枯れ葉が舞うように。

彩夢 萌

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1. 始まりの花 -ライラック-

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どうも、吟遊詩人ストーリーテラーです。

ああ、リラじゃないのかって?

残念。

僕じゃ嫌だったかな?

ごめんね。

これから始まる物語は、僕が作った物語なんだ。

キミは、その物語の中をこっそり覗いていただろ?


そうさ、これは、あの妖精の物語。

明日夢リラの物語だよ。


***


あるところに一輪の花があった。

それはそれは美しい花で、
もしかして、妖精さんがいたりするんじゃないかと思うほどだった。

花には不思議な力がある。

ちょうど旅の途中。
疲れていた僕は、
そのお花に声をかけた。

「ちょっと失礼、横に座っても?」

もちろん返事が聞こえてくるはずもなく、
静かに優しく座った。

「ありがとう、お水はいかが?」

ついさっき見つけた小川の水が綺麗だったから
いただきますとだけ言って水を分けてもらったんだ。

その小川は、小さくも力強く流れていて、
小さな魚たちも生きていた。

周りの木々が、
青い香りを漂わせ、

太陽の陽が合間を縫って
小川の水面みなも
まるで小さい頃見た
おばあちゃんの宝物のネックレスのように輝かせていた。

その時の水を少し根元にかけると、
そのお花の葉っぱに水滴がしたたる。





ゆっくりと




              流れ落ちていく。





   なぜか



       視線が追っていく。








     ぽた

           ん・・・







ああ、


     落ちた。





すると突然、どこかから笑い声が聞こえた気がした。

気のせいかとも思ったけど、
念の為周りを見渡した。

人間にさっきの僕を見られたら。

お花に話しかける不審者だ。

しかし見つけたのはもっともっと小さい子だった。



あの子だった。



リラは笑顔でそのお花から顔を出すと、

「ありがとう、お花が喜んでるよ」

と言った。

それが初めての出会いだった。


あの子から名前を聞いた訳じゃない。

リラと呼んでいるのは、あの子が出てきたその花が
ライラックリラだったからだ。

リラの花を見ながら、
僕はたくさん英気を養った。


僕は

あの花に恋をしてしまったんだ。



恋を。







そう、あの時僕は恋をしてしまった。



あのお花に。






苦しいから。



だから、きっとすぐあのリラも消えてしまうから。



だから、僕は久しぶりに物語を書く気になった。



***


それがこの物語だよ。

大好きなあの子が僕の中で消えないための物語なんだ。



キミは、ここまでのお話を信じるかい?

妖精はいると信じてくれるかい?

信じるも何も、いるのだけれどね。

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