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第3章 芍薬の咲く庭で
逢瀬
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勝つ春は残した家は、門を開くとガラス戸があり3畳ほどの玄関、3畳ほど小さな居間と8畳ほどの寝室広い縁側がある。2階は丸窓がついていた。
縁側からは手入れされた日本庭園が見える。縁側で庭を眺めながら、紅丸はいった。
「あれは芍薬がもう咲きそうやな。俺な、塔子ちゃんに初めて会うた時、風に靡いて儚くて散りそうな枝垂れ桜やと思った。せやからペンダントもそれにしてん。でも今は大輪の芍薬が咲きそうな蕾やな」
紅丸は饒舌だった。
「小野小町に深草少将が毎晩芍薬を一株ずつ植えてった話知っとる?百夜通い。俺も塔子ちゃんに許してもらえるまで、それやりたいねんけどええか?」
笑う紅葉丸は眩しい。
「この庭を芍薬でいっぱいにしたら、俺の花嫁になってほしい」
塔子は頷いた。
塔子は夕飯を作り、二人で食べる。来客用のお布団を並べて一緒に眠り、心地よい朝が来た。
今日は塔子の大学の入学式だった。「また、夕方に来る」と言って、紅丸は雲ヶ畑へ飛び帰る。その姿を見送って、私は大学へ向かう。
ガヤガヤと新入生が歩き、先輩たちがサークルへ勧誘をしている。西洋風の煉瓦造りの講堂、近代的なキャンパス。必要書類やシラバスを抱えて、私は右往左往している。もう大学には行けないんじゃないかと思っていたから、平穏な生活を取り戻せて叫びたいぐらいに嬉しい。
(紅丸のお嫁さんになっても大学は通いつづけたい。いつか就職もして、2人で平凡な家庭を築きたい。置屋育ちの私がやっと普通の大学生になれた)
私の胸元でキラキラとペンダントが揺れる。
しかしキャンパスの大階段の先に、この場に最もそぐわない姿を塔子は見つけた。吹雪だ。しかも9つの尻尾と耳を隠していない。周りには見えていないみたいだった。
「これで普通の大学生になれたね。おめでとう」
警戒しながらも、私は答える。
「吹雪さんが相談のってくれたから、無事に大学生活はじめられます。ありがとうございます」
吹雪が微笑む。口の端が赤い。血がついている気がした。
「礼はいらない。暇で暇で仕方がないときの戯れだからね。塔子のために片付けたわけじゃない」
何を言っているか、よく分からない。
「あの男との最期の夜は楽しめたかな?」
正直に全部話すしかないだろう。相手は神さまなのだから。
「あの、吹雪さんから毒をわけていただいたのは感謝してます。でも紅丸は記憶を取り戻せたので、毒は使ってません」
呆気にとられた表情で吹雪は答えた。
「あー、術かけたやつがあん中にいたんだ。だから記憶を取り戻したんだと思うよ。塔子は優しいんだね。あんなに辛いって昨日泣いていたのに、許せるだなんて」
吹雪は目を細める。塔子はゾクリとする。
「いっそ昨日殺しておいた方が慈悲深かったもしれないけど。そうゆうことなら私は手出しないでおくね」
「あの…毒はどうやったら消えますか。あ、あと身体も元に戻して欲しいです」
「すごいね、塔子。喉元過ぎたら熱さを忘れるっていうけれど、人間の女を愚かさを凝縮したみたいで呆れる」
塔子は、吹雪が何を言っているのか殆ど理解できなかった。
「唇に仕込んだ毒はね、数日ぐらいで抜けるよ。もう存分に盛ったらいい、すぐに子供が欲しいわけじゃないなら身体はそのままにしといたら?術はずしたらあの男は一生盛りつづけるだろう?また子供が欲しくなったら、また私に会いにおいで」
そして、吹雪はニッコリ笑って手を振った。桜に紛れて渦を巻き消えてゆく。
私は消えゆく吹雪にお礼を言った。
縁側からは手入れされた日本庭園が見える。縁側で庭を眺めながら、紅丸はいった。
「あれは芍薬がもう咲きそうやな。俺な、塔子ちゃんに初めて会うた時、風に靡いて儚くて散りそうな枝垂れ桜やと思った。せやからペンダントもそれにしてん。でも今は大輪の芍薬が咲きそうな蕾やな」
紅丸は饒舌だった。
「小野小町に深草少将が毎晩芍薬を一株ずつ植えてった話知っとる?百夜通い。俺も塔子ちゃんに許してもらえるまで、それやりたいねんけどええか?」
笑う紅葉丸は眩しい。
「この庭を芍薬でいっぱいにしたら、俺の花嫁になってほしい」
塔子は頷いた。
塔子は夕飯を作り、二人で食べる。来客用のお布団を並べて一緒に眠り、心地よい朝が来た。
今日は塔子の大学の入学式だった。「また、夕方に来る」と言って、紅丸は雲ヶ畑へ飛び帰る。その姿を見送って、私は大学へ向かう。
ガヤガヤと新入生が歩き、先輩たちがサークルへ勧誘をしている。西洋風の煉瓦造りの講堂、近代的なキャンパス。必要書類やシラバスを抱えて、私は右往左往している。もう大学には行けないんじゃないかと思っていたから、平穏な生活を取り戻せて叫びたいぐらいに嬉しい。
(紅丸のお嫁さんになっても大学は通いつづけたい。いつか就職もして、2人で平凡な家庭を築きたい。置屋育ちの私がやっと普通の大学生になれた)
私の胸元でキラキラとペンダントが揺れる。
しかしキャンパスの大階段の先に、この場に最もそぐわない姿を塔子は見つけた。吹雪だ。しかも9つの尻尾と耳を隠していない。周りには見えていないみたいだった。
「これで普通の大学生になれたね。おめでとう」
警戒しながらも、私は答える。
「吹雪さんが相談のってくれたから、無事に大学生活はじめられます。ありがとうございます」
吹雪が微笑む。口の端が赤い。血がついている気がした。
「礼はいらない。暇で暇で仕方がないときの戯れだからね。塔子のために片付けたわけじゃない」
何を言っているか、よく分からない。
「あの男との最期の夜は楽しめたかな?」
正直に全部話すしかないだろう。相手は神さまなのだから。
「あの、吹雪さんから毒をわけていただいたのは感謝してます。でも紅丸は記憶を取り戻せたので、毒は使ってません」
呆気にとられた表情で吹雪は答えた。
「あー、術かけたやつがあん中にいたんだ。だから記憶を取り戻したんだと思うよ。塔子は優しいんだね。あんなに辛いって昨日泣いていたのに、許せるだなんて」
吹雪は目を細める。塔子はゾクリとする。
「いっそ昨日殺しておいた方が慈悲深かったもしれないけど。そうゆうことなら私は手出しないでおくね」
「あの…毒はどうやったら消えますか。あ、あと身体も元に戻して欲しいです」
「すごいね、塔子。喉元過ぎたら熱さを忘れるっていうけれど、人間の女を愚かさを凝縮したみたいで呆れる」
塔子は、吹雪が何を言っているのか殆ど理解できなかった。
「唇に仕込んだ毒はね、数日ぐらいで抜けるよ。もう存分に盛ったらいい、すぐに子供が欲しいわけじゃないなら身体はそのままにしといたら?術はずしたらあの男は一生盛りつづけるだろう?また子供が欲しくなったら、また私に会いにおいで」
そして、吹雪はニッコリ笑って手を振った。桜に紛れて渦を巻き消えてゆく。
私は消えゆく吹雪にお礼を言った。
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