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1章⭐︎リオンシュタット初心者編⭐︎

世話係エルフがやってきた

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-side オーウェン-



「今日から、お世話係をさせていただくトムです。よろしくお願いいたします」
「同じく、レムです。よろしくお願いいたします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」


 新しくお世話が係にきてくれたエルフは双子の兄弟だった。名前は、トムとレム。2人とも、美しい透き通った水色の髪の毛をしている。エルフなだけあって、中性的で、とても綺麗な顔立ちだ。年齢は、15歳で冒険者らしい。エリーゼさんが、紹介してくれた。


「--っと言っても、今のところ、仕事は屋敷の掃除と、食事くらいだな。領主の仕事も特に無いし。こんなに、有能そうな人たちに来てもらうのは、少し申し訳ない気持ちもしてきた」
「そんな事、無いですよ!精霊様の住居を、整える事が出来るのは、非常にありがたいです!」


 ですです!とレムも頷いている。
 分かってはいたが、本当にエルフは、精霊を信仰しているようだ。


「シルフ。何か、この人たちにやってほしい事とかある?」
『特に無いな。精霊は、基本他の助けを必要としない生物だ』
「ほーーん」
『強いて言うならだ。力も戻ってきたし、久々に肩慣らしがしたい。そろそろ、外に連れて行ってくれ』
「外?魔鏡って事?」
『ああ……、そう言えば、人間ではそう言うらしいな。我らにとっては庭みたいなものだが』


 ブランですら、危険だと言っていた、魔境を庭とか……、思ったよりも、精霊達は強いのかもしれない。

 
「外…… か。しかし、学園の時は、戦闘には、自信があったが、実践の場では、俺は、正直そこまで強く無いと言う事が、ここに来た時に分かったかたな……。一人で行くのは危険だから、無理かもしれない」


 俺がそう言った時、トムが、「大丈夫です。」と返答してきた。レムがその後に発言する。


「我々は、護衛の役目も担っています。当然、必要な戦闘訓練も受けていますし、冒険者ランクもAランクです」


 そう言って、トムとレムはギルドカードを差し出してくる。確かに、リオンシュタットギルドのAランクカードだった。
 なら、流石に大丈夫かもしれない。一応、エリーゼとブランに相談をしてから決めよう。そう思ったので、一旦、ギルドへ行く事をみんなに伝えて、身支度する事にしたのだった。



 ♢ ♢  ♢  ♢  ♢



 もう何度目かは、分からないが、冒険者ギルドへ着いた。今は、16時。ちょうど、夕暮れ時で、周りは見えにくくなるため、冒険者が仕事を切り上げて戻ってくる時間帯を狙った。ブランやエリーゼが、比較的いる、この時間帯を、狙って来訪する事を最近覚えたのだ。
 追放されるまでは、ここまで、冒険者と密接に関わることなど、想像もしていなかった。貴族時代の俺が知ったら失神するだろう。分からないこともあるものだな。


 中に入ると、エリーゼとブランもいた。
 今は、いつも通り、ギルドマスター室にみんなで集まっている。


「それで、魔鏡へ行きたいと」
「そうです……、シルフが肩慣らししたいと言っていまして……」
「なるほど、俺は反対だな。いくら、才能があるからといっても、お前には戦闘経験が無さすぎる。護衛もいるが、いざとなった時に、オーウェン自身が弱かったら、他の2人も簡単に、魔物に、やられちまう。魔境はそんなに甘くねえ。魔鏡へ行く前に、一般的な魔物相手に戦闘経験を積んでからでも遅く無いんじゃねえの?」
「やっぱり、そうか」


 ブランのこの返答は、予想の範疇内だ。
 元々、行き先が、魔鏡と言って、渋られるとは思っていたのだ。リオンシュタットに来た新人冒険者も、最初にいきなり、魔鏡へ入る事はしないように、歓迎会と言うのはあるとこの前言っていたからな。
 ましてや、俺は領主という立場もあるから、新人冒険者達よりも、慎重に行動しなければならない。


「どうしても、行きたいというわけでは無いんだろ?シルフ様も」
『ああ。時間もあるし、別に、こいつの成長を見守ってからでも、別に悪くは無い』


 シルフは、俺に向かって、優しく微笑む。
 今世では、親は、いかにも貴族の愛のない親という雰囲気で、親っぽくなかったので、新鮮気分である。なんと言うか、シルフは親よりも親っぽいな。


「そうかい。なら、オーウェン様のために、特別カリキュラムを組んで、強くなってもらうかね?」
「いいな、それ!」
「特別カルキュラム?」


 どうやら、強くなるための訓練を俺のために作ってくれるらしい。実践形式の訓練は初めてなので、好奇心がそそられた。



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