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第2章 藩主の務め
第13話 母の心配
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「おはようございます」
側室である恵と一夜を過ごした翌朝。
早々に母親の福が岡岳の屋敷の離れを訪れた。
名目は善吉の書の指南。しかし福の意図は別にある。
「あの…」
口を開きかけた福に先んじて善吉が答える。
「おお、恵はよくしてくれたぞ」
「…さようでございますか」
福は明らかに安心した様子をみせた。
「一度だけだったと聞きましたが」
「ああ、随分と痛がっておったのでな。2度目は止めておいた」
福が「ありがとうございます」と深く頭を下げる。
「いや、大事にしたいのは福も恵も同じだ。無理をさせるつもりはない」
「はい」
「ただ恵はそうでもなかったな」
「何か失礼でも?」
「いやいや、『手で』とか『口で』とか、何としても余を満足させようと懸命だった」
「はあ、さようでしたか」
「そんな情の深いところも母に似たようだな」
そう言われた福が恥ずかしそうに袖で顔を隠した。
「しかし恵の様子はどうだ?かなり痛がっておったが」
福は顔を出して有難いことと会釈する。
「多少痛みがあるようで、薬湯を飲んで休んでおります。明日の夜には平気かと…」
ほぼ1日おきに福が善吉の寝所を訪れていることから、福と恵とで交互に訪れることを考えているらしい。
「そうか、しかし、まあ、そんなに無理をすることもあるまい」
「ありがとうございます」
「何なら、福に続けて来てもらっても構わぬぞ」
「ああ、それはさすがに…」
福も善吉の相手をした翌日は体を休めていることが多い。
そんな福の世話をしつつ、恵は「母上ばかり独り占めして…」と言っていたのを思い出す。
この先しばらくは母と娘とで半分こになるんだろうと福は感慨深く思う。
その時に昨夜のことを思い出した善吉は「プッ」と吹き出す。
「どうかなされましたか?」
「福、いろいろ余の話をしていたようだな。昨夜は驚いたぞ」
「…と申されますと?」
「いきなり恵が着ているものを脱いでな
「はあ」
善吉は両手両足を広げて立つ。
「このように『どうぞ、ご覧ください』と言ったのだ」
「ええっ!」
福の呆気に取られた顔を見て、善吉はさらに笑う。
「余が『“ほと”を見るのが好きだから』と言ったそうだな」
「……ああ、それで」
福は申し訳なさそうに肩をすぼめる。
「確かにそう申した覚えがございます」
「まあ、恵なりに考えたのだろう。しかしなあ、はっはっは…」
善吉は腹を抱えて笑う。
福は「もう、そのくらいで…」と善吉の着物を引っ張った。
「ああ、すまんな」
善吉は着物を整えて座り直した。
「よほど自信があったのだろう。恵の“そそ”はもちろん、隅々まで見せてもらった」
「…いかがでございましたか?」
「うむ、実に美しかった」
またも福がホッとした顔を見せる。
「ええ、昨日は一刻(約2時間)近くも風呂に入って体を磨いておりましたので…」
「ほほぅ」
「この母も呆れるくらいでした」
「やれやれ」と首を振る福だったが、善吉は違った反応を見せる。
「うーむ、一刻(約2時間)か。そんなところは母に似たのではないか?」
「わらわに、でございますか?」
善吉が首をかしげる。
「はて…いつだったかな。こう申しておったぞ。『普段はせいぜい四半刻(約30分)も湯に入らないのに、余の寝所を訪れる日には短くとも半刻(約1時間)、長ければ一刻(約2時間)も湯殿で体を磨いている』と」
パッと福の頬が赤くなる。
「そ、そんなことは…」
「ない、と?」
「………ございます」
福は素直に認めた。
「そ、その女の身だしなみとして、当然のことでございますから」
「身だしなみ…か。いずれにしても余からすれば、うれしい限りだ。今日も磨いてくるのか?」
「…お望みであれば」
真っ赤になった顔を福は袖で隠す。
そんな福を愛おしく感じた善吉は福を抱きしめた。
「善吉、今は、これ以上…」
「そうだな、楽しみは夜にとっておこう」
その後は書の指南となった。
しかしなかなか近寄くに座ろうとしない福に対して、善吉の方から手を引いて傍に座らせる。
「ここはどうするのだ?」
「それは…」
福が伸ばした手に善吉が触れると、「ひゃっ」と福が手を引っ込める。
「き、今日はこの辺で…」
早々に指南を切り上げた福の背中を善吉が見送った。
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次回はもちろん、善吉と福のムニャムニャ…ではなく、新展開につながる日常話です。
側室である恵と一夜を過ごした翌朝。
早々に母親の福が岡岳の屋敷の離れを訪れた。
名目は善吉の書の指南。しかし福の意図は別にある。
「あの…」
口を開きかけた福に先んじて善吉が答える。
「おお、恵はよくしてくれたぞ」
「…さようでございますか」
福は明らかに安心した様子をみせた。
「一度だけだったと聞きましたが」
「ああ、随分と痛がっておったのでな。2度目は止めておいた」
福が「ありがとうございます」と深く頭を下げる。
「いや、大事にしたいのは福も恵も同じだ。無理をさせるつもりはない」
「はい」
「ただ恵はそうでもなかったな」
「何か失礼でも?」
「いやいや、『手で』とか『口で』とか、何としても余を満足させようと懸命だった」
「はあ、さようでしたか」
「そんな情の深いところも母に似たようだな」
そう言われた福が恥ずかしそうに袖で顔を隠した。
「しかし恵の様子はどうだ?かなり痛がっておったが」
福は顔を出して有難いことと会釈する。
「多少痛みがあるようで、薬湯を飲んで休んでおります。明日の夜には平気かと…」
ほぼ1日おきに福が善吉の寝所を訪れていることから、福と恵とで交互に訪れることを考えているらしい。
「そうか、しかし、まあ、そんなに無理をすることもあるまい」
「ありがとうございます」
「何なら、福に続けて来てもらっても構わぬぞ」
「ああ、それはさすがに…」
福も善吉の相手をした翌日は体を休めていることが多い。
そんな福の世話をしつつ、恵は「母上ばかり独り占めして…」と言っていたのを思い出す。
この先しばらくは母と娘とで半分こになるんだろうと福は感慨深く思う。
その時に昨夜のことを思い出した善吉は「プッ」と吹き出す。
「どうかなされましたか?」
「福、いろいろ余の話をしていたようだな。昨夜は驚いたぞ」
「…と申されますと?」
「いきなり恵が着ているものを脱いでな
「はあ」
善吉は両手両足を広げて立つ。
「このように『どうぞ、ご覧ください』と言ったのだ」
「ええっ!」
福の呆気に取られた顔を見て、善吉はさらに笑う。
「余が『“ほと”を見るのが好きだから』と言ったそうだな」
「……ああ、それで」
福は申し訳なさそうに肩をすぼめる。
「確かにそう申した覚えがございます」
「まあ、恵なりに考えたのだろう。しかしなあ、はっはっは…」
善吉は腹を抱えて笑う。
福は「もう、そのくらいで…」と善吉の着物を引っ張った。
「ああ、すまんな」
善吉は着物を整えて座り直した。
「よほど自信があったのだろう。恵の“そそ”はもちろん、隅々まで見せてもらった」
「…いかがでございましたか?」
「うむ、実に美しかった」
またも福がホッとした顔を見せる。
「ええ、昨日は一刻(約2時間)近くも風呂に入って体を磨いておりましたので…」
「ほほぅ」
「この母も呆れるくらいでした」
「やれやれ」と首を振る福だったが、善吉は違った反応を見せる。
「うーむ、一刻(約2時間)か。そんなところは母に似たのではないか?」
「わらわに、でございますか?」
善吉が首をかしげる。
「はて…いつだったかな。こう申しておったぞ。『普段はせいぜい四半刻(約30分)も湯に入らないのに、余の寝所を訪れる日には短くとも半刻(約1時間)、長ければ一刻(約2時間)も湯殿で体を磨いている』と」
パッと福の頬が赤くなる。
「そ、そんなことは…」
「ない、と?」
「………ございます」
福は素直に認めた。
「そ、その女の身だしなみとして、当然のことでございますから」
「身だしなみ…か。いずれにしても余からすれば、うれしい限りだ。今日も磨いてくるのか?」
「…お望みであれば」
真っ赤になった顔を福は袖で隠す。
そんな福を愛おしく感じた善吉は福を抱きしめた。
「善吉、今は、これ以上…」
「そうだな、楽しみは夜にとっておこう」
その後は書の指南となった。
しかしなかなか近寄くに座ろうとしない福に対して、善吉の方から手を引いて傍に座らせる。
「ここはどうするのだ?」
「それは…」
福が伸ばした手に善吉が触れると、「ひゃっ」と福が手を引っ込める。
「き、今日はこの辺で…」
早々に指南を切り上げた福の背中を善吉が見送った。
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次回はもちろん、善吉と福のムニャムニャ…ではなく、新展開につながる日常話です。
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