黒い森で魔女は微睡む

稲村うお

文字の大きさ
9 / 21
黒い森の魔女

子供たち と 寝物語?

しおりを挟む
この町の家は基本的に広い。
大きな街に比べれば人口は遥かに少ないものの、消して過疎化が進んでいる訳でもない。土地が広く地価もさほど高くないために、恐らく多くの家に客間がある。

それはこの家も例外ではなく、親戚が多いとかで寝具の用意もばっちりだった。
子供2人に流されて何やかんやで泊まらせてもらうことになったわけであるが、この子達は私と一緒に寝ると言っているし、見張りの交代だと席を立ったご夫人たちにも「仲良しね」「よかったね」と暖かい目で見られてしまった。寝るのか。子供と、魔女が。いいのか?我、魔女ぞ?

「お姉ちゃんは真ん中ね」
「いや、ここは大人が端に……」
「端は俺が行くから!ほら寝た寝た!」

と、いうわけで。2人用と思われるベッドに3人仲良く川の字になって寝転んだ。

「おやすみ、なさい……?」
「お話してから!」
「俺も聞きたい!」
「おおう、」

両脇をがっちり固められ、仰向けの大人は両腕上げて降参したくなった。気の弱い大人には効果覿面の包囲網。完全にこちらの敗北だ。
こうなっては仕方がない。話し下手ながらも他人の話を聞くことの楽しさを知っている私は、意外と満更でもないようで何か面白いネタはないかと考えた。
はて、子供に聞かせられる話なんてあっただろうか。

「えっと……何を話せば……聞きたいこととか、ある?」
「馬!俺あの馬の話が聞きたい!」
「馬?魔女なのにほうきに乗らないの?」
「馬だよね、ね?」
「あー……まあ、箒は乗りにくいからなあ……」
「乗りにくいんだ……」

棒状のものに跨るのは股間へのダメージも中々のものなのでおすすめはしない。
どちらかと言えば乗りやすさからして圧倒的に馬(の形をした別の存在)を推奨する。しかし、今回のように町へ出たり遠出したりすることは殆どないので乗ること自体はそう多くない。
いくら森広しといえども生活圏はそう広くないので徒歩で大体事足りてしまうのだ。ついでに言うと外出する機会もそんなに多くない。
人間関係構築がド下手で準引きこもりとか良いとこなしか?と自分で言いたくなったのは、子供たちの手前やめておいた。

「馬ってどんな子?色は、名前はあるの?」
「ええと、色は……色……」
「透明……?」
「まあ、そうか……あぁ、名前。そういえばそんなものもあったな。ノアっていうんだ」

森じゃわざわざ名前を呼ぶこともそうないのですっかり忘れていた。
だって仕方がないだろう。基本的に他に話しかける相手がいないのだから、名前を呼ばずとも自ずと自分に話しかけていると認識してくれるのだ。
必要のないものは忘れ去られる。これ自然の摂理なり。

「その子、名前呼んでもらってないの……?」
「意地悪している訳じゃないよ。他に話しかける相手がいないから呼ぶ機会が無いだけ」
 
そう言うと、ソニアちゃんの焦げ茶色の長い睫毛は不服そうに伏せられた。
年齢にしては少し大人びた雰囲気をもつ少女は、悪戯を咎められた子供のように唇をとがらせてぽつりと不満のような独り言をこぼす。

「何だか、かわいそう……」
「うん……」
「そう言われてもなあ……そうだな。じゃあ、次にあの子に会った時は2人が名前で呼んであげて」
「いつ?明日?」
「うん?んん……そうだな、考えとく」
「わーい!」
「わーい!」

______人前でそう簡単に姿を表すような種族ではないはずなのだけれど、あいつ人間嫌いだったりしないのかな。
呼べば来てはくれるだろうから帰りも送迎をお願いするとしよう。
 
「______という訳で、森の植物にはそこらのものよりマナや魔力の含有量が高く……ふふ、そうか。もう遅いもんね、おやすみ」

眠気に抗おうと船を漕いでいた2人も、耐えきれずにとろとろと眠りへと落ちていった。
ぎちぎちのベッドで寝た次の日は、体が痛くて仕方なかった。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...