは思わないでしょうね」
パルマの言葉に3人が笑う。
「公爵夫人が畑仕事をするのも珍しいですよ」
デュランの発言にも3人がうなずく。
「伯爵が畑仕事をするのは…クリスパ領じゃよく見る景色か」
アラーナ(タルバン)が言うと、3人が大笑いした。
クリスパ領ではタルバンもアラーナも、亡くなった先の伯爵夫妻も畑仕事に精を出していた。
もちろん、そうでもしないと家計が成り立たないからだ。
パルマが残った苗を指さす。
「こちらの半分は領地に送ります」
「頼むよ」
ワーレンバーグ公爵邸で育てるのは、あくまでもお試しであり、本番はクリスパ領。
そこで大々的に育つかどうかが問題だ。
「早ければ3~4カ月くらいで収穫できますが、その後の熟成が1カ月くらいですので…」
「5カ月か…、するとソバの方が早いな」
ココット商会から少し前に届いたソバの種は先んじてクリスパ領に送ってある。
品種こそ別ながら、ソバはクリスパ領でも育てている。
よほどのことが起きない限り、そこそこに収獲できるだろう。
【問題は味ですね】
「そうだな」
ハルトは「質が不揃いであったり大味でもあったり」と言っていた。
「何にせよ、芋とソバでクリスパ領の食糧事情が変わるのを願うだけだ」
アラーナ(タルバン)の言葉に3人がうなずいた。
「アラーナ様、ココット商会からお手紙が届きました」
ワーレンバーグ公爵家の執事であるコーネリア・センシスが手紙を持ってくる。
「ありがとう」
口調が伯爵から公爵夫人に変わる。
封を開けると…
パシュミーラ種のヤギを入手できたこと。
翌々週にクリスパ領に届けること。
この2つが簡潔に…
タルバン伯爵にお会いできるのが楽しみであること。
こちらは美辞麗句が山盛りで書いてあった。
アラーナ(タルバン)は小さくため息をついて、パルマらに手紙を見せる。
「予定を立てておいてくださいね」
パルマとデュランが「はい」と応じ、アリィ(アラーナ)もうなずいた。
一心胴体にも感じる4人、特にアラーナ(タルバン)やアリィ(アラーナ)と通じ合っているデュランを見たコーネリアは内心複雑な気持ちが湧き上がるのを抑えきれなかった。
デュランが腰を上げた。
土を小高く盛った山が彼の足元から長く続いている。
同じ様な土の山がパルマ、アラーナ(タルバン)、アリィ(アラーナ)の足元からも伸びている。
「じゃあ、苗を植えていきましょう」
パルマが3人に苗を手渡す。
芋を水に浸して生えてきたツルを手ごろなところで切ったもの。
一見同じような苗に見えるが、葉の色形や茎の太さが違う。
ハルト・ラント・ココットから譲り受けた種類の異なる4つの芋。
それぞれの違いを際立たせるために、4人が別々の芋の苗を担当することにした。
「はいよ」
デュランは慣れた調子で苗を植えていく。
アラーナ(タルバン)とアリィ(アラーナ)も貴族らしからぬ手際の良さを見せた。
パルマも手早く自分の畝に苗を植え終わる。
「まさか公爵邸の片隅に芋畑があるとは思わないでしょうね」
パルマの言葉に3人が笑う。
「公爵夫人が畑仕事をするのも珍しいですよ」
デュランの発言にも3人がうなずく。
「伯爵が畑仕事をするのは…クリスパ領じゃよく見る景色か」
アラーナ(タルバン)が言うと、3人が大笑いした。
クリスパ領ではタルバンもアラーナも、亡くなった先の伯爵夫妻も畑仕事に精を出していた。
もちろん、そうでもしないと家計が成り立たないからだ。
パルマが残った苗を指さす。
「こちらの半分は領地に送ります」
「頼むよ」
ワーレンバーグ公爵邸で育てるのは、あくまでもお試しであり、本番はクリスパ領。
そこで大々的に育つかどうかが問題だ。
「早ければ3~4カ月くらいで収穫できますが、その後の熟成が1カ月くらいですので…」
「5カ月か…、するとソバの方が早いな」
ココット商会から少し前に届いたソバの種は先んじてクリスパ領に送ってある。
品種こそ別ながら、ソバはクリスパ領でも育てている。
よほどのことが起きない限り、そこそこに収獲できるだろう。
【問題は味ですね】
「そうだな」
ハルトは「質が不揃いであったり大味でもあったり」と言っていた。
「何にせよ、芋とソバでクリスパ領の食糧事情が変わるのを願うだけだ」
アラーナ(タルバン)の言葉に3人がうなずいた。
「アラーナ様、ココット商会からお手紙が届きました」
ワーレンバーグ公爵家の執事であるコーネリア・センシスが手紙を持ってくる。
「ありがとう」
口調が伯爵から公爵夫人に変わる。
封を開けると…
パシュミーラ種のヤギを入手できたこと。
翌々週にクリスパ領に届けること。
この2つが簡潔に…
タルバン伯爵にお会いできるのが楽しみであること。
こちらは美辞麗句が山盛りで書いてあった。
アラーナ(タルバン)は小さくため息をついて、パルマらに手紙を見せる。
「予定を立てておいてくださいね」
パルマとデュランが「はい」と応じ、アリィ(アラーナ)もうなずいた。
一心胴体にも感じる4人、特にアラーナ(タルバン)やアリィ(アラーナ)と通じ合っているデュランを見たコーネリアは内心複雑な気持ちが湧き上がるのを抑えきれなかった。
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