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黒い森の魔女
騎士たち と 魔女
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会議室での2人きりの茶会ののち、副団長、班長3名が合流し、調査会議が行われた。
「__________と、いう訳で。今回の調査にはこちらのトリスタ殿に協力を仰ぐことになった」
「……ご紹介にあずかりました。トリスタ・モナーテと申します。どうぞよろしく」
しないでいいです。
心の中でそう呟きながら相手の顔を見てきちんと挨拶をした。騎士というのはどうも体格がよいらしく、威圧感がある。ニコリともしない面々相手によく声が震えなかったものだと内心感心しながら再び席に着いた。
今回の私は「森のことでもし困ったことがあればなんでも言ってね」という相談者的立ち位置らしい。
__________って、なんだそれは。調査するのが目的なら自分たちで頑張ってほしい。黒い泥とか言われてもよく分からないので正直困るんだけど。なんて人前で言えるわけもないので今私にできるのはただ「知らないことを聞かれませんように」と祈ることだけだった。
「では次に、オーグさん」
「ああ。今回の被害があったのは村から少し離れた森の浅い部分。この町の人間がそれなりに出入りをする場所だと聞いている。今回の調査の目的は被害者が『黒い泥』と呼んだ目標の正体を突き止めることだ。1班と2班は東西に別れて調査を。3班はサポートがメインだからここに待機、と。こんなところかな。誰か質問は?」
「何か手がかりや目印になりそうなものに目星は?調査と言っても闇雲に探せばいいという訳ではないでしょう」
「それについてなんだが……トリスタ殿、説明をお願いしても?」
「ええ、はい」
そろそろ当たるかと思っていたら案の定。5人の視線がこちらを向いて、緊張で思考が肉体と分離しそうだった。
「今回の一件は、瘴気が原因で引き起こされたものと思われます。濃度はかなり濃いので目の前にあればすぐに分かるかと……長い間放置された死骸や風通しの悪い場所が怪しいでしょうね。あとは、その、精神論、のような話になってしまうのですが……」
「どうぞ、続けて」
「……はい。第六感__________要は勘、なのですが。何か思うところがあれば従ってみてください。瘴気の濃いところに本能的に近づきたがらない人がいるんです」
今回は人数が多いので分かる人もいるやもしれませんから、と付け加えて姿勢を正す。
言えた。ちゃんと言えた、はず。相手の目を見て言えたかどうかはちょっと記憶にないが、まあ大事なのはこの場合内容だから良かったということにしよう。
「他、何か気になることは?」
「はい、3班からです。モナーテ殿はこちらで待機ということで間違いありませんか?」
「え、ええ……私はそう聞いていますが」
「でしたら!是非ともこの森の仔細をお聞きしたい!」
「構いませんが……」
「よしっ!」
分厚いレンズの眼鏡をかけた調査団第3班班長が拳を握って喜んでいた。ああ、森のことが気になるのか。確かに王国側の調査もろくに進んでいない土地だったはずだ。私の家の周りさえ荒らされなければできる限り手を貸すつもりであるので承諾した。
このあとしばらくしてから各責任者の話し合いが終わり、全体会議が行われ先の話し合いでまとまった情報や方針が共有された。森の中へと向かっていく彼らを調査本部だという建物の中から見送った私は、今度は森の地形やら植生やらについて知りたいという第3班の面々にあれやこれやと質問攻めにされていた。
「ふむ……それではこの森の植物の分布は一般のものと仕組みとしてはそう変わらない、と」
「見た目こそおどろおどろしいものが多いですが、そうですね。この辺りの土地は地脈があることもあってか植物が魔力を帯びやすいんです。日当たりが悪くないのに葉が黒々としているのも魔力のせいだと考えられているようです」
「いや~!安心しましたよ!噂通りの場所だったらどうしようかと心配で心配で……」
「噂……ああ、色々言われているようですね。全く、私としては人が入ってこないので有難い話ですが」
「魔女や魔物がわんさか居るなんて、流石にありませんよね」
「魔物は……まあ、そこまで多くは居ませんね……」
全く居ない訳では無いし今あなたの目の前にいるのが魔女なのだが。まあわざわざ言うことでもないので口には出さずに出来うる限りの笑顔を浮かべてやり過ごす。口は災いの元。これ魔女が忘れてはならないそこそこ重要な言葉なり。
「お話中すみません、少しよろしいか」
「ヒューグベルト団長!」
「構わないよ。失礼、ええと……」
「自分はオズワルド・べーリッヒであります!」
「べーリッヒさん、少し席を離れますね」
「すまない、少々魔女殿を借りる」
「ごゆっくり!」
スタスタと先を歩くヒューグベルトを追いかけてパタパタと木張りの床を駆けてゆく。何かあったのだろうかと内心ひやひやしながらとにかく足を動かした。
「オズワルド班長……今……」
「ん?どうかしたかな」
「ヒューグベルト団長、なんて言ってました……?」
「何って魔女殿を借りると…………ん?……はっ?」
「__________と、いう訳で。今回の調査にはこちらのトリスタ殿に協力を仰ぐことになった」
「……ご紹介にあずかりました。トリスタ・モナーテと申します。どうぞよろしく」
しないでいいです。
心の中でそう呟きながら相手の顔を見てきちんと挨拶をした。騎士というのはどうも体格がよいらしく、威圧感がある。ニコリともしない面々相手によく声が震えなかったものだと内心感心しながら再び席に着いた。
今回の私は「森のことでもし困ったことがあればなんでも言ってね」という相談者的立ち位置らしい。
__________って、なんだそれは。調査するのが目的なら自分たちで頑張ってほしい。黒い泥とか言われてもよく分からないので正直困るんだけど。なんて人前で言えるわけもないので今私にできるのはただ「知らないことを聞かれませんように」と祈ることだけだった。
「では次に、オーグさん」
「ああ。今回の被害があったのは村から少し離れた森の浅い部分。この町の人間がそれなりに出入りをする場所だと聞いている。今回の調査の目的は被害者が『黒い泥』と呼んだ目標の正体を突き止めることだ。1班と2班は東西に別れて調査を。3班はサポートがメインだからここに待機、と。こんなところかな。誰か質問は?」
「何か手がかりや目印になりそうなものに目星は?調査と言っても闇雲に探せばいいという訳ではないでしょう」
「それについてなんだが……トリスタ殿、説明をお願いしても?」
「ええ、はい」
そろそろ当たるかと思っていたら案の定。5人の視線がこちらを向いて、緊張で思考が肉体と分離しそうだった。
「今回の一件は、瘴気が原因で引き起こされたものと思われます。濃度はかなり濃いので目の前にあればすぐに分かるかと……長い間放置された死骸や風通しの悪い場所が怪しいでしょうね。あとは、その、精神論、のような話になってしまうのですが……」
「どうぞ、続けて」
「……はい。第六感__________要は勘、なのですが。何か思うところがあれば従ってみてください。瘴気の濃いところに本能的に近づきたがらない人がいるんです」
今回は人数が多いので分かる人もいるやもしれませんから、と付け加えて姿勢を正す。
言えた。ちゃんと言えた、はず。相手の目を見て言えたかどうかはちょっと記憶にないが、まあ大事なのはこの場合内容だから良かったということにしよう。
「他、何か気になることは?」
「はい、3班からです。モナーテ殿はこちらで待機ということで間違いありませんか?」
「え、ええ……私はそう聞いていますが」
「でしたら!是非ともこの森の仔細をお聞きしたい!」
「構いませんが……」
「よしっ!」
分厚いレンズの眼鏡をかけた調査団第3班班長が拳を握って喜んでいた。ああ、森のことが気になるのか。確かに王国側の調査もろくに進んでいない土地だったはずだ。私の家の周りさえ荒らされなければできる限り手を貸すつもりであるので承諾した。
このあとしばらくしてから各責任者の話し合いが終わり、全体会議が行われ先の話し合いでまとまった情報や方針が共有された。森の中へと向かっていく彼らを調査本部だという建物の中から見送った私は、今度は森の地形やら植生やらについて知りたいという第3班の面々にあれやこれやと質問攻めにされていた。
「ふむ……それではこの森の植物の分布は一般のものと仕組みとしてはそう変わらない、と」
「見た目こそおどろおどろしいものが多いですが、そうですね。この辺りの土地は地脈があることもあってか植物が魔力を帯びやすいんです。日当たりが悪くないのに葉が黒々としているのも魔力のせいだと考えられているようです」
「いや~!安心しましたよ!噂通りの場所だったらどうしようかと心配で心配で……」
「噂……ああ、色々言われているようですね。全く、私としては人が入ってこないので有難い話ですが」
「魔女や魔物がわんさか居るなんて、流石にありませんよね」
「魔物は……まあ、そこまで多くは居ませんね……」
全く居ない訳では無いし今あなたの目の前にいるのが魔女なのだが。まあわざわざ言うことでもないので口には出さずに出来うる限りの笑顔を浮かべてやり過ごす。口は災いの元。これ魔女が忘れてはならないそこそこ重要な言葉なり。
「お話中すみません、少しよろしいか」
「ヒューグベルト団長!」
「構わないよ。失礼、ええと……」
「自分はオズワルド・べーリッヒであります!」
「べーリッヒさん、少し席を離れますね」
「すまない、少々魔女殿を借りる」
「ごゆっくり!」
スタスタと先を歩くヒューグベルトを追いかけてパタパタと木張りの床を駆けてゆく。何かあったのだろうかと内心ひやひやしながらとにかく足を動かした。
「オズワルド班長……今……」
「ん?どうかしたかな」
「ヒューグベルト団長、なんて言ってました……?」
「何って魔女殿を借りると…………ん?……はっ?」
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わー!ありがとうございます!!!
更新とてもゆっくりになりそうですが何卒よろしくお願いします*_ _)
引き込まれる物語ですね♪♪続き気になったのでお気に入り登録させてもらいました。また遊びに来ますね♪♪
本当ですか!そう言っていただけると書いたかいがあります。
読みにくい部分も多くあるかと思いますが、この先の話も読んでいただけると嬉しいです。