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第三章

12 初めての宿屋(☆)

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※18歳未満閲覧禁止



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 御者くん人形二体に馬車を操縦させて街へと向かう。
 今日はやや小金持ちの冒険者のパーティーが乗るような、貴族ほどには立派でない程度の馬車にした。

 街外れに到着し、御者くん人形の片方が外から扉を開けてくれる。するとレヴィメウスが先に出ていき、振り返るなりマージェリィに向かって手を差し出してきた。
 お姫様のような扱いにどきどきしながら馬車から降りる。

「あ、ありがとう、レヴィメウス」
「主よ。そう気後れした態度を取るでない。勇者たる我は主を姫として扱うゆえ、もっと堂々とするがよい」
「ええ? ダメだよそんなの。今は私たちは冒険者仲間なんだから。それに『主』って呼び方も今はダメ。『マーゴ』って呼んで」
「ふむ。主のめいのままに。……マーゴよ、いざ街に参らん」
「そうそうその調子。行こ行こ」

 愛称で呼ばれる機会も今までなかったせいですっかり上機嫌になってしまい、スキップしながら街へと入っていった。


 普段行く街より大きい街の中は案の定冒険者が多く、風貌については馴染んでいるように思えた。しかしレヴィメウスの背丈が他の冒険者より頭ひとつ分高いせいかすれ違う人が視線を向けてきていた。特に女性冒険者がレヴィメウスを一目見るなりはっと目を見開き、通り過ぎた直後に黄色い声を浴びせてくる。

「やっぱりあなた、目立っちゃうね。背が高いし、なによりとっても綺麗な顔してるし」
「マーゴよ。何をたわけたことを……」
「え?」
「街行くものは皆、マーゴを見ているのだぞ?」
「まさか。何で私?」

 きょろきょろと辺りを見回す。確かに視線を巡らせた途端に顔を逸らす人は目に付いたものの、それが男性であれ女性であれ自分を見ているかそれともレヴィメウスを見ているかは判断が付かなかった。
 老婆のときにはできない自分のペースで弾むように歩を進めながら、得意になって語り出す。

「私は注目に値しない一介の冒険者です~。勇者様に一時的に拾ってもらったんだけど、設定としてはCランクでまだ弱い薬しか作れなくて、素材集めくらいしか依頼をこなせなくて~」

 今の装備をする際にイメージした冒険者像を熱く語る。
 レヴィメウスは苦笑しつつも、その話題についてはそれ以上続けようとはしなかった。


   ◇◇◇◇


「っはー! 大量大量!」

 古書店巡りは成功裏に終わった。欲しかった本だけでなく興味を惹かれる本がどの本屋にもたくさんあり、鞄に入りきらない本はレヴィメウスに持たせてしまった。腰の下から顎下にまで届く隠す大量の本でも軽々と運んでくれている。

「こんなに街に長居したことなかったからちょっと疲れちゃったかも。今日は宿屋に泊まってっちゃおうか」
「それは妙案だな」
「レヴィメウスも疲れてるよね?」
「まあ……な」

 軽々と本を運んでいるように見えてもきっと疲れているに違いない。マージェリィは、レヴィメウスを知らぬ間にこき使ってしまったことを申し訳なく思ったのだった。


 さすが冒険者が多く集まる街なだけにどの宿もほとんど部屋が埋まっていて、三件目にしてようやく部屋を押さえられた。
『随分買い込んだねえ!』と宿の女将が笑いながら案内してくれたのは、二人で使うにはかなり広めの部屋だった。シングルベッドが二台と小振りな円卓、そして姿見というシンプルな内装だったが、掃除が行き届いていて清潔感に溢れている。
 早速部屋に入り、大量の古書をテーブルの上に積み重ねていく。

「ありがとう、レヴィメウス」
「なに、大したことではない」

 と言って主人を見下ろして涼やかな笑みを浮かべる。
 その顔に微笑み返しつつ、ほとんど経験のない【街の宿に泊まる】という状況にうきうきとしながら部屋を見回した。

「荷物が多いから広い部屋にしてくれたのかな。優しい女将さんだよね」
「ああ。普通の二人部屋とさして金額は変わらぬようだから、冒険者からふんだくってやろうという悪意もないのだろうな」
「街の人から純粋な好意を受けられるってなんだか不思議な感じ。レヴィメウスが一緒に来てくれたおかげだよ。本当にありがとう」
「主の役に立てて光栄だ」

 笑顔を輝かせたレヴィメウスが二台あるシングルベッドのうちの片方に腰掛け、マージェリィに向かって両腕を差し伸べる。

「主よ」
「なあに?」
「この下僕めに褒美をくれまいか。少々魔力を補給させてもらいたい」
「あっ……う、うん」

 目の前まで歩み寄ると、開いた脚の片側に座らせられた。
 何をされるのかと固まっていると、顎を掬いあげられた。

「んむっ……」

 噛みつくようなキスをされ、独りでに声が洩れる。
 親指で顎を押され、口を開かせられた瞬間に舌が滑り込んできた。
 くちゅっと卑猥な音が鳴り、心臓が激しく脈打つ。

「ん、ふ、……」

 舌をじっくりと絡められたり吸われたりすればたちまち震えが走る。背筋がぞくぞくとする感覚に堪え切れずレヴィメウスの首に手を回してぎゅっとしがみつく。するとすぐに、ぐっと強く腰を抱き寄せてくれた。合わせた胸からレヴィメウスの少し速い鼓動が伝わってくる。

 

「ぷはあ……」

 長いキスの息苦しさに口を離すと、目の前でレヴィメウスが濡れた唇に舌を這わせた。
 その色気にどきどきしながら上目遣いで問い掛ける。

「魔力、補給できた……?」
「うむ。主の魔力は極上だな。これほどまでに甘美な魔力はついぞ味わったことがない」
「ホントに?」
「ああ。我は主に召喚してもらえて心の底から感謝している」
「私もレヴィメウスが来てくれてとっても嬉しいよ。ありがとう」

 目を伏せれば、今度はちゅっちゅっと軽く触れ合わせるだけのキスが繰り返される。
 まるで恋人同士のようなキスが嬉しくて、マージェリィはレヴィメウスに抱きつき直しては、何度もキスをせがんでしまったのだった。
 軽いキスはまた次第に深くなっていき、それだけでは済まされず――。




「ん、あふうっ……」

 日が暮れても灯りすら点けず、窓から差し込む街灯りに照らされる中、マージェリィはベッドの上に仰向けにされ、ショートパンツと下着とを脱がされた状態で大きく足を開かされていた。
 レヴィメウスがマージェリィの腿裏を支えて両脚を持ち上げて、股に顔を埋めて秘所を舌で弾く。ぴちゃぴちゃと音が鳴る度に強くも甘い快感が走り、独りでに腰が浮いてしまう。

 レヴィメウスとキスするうちに濡れてしまったマージェリィが『服に浄化魔法を掛けたいかも』と呟いただけでその理由を察されてしまい、さらなる魔力補給をさせてくれ、と瞬く間に下半身だけ脱がされてしまったのだった。下着は脱がされて靴下だけを履いている状態は初めての経験でどうにも落ち着かない。下腹部に絶え間なく響き渡る快楽に、無意識のうちに宙を蹴り上げてしまう。

「はあんっ、レヴィメウスう、きもちいよう……――はっ」

 自分らしくない甘え声を出してしまい咄嗟に口を押さえる。ここは家ではないのだから隣の部屋に声が聞こえる可能性を考慮しなければならないのだった。
 声を抑えるマージェリィをからかうようにレヴィメウスの愛撫が激しくなる。秘所全部を口に含んでじゅっじゅっと吸い上げてきたり、尖らせた舌先で細かく舐め回したりと様々なやり方で弄り倒されて、強い刺激にたちまち限界が迫る。

「んー! んっんううっ……! ――くうっ……!」

 限界に達し、びくんびくんと全身が跳ねる。その間にもレヴィメウスは夢中でご馳走に食らいつくかのような吐息を洩らしつつマージェリィの体液を舐めたり吸ったりして、幾度も喉を鳴らしていた。



「はあっ、はあっ……。あ」

 絶頂感にぼんやりとしていると、不意にお腹がぐうと鳴ってしまった。

「はううっ」

 マージェリィは恥ずかしさのあまり腹を押さえて小さく丸まった。
 途端に頭の先から笑い声が聞こえてくる。
 レヴィメウスが主人の顔を覗き込み、笑みを浮かべた。

「そう恥じらうでない、主よ。主はいつか我に全てを晒すことになるのだぞ」
「そうかも知れないけど! でもやっぱりまだこういうのはちょっと……」
「ふ。恥じらう乙女は実に愛いものよの」
「ずっと一緒に居たら、こういうのも恥ずかしくなくなっていくものなのかな」
「恥じらおうと堂々としていようと、どちらの主も愛することには変わりない」
「本当に? 私の嫌なところを発見して幻滅したりしない?」
「幻滅などするものか! 我はたとえ主の心が離れていこうとも、我が愛を貫く所存だ」
「ええ……? 私、レヴィメウスのことを嫌いになんてならないよ?」
「ふ。一万年生きてきた我は、人の心が移ろいゆくものだと知っておる。主に我を想い続けてもらえるよう励むとしよう」
「そんなことしなくたって大丈夫だって」
「そう願いたいものだな」
「もう! ホントだってば」
「ああ。信じておる」

 口元を微笑ませたままのレヴィメウスが覆い被さってくる。
 目を伏せれば、優しいキスを落とされる。
 またしてもマージェリィの腹の音が邪魔するまで、ふたりは唇を幾度も重ね合わせたのだった。



 腹が空き過ぎて脱力感を覚えたマージェリィは、よろよろと起き上がり服と下半身に浄化魔法を掛けると、素早く衣服を身に着けて床に降り立った。
 壁際のランプを灯してからレヴィメウスに振り返る。

「ねえレヴィメウス、夕食は酒場に行ってみたいんだけど、いいかな」
「ああ。喜んでお供しよう」
「やったあ! ありがと、レヴィメウス」

 浮かれ気分に任せてレヴィメウスに飛び付く。
 主人を軽々と受け止めてくれる頼もしさやぎゅっと抱き締めてもらえる感触が嬉しくて、マージェリィはさらにもう一度腹が空腹を訴えだすまでレヴィメウスとじゃれ合い続けてしまったのだった。
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