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翡翠のかんざしの真実
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堯舜は2人を招き入れると、椅子に案内した。両親にあたる人である、招かれざる客とあったとしても皇帝として孝がないとは言われたくないと思ったのことである。
「確かに翡翠のかんざしを持っている女性を妃として迎えたいので、おふれを出しました。3年前に出会い、お互い名前も知らぬまま離れ離れになったからです」
「初耳だわ」
「母上には初めて話しますから、初耳で当たり前ですね」
雲泪は自分の翡翠のかんざしと同じかんざしをつけた銀髪の娘に目をやる。奕世も黙って娘を見つめた。
「それが、この銀蓮の娘なのね、なんて運命なのかしら」
「「違います」」
思わず、堯舜蕣花の声が揃う。
「似合いではないか、龔鴑の王女蕣花との婚礼で我々の二重帝国の絆は揺るぎないものとなる」
奕世が口を挟む。
堯舜は、その無責任な物言いに思わず口をついて言葉が出た。
「あなたの娘なら、腹違いの妹かもしれないのに、結婚できるわけがないだろう」
その言葉に蕣花がたじろぐ。
「蕣花は先の龔鴑王の娘だ。私の伯父の娘にあたる。銀蓮は雲泪の従姉妹にあたる。それに先に生まれたのは銀蓮だから妹ではなくて姉にあたる。お前が私の息子だとしても確かに血は少し濃くなるが問題ないだろう」
蕣花は、奕世に詰め寄る。
「問題ない…問題ないわけないだろう!今の今まで知らなかった事ばかり。私があなたの娘ではないことも知らない!堯舜があなたの息子かもしれないとは何だ!?頭がおかしいのか?」
雲泪は蕣花に心底同情をした。我々親世代は頭がおかしいのである。しかも未だに愛してる、殺してやるなどと刃物沙汰をおこしたり、あの時の精一杯を私たちは生きたとはいえ、めちゃくちゃだと言われたら、認めざる得ない。
蕣花はいつしか泣いていた。堯舜はその肩を抱き、その想いを共有していた。
「翡翠のかんざしから何かわかると思って、ここまで来たが、確かに嫌というほど真実を思い知らされる。お前のようなケダモノの娘でないなら、これほど喜ばしいことはない!」
奕世は悲しみを目にたたえて静かに答えた。
「血が繋がるまいとお前は私の娘だ」
「先の龔鴑王を殺し、血塗られた王位についたのはあなたと聞いている」
「奕世はあなたの母の銀蓮と私を龔鴑王から助けてくれた…」
庇おうと雲泪は口を出すが、あの夜の殺戮が瞼の裏に閃光のごとく広がり、何を言えばいいかわからなくなり、語尾が消え入る。蕣花は奕世を睨みつけながら続ける。
「私は母を覚えてはいないが、母もそなたを憎んだに違いない」
誰も否定をしなかった。細かい事情など、きっと無意味だった。
堯舜は、この親戚の姉に親しみを感じていた。これまで孤独に堯舜がかかえてきた行き場のない圧力か自分で何も出来ないのに祭り上げらる理不尽さも含めて、蕣花は唯一親しく共有できそうな相手と感じていた。
「龔鴑の奕世王よ、朕が朕と名乗れるのは全て、先の皇帝の正統な竜の血筋によるもの。真実がどうであれ、朕の世である限り、奕世王を父と思うことはない」
そして雲泪にも向き直る。
「そして母上にもわきまえていただきたい。この世に朕が生まれたのは母あってこそだが、母も皇太后としての哀家(皇帝に先立たれ、息子が皇帝となった女性のみの第一人称)を名乗るならば、真実がどうあれ宮廷劇を演じ切っていただきたい。朕も政のために後宮を開くのだ。朕はそう生まれたのだ。唯一の愛などもう探さぬ。母上も奕世王も立たれよ。朕はご両人の退席を許す」
「確かに翡翠のかんざしを持っている女性を妃として迎えたいので、おふれを出しました。3年前に出会い、お互い名前も知らぬまま離れ離れになったからです」
「初耳だわ」
「母上には初めて話しますから、初耳で当たり前ですね」
雲泪は自分の翡翠のかんざしと同じかんざしをつけた銀髪の娘に目をやる。奕世も黙って娘を見つめた。
「それが、この銀蓮の娘なのね、なんて運命なのかしら」
「「違います」」
思わず、堯舜蕣花の声が揃う。
「似合いではないか、龔鴑の王女蕣花との婚礼で我々の二重帝国の絆は揺るぎないものとなる」
奕世が口を挟む。
堯舜は、その無責任な物言いに思わず口をついて言葉が出た。
「あなたの娘なら、腹違いの妹かもしれないのに、結婚できるわけがないだろう」
その言葉に蕣花がたじろぐ。
「蕣花は先の龔鴑王の娘だ。私の伯父の娘にあたる。銀蓮は雲泪の従姉妹にあたる。それに先に生まれたのは銀蓮だから妹ではなくて姉にあたる。お前が私の息子だとしても確かに血は少し濃くなるが問題ないだろう」
蕣花は、奕世に詰め寄る。
「問題ない…問題ないわけないだろう!今の今まで知らなかった事ばかり。私があなたの娘ではないことも知らない!堯舜があなたの息子かもしれないとは何だ!?頭がおかしいのか?」
雲泪は蕣花に心底同情をした。我々親世代は頭がおかしいのである。しかも未だに愛してる、殺してやるなどと刃物沙汰をおこしたり、あの時の精一杯を私たちは生きたとはいえ、めちゃくちゃだと言われたら、認めざる得ない。
蕣花はいつしか泣いていた。堯舜はその肩を抱き、その想いを共有していた。
「翡翠のかんざしから何かわかると思って、ここまで来たが、確かに嫌というほど真実を思い知らされる。お前のようなケダモノの娘でないなら、これほど喜ばしいことはない!」
奕世は悲しみを目にたたえて静かに答えた。
「血が繋がるまいとお前は私の娘だ」
「先の龔鴑王を殺し、血塗られた王位についたのはあなたと聞いている」
「奕世はあなたの母の銀蓮と私を龔鴑王から助けてくれた…」
庇おうと雲泪は口を出すが、あの夜の殺戮が瞼の裏に閃光のごとく広がり、何を言えばいいかわからなくなり、語尾が消え入る。蕣花は奕世を睨みつけながら続ける。
「私は母を覚えてはいないが、母もそなたを憎んだに違いない」
誰も否定をしなかった。細かい事情など、きっと無意味だった。
堯舜は、この親戚の姉に親しみを感じていた。これまで孤独に堯舜がかかえてきた行き場のない圧力か自分で何も出来ないのに祭り上げらる理不尽さも含めて、蕣花は唯一親しく共有できそうな相手と感じていた。
「龔鴑の奕世王よ、朕が朕と名乗れるのは全て、先の皇帝の正統な竜の血筋によるもの。真実がどうであれ、朕の世である限り、奕世王を父と思うことはない」
そして雲泪にも向き直る。
「そして母上にもわきまえていただきたい。この世に朕が生まれたのは母あってこそだが、母も皇太后としての哀家(皇帝に先立たれ、息子が皇帝となった女性のみの第一人称)を名乗るならば、真実がどうあれ宮廷劇を演じ切っていただきたい。朕も政のために後宮を開くのだ。朕はそう生まれたのだ。唯一の愛などもう探さぬ。母上も奕世王も立たれよ。朕はご両人の退席を許す」
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