学園最強の悪役令息たる俺様への営業妨害〜破滅寸前の家に転生した青年、真面目でヘタレでいい人な事が暴かれていく〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中

文字の大きさ
15 / 25
2章 悪役令息、領地を改革する

悪役令息、領土の一部を貰う

しおりを挟む
-side ジークハルト-


「ジークハルト」
「なんですか?父上?」
「国王陛下からお前へ勅令だ。ロンバルに行け。なんでもお前に領地経営を任せたいらしい。エンシェントドラゴンに精霊を従えたからその報酬だそうだ。俺もお前の領地経営には興味あるからな。楽しみにしている。ガハハハハ!」
「は、はあ……?」


 パーティが終わってから数日後、いきなり父上ーーポチ=デズモンドに呼び出されたかと思えば、悪役すぎる豪快なガハハ笑いで、領地経営を押し付けられた。しかも押し付けられたのは辺境のど田舎。まあ、転移魔法で一瞬で行けるし、学園に通いながらも管理する事は充分可能か。古代竜であるズンドラゴンや精霊さんのローラもいるから移動や監視はなんとかなるだろう。それはそれとして、もうちょっと、上品に笑えないのだろうかこの親父。
 問題はこの人が何を考えているかだ。ウィリアムがこの人のモーニングルーティンの調査中だが一向に尻尾を出していない。極めてほのぼのとした生活を送っているみたいだ。
 笑ってるし、ぶっちゃけ何にも考えてなさそうではある。
 でも、なんか裏がありそうなんだよなー……。


『なんも考えてないのです。真偽の目は発動していないのです』


 ローラが教えてくれる。真偽の目は反応していない。
 すなわち悪意もない上に本当だという事。
 というか精霊さんのその機能めちゃくちゃ便利だな。やっぱり精霊と契約しといて良かった。こんなメリットがあるなんて。破滅回避に一歩近づけたような気がする。


『やっぱり、ウチの事道具だとしか思ってないのです?』
「ソ、ソンナコトナイヨ…」
『真偽の目が発動しているのです!』
「へ!?」
『冗談なのです』


 焦った~。流石の俺様でも精霊さんを道具だと思うことはない。
 大事な仲間だ。


『そういう仲間を思いやる心を持っているのが分かっているから契約したのです』


 嬉しい事を言ってくれる。これからもお互いを信頼しあっていきたいところだ。
 そんなこんなで、俺たちはその場から去ったのだった。


 ♢  ♢  ♢  ♢  ♢


「それにしても、こんな領地をもらったところで特になにもないな」
『行ったことあるけど、ど田舎なのです』
「ど直球だな」
 
 
 もうちょっとオブラートに包もうか。聞けば、ロンバルという土地は黒字ギリギリの田舎らしい。
 商業都市1つ、町が3個、村が20個住民も穏やかで、平和。結構頻繁に強い魔物が出るらしいが、冒険者ギルドが何箇所かあるため、倒せないほどではないみたいだ。俺は別に野心とかはないから、その土地をよくしたいとか、特にその土地を使ってやりたい事とかはない。


「我が広々と自由に飛び回れる土地だったらいいのだー!」
『王都よりも自然が豊かな土地だったらいいのです!』
「おっ!そうだな」


 確かに、ズンドラゴンやローラにとってはロンバルの方が良いのかもしれない。
 なんせ、王都でのこの子達はほとんど人前に姿を見せずに、隠蔽の魔法で透明化している。
 田舎で人目につかずにのびのびと暮らしたいという欲はあるだろう。
 国王陛下もそのために配慮してくださったのかもしれない。
 そう考えると、領地を豊かにして存続させる必要があるのかもしれない。
 これは領民のためではない。領地を豊かにするのはあくまで自分の仲間達のためだ。

 
『ふわわわわ!幸せパワーが溢れてくるのです?』
「……?」
「主人なんか徳積んだのか?」
「え!?いや、別に」
『確実に徳積んでるのです!精霊は主人が徳を積んでいると神々に認められると、幸せパワーでレベルアップできるようになるのです!』
「なんだそのシステム!というか本当に徳なんて積んでねーし!」
「どうせ主人のことだから、領民のことを思って色々な政策を思い浮かべているのだ。それが神々に認められたのだー」
「はあああ?べ、別にそんな大層な事やろうと思ってねーし。自分の為だし」
『素直じゃないのです!完全に真偽の目が発動しているのです!』
「はいダウト、また嘘だろ?」
『嘘じゃないのです!本当に真偽の目が発動しているのです!』
「はあああ?絶対そんな事ないだろ!?」
『嘘じゃないです!精霊の判断は絶対なのです!』
『いい加減認めるのだー。悪ぶっても主人の人の良さは隠しきれないのだー』
「悪ぶってねーし。というか!なんだその生暖かい目は!子供扱いするなー!」


 この世界、素直じゃない奴に厳しすぎるだろう。ちょっと。
 神様とか精霊とかが判断?そんなのそっちの方が正しいに決まってるじゃねえか!?
 俺様認めねえけど。顔が熱い。そんな事を考えながらズンドラゴンに乗って王都を出発するのだった。
 
 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...