黒い森で魔女は微睡む

稲村うお

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黒い森の魔女

ノア と 子供たち

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日が昇ったらやる事やってさっさと帰ろうと思っていたのに、当然のように朝食までご馳走になってしまった。
ジョージさんが朝からパン屋に行って焼きたてを買ってきてくれたのだが、これがまた絶品だった。
硬めに焼いたパンにハムと、この家の人たち(聞けばこの家は農家だったらしい)自慢のじゃがいもに軽く味をつけたものを挟んで頂いたのだが、森の中に篭もりっぱなしで自給自足や採集が基本な私には大変贅沢な朝食であった。
エレナさんの顔色は昨日よりずっと良くなっていたのであとは回復を待つのみだろう。
子供たちとの約束を果たすために外に出ると、ブルルルッと家の傍から声が聞こえてきて方に生暖かい鼻息がかかる。
馬……じゃなくて、ノアだ。てっきり森に帰ったものかと思っていたのだけれど、どうやらずっとここで待っていてくれたらしい。
家に戻ったら何か礼をしなければいけないなと思いながら、子供たちに向き直って彼を紹介した。

「この子だよ、昨日言ってた」
「ノア!!!!」
「カッコいー!!!」
「ぶふゥッ」
「うーん、お前も中々ノリがいいね」

一応言っておくと、元来人里離れた場所に住まう彼らはまず人間に近寄りたがらない。近くに気配を感じれば即座に離れていくので出会うことすら稀なのだが、個体差というやつだろうか。

「明るいところで見るとこんな感じなんだ……」
「触らせてくれるの?魔女さん!この子撫でてもいい?」
「ん?ああ、どうぞ」

それにしたって珍しい。知覚しやすいように普段はうっすら見える程度の輪郭をくっきりと目立たせてわざわざ姿を現してくれている。そのうえ、昨晩のように地べたにぺたりと腹をつけて座り込んで妹の方に頭を撫でさせてやったり、2人を背に乗せて軽く歩き回ったりしてみせている。

「乗せてくれるの?私たち二人とも?」
「やったあ!」

高い、速い!と言ってきゃーきゃー騒いでいる二人を軒先に腰を下ろしてひとり眺めていた。何とも微笑ましい光景だなと思っていると、斜め後ろでドアが開いた。ジョージさんだ。

「あ、ジョージさん。お仕事ですか?」
「ああ、こんな時でも畑の世話は休めないんでね。っと、馬……?」
「まあ、一応は」
「初めて見る種類だな、ありゃ……」
「ほんと、本来人前に姿を見せるような種類じゃないはずなんですが」
「まあ、何にせよ遊んでくれてると助かるよ。ここのところ家族全員沈んでたんで、あんないい顔久しく見てない気がする」
「それならよかった」

それじゃ、俺は仕事に行ってくるから2人のことはよろしく頼む、と言ってジョージさんは畑の方へと歩いていった。
子供たちはというと、今度はなにやら尻尾と戯れているようだった。右へ左へバッサバッサと揺れる尾を避けたり捕まえたりして遊んでいるらしい。
よく分からない遊びだが、両者楽しそうで何よりだ。
家に帰る途中でパンでも買っていこうかと考えながら、膝に頬杖をついて日向でくるくると駆け回る2人と1頭を見ていた。
ふとジョージさんにもうすぐ帰る事を伝え忘れているのに気がついてため息をついた。何となく、もうちょっと遊んでて欲しいみたいな雰囲気というか、もう暫く我々がここに留まるような空気があった、気がする。
じゃれている子供たちはまだまだ遊び足りなさそうで、この様子だとあと1時間くらいは余裕で駆け回っていそうな気がした。

「帰るタイミング、見失ったかな……」

まあ、彼________ノアをこうして人里に連れてくることもそうないので、折角だしもう暫く遊ばせておくことにした。朝食まで頂いてしまったので、これ以上長居するのも申し訳ない。
お昼前にはお暇するとしよう。
それにしても、今日はいい天気だなあ。

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