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第2章 風紀委員編
37. 実験体
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真っ白な部屋――床も壁も、そこにいる人さえも真っ白な空間だ。
白い服を着た10歳くらいの少女が無表情で立っている。
白衣を着た二人組が少女の前にやってきた。
メガネをかけた男が少女に話しかける。
「こんにちは」
「……」
少女は何もいわず、じっと男を見つめる。
「ダメそうですね」
もうひとりの男が冷たい目を少女に向ける。
「おかしいね。定着率は極めて高く、90%を超えているというのに」
「今回も失敗ですかね?」
「そう判断するのも早計だと思うよ」
「しかし処分するなら早いほうが良いです。再利用できなくなりますので」
少女は二人組の話を黙って聞いている。
処分という言葉を聞いても、表情一つ動かさない。
「わかった。でも、もう少しだけ待って欲しい」
「わかりました」
メガネの男は少女に尋ねる。
「君の名前は?」
少女はじっと男を見つめる。
沈黙が落ちる。
メガネのかけてないほうの男が、しびれを切らし、口を開きかける。
しかし、それよりも先に少女が呟いた。
「……テトラ」
◇ ◇ ◇
テトラはゆっくりと目を開けた。
体の節々が痛い。
「ここは……」
「起きたようだな」
テトラの目の前には、黒ローブを着た男が立っていた。
「誰ですか?」
「答えると思うか?」
「いえ聞いてみただけです」
テトラの返答に、男は少しだけ眉をひそめる。
「さすがは人形姫だ。こんなときも無表情だとはな」
「……」
テトラには、驚きも恐怖もなかった。
そもそも恐怖という感情を彼女は知らない。
そのおかげで泣き叫ぶこともなく、冷静に状況を分析できた。
体を縛られている。
手足を動かすと、カチャカチャと手錠が音を立てた。
手錠には特殊な紋様が描かれている。
「魔力封じですか……」
それは囚人用に使われる手錠で、魔法の使用を封じる効果がある。
「いまさら私を連れ戻すつもりですか?」
「なんのことだ?」
「知らないのですか?」
「俺は指示を受けただけだからな」
なるほど、と少女は頷く。
――研究室の人間ではないようですね。そもそも、こんな手錠で私を拘束しようとするあたり、彼らとは思えませんが。
魔力封じの手錠。
その手錠をはめられた人間は、魔力を操作できなくなる。
まれに膨大な魔力を持つ者や、魔力操作に優れた者に効かないことがあるが、大抵の者は魔法が使えなくなる。
ただし、テトラは普通ではなかった。
――研究室の者たちなら、こんな手錠を使ってくるはずがありません。
テトラに薬でも投与し、動けないようにしてくるはずだ。
そもそも、誘拐と言う、まわりくどい真似などしてこない。
テトラは黒ローブの男を見る。
認識阻害で顔が見えないようになっている。
立ち振舞から、武術を嗜んでいる者ということはわかった。
――一撃で仕留めるが良さそうですね。
彼女は瞬時に魔力を操作する。
そして詠唱を唱えた。
「水の刃」
次の瞬間、水の刃が男へと飛来していく。
一切の手加減をせず、最悪殺しても良いと考えて、魔法を放った。
しかし――シュパッ。
水の刃は男に届かなかった。
男はローブに隠してあった剣を使い、水魔法を一刀両断した。
「――――」
次の瞬間、男がテトラの目の前まで迫っていた。
テトラは喉を鷲掴みにされる。
「あぅ……あっ」
「お前魔力封じが効かないようだな」
「……っ」
「安心しろ。生きたまま連れてこいという命令だ。殺しはしない」
テトラにとっては、まったく安心できる状況ではなかった。
殺さないと言われたからといって、身の安全が保証されているわけではない。
そも誘拐された時点で、かなり危険な状況だ。
彼女は魔力操作に集中し、再び魔法を放とうとする。
だが――。
「ぐっ……!」
男によって腹を蹴られた。
息ができなくなる。
加えて、首を力強く締め付けられる。
「うぐぐ……」
テトラは霞む視界の中、男の顔を見た。
至近距離では認識阻害が発動しにくい。
――あなたは……。
男の顔を彼女は知っている。
なぜなら、その男は学園の教師であったからだ。
男が低い声を出す。
「下手な真似はするなよ? 間違って殺してしまうといかんからな」
男がテトラを威嚇するように笑った。
しかし、次の瞬間――
「――グアアァァあっァァ!?」
男の体が突然、発火した。
白い服を着た10歳くらいの少女が無表情で立っている。
白衣を着た二人組が少女の前にやってきた。
メガネをかけた男が少女に話しかける。
「こんにちは」
「……」
少女は何もいわず、じっと男を見つめる。
「ダメそうですね」
もうひとりの男が冷たい目を少女に向ける。
「おかしいね。定着率は極めて高く、90%を超えているというのに」
「今回も失敗ですかね?」
「そう判断するのも早計だと思うよ」
「しかし処分するなら早いほうが良いです。再利用できなくなりますので」
少女は二人組の話を黙って聞いている。
処分という言葉を聞いても、表情一つ動かさない。
「わかった。でも、もう少しだけ待って欲しい」
「わかりました」
メガネの男は少女に尋ねる。
「君の名前は?」
少女はじっと男を見つめる。
沈黙が落ちる。
メガネのかけてないほうの男が、しびれを切らし、口を開きかける。
しかし、それよりも先に少女が呟いた。
「……テトラ」
◇ ◇ ◇
テトラはゆっくりと目を開けた。
体の節々が痛い。
「ここは……」
「起きたようだな」
テトラの目の前には、黒ローブを着た男が立っていた。
「誰ですか?」
「答えると思うか?」
「いえ聞いてみただけです」
テトラの返答に、男は少しだけ眉をひそめる。
「さすがは人形姫だ。こんなときも無表情だとはな」
「……」
テトラには、驚きも恐怖もなかった。
そもそも恐怖という感情を彼女は知らない。
そのおかげで泣き叫ぶこともなく、冷静に状況を分析できた。
体を縛られている。
手足を動かすと、カチャカチャと手錠が音を立てた。
手錠には特殊な紋様が描かれている。
「魔力封じですか……」
それは囚人用に使われる手錠で、魔法の使用を封じる効果がある。
「いまさら私を連れ戻すつもりですか?」
「なんのことだ?」
「知らないのですか?」
「俺は指示を受けただけだからな」
なるほど、と少女は頷く。
――研究室の人間ではないようですね。そもそも、こんな手錠で私を拘束しようとするあたり、彼らとは思えませんが。
魔力封じの手錠。
その手錠をはめられた人間は、魔力を操作できなくなる。
まれに膨大な魔力を持つ者や、魔力操作に優れた者に効かないことがあるが、大抵の者は魔法が使えなくなる。
ただし、テトラは普通ではなかった。
――研究室の者たちなら、こんな手錠を使ってくるはずがありません。
テトラに薬でも投与し、動けないようにしてくるはずだ。
そもそも、誘拐と言う、まわりくどい真似などしてこない。
テトラは黒ローブの男を見る。
認識阻害で顔が見えないようになっている。
立ち振舞から、武術を嗜んでいる者ということはわかった。
――一撃で仕留めるが良さそうですね。
彼女は瞬時に魔力を操作する。
そして詠唱を唱えた。
「水の刃」
次の瞬間、水の刃が男へと飛来していく。
一切の手加減をせず、最悪殺しても良いと考えて、魔法を放った。
しかし――シュパッ。
水の刃は男に届かなかった。
男はローブに隠してあった剣を使い、水魔法を一刀両断した。
「――――」
次の瞬間、男がテトラの目の前まで迫っていた。
テトラは喉を鷲掴みにされる。
「あぅ……あっ」
「お前魔力封じが効かないようだな」
「……っ」
「安心しろ。生きたまま連れてこいという命令だ。殺しはしない」
テトラにとっては、まったく安心できる状況ではなかった。
殺さないと言われたからといって、身の安全が保証されているわけではない。
そも誘拐された時点で、かなり危険な状況だ。
彼女は魔力操作に集中し、再び魔法を放とうとする。
だが――。
「ぐっ……!」
男によって腹を蹴られた。
息ができなくなる。
加えて、首を力強く締め付けられる。
「うぐぐ……」
テトラは霞む視界の中、男の顔を見た。
至近距離では認識阻害が発動しにくい。
――あなたは……。
男の顔を彼女は知っている。
なぜなら、その男は学園の教師であったからだ。
男が低い声を出す。
「下手な真似はするなよ? 間違って殺してしまうといかんからな」
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しかし、次の瞬間――
「――グアアァァあっァァ!?」
男の体が突然、発火した。
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