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1 乱暴な幼馴染
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ルナの住む辺境の村は、自然豊かで恵まれた環境にあり、人々は平和で豊かな生活を享受していた。
豊かな生活が送れる理由の一つに、辺境の村と隣国との境にある魔の森があげられる。魔の森は薄暗く、瘴気が濃くて人は住めない上に魔物が発生する。しかし、魔の森があるおかげで、隣国が攻め入る脅威はなく、魔獣討伐に定期的に冒険者達がやってくるので、人の交流があり、賑やかだ。冒険者向けの宿屋や装備などを扱う店も繁盛している。
魔の森に隣接しているといっても、魔の森と村の間に、緑豊かな森があり、その森が緩衝地帯となっている。そのおかげで、村に住んでいても、あまり魔の森の存在を感じさせない。
村は緑豊かで、水源にも恵まれ、気候も温暖。農産も畜産も盛んであり、この村独特の刺繍が、王国の一部に人気があり、食べ物、産業、環境に恵まれて、辺境とは思えないほど、人々は豊かに平和に暮らしている。
ただ、ルナは自然豊かで恵まれているこの地で、ゆったりと呼吸できたためしがない。いつだって、息を殺して、身を縮めて、気持ちを押しこめて生きてきた。この村では珍しい色彩の髪や瞳、肌の色をしているからという理由だけで。黒や茶などの濃い色の髪や瞳、褐色の肌が主流のこの村で、銀髪紫瞳、白い肌のルナは異色の存在だった。
そんな辺境の村のダレンとルナは同じ年に生まれたということを除けば、なにも共通点はなく全てが正反対だった。
ダレンは金持ちで、体格も良く、顔立ちも良かった。いつも自信にあふれ、人懐こくみんなの人気者だ。一方のルナは貧しく、身体は棒っきれのように細く、村人と異なる色の髪と瞳をもち、内気で陰気で、友達の一人もいなかった。
なぜ、こんなに違うのに、ただ隣の家に住んでいる幼馴染だからといってダレンがルナにかまうのか、未だにルナにはわからない。
小さな頃を思い出すと、ルナの心臓は恐怖と痛みできゅっと縮まる。
豊かな村とはいえ、貧富の差はある。ダレンの家は、畜産業を生業としていて、商人とも交流があり豊かだった。ルナの家は、家の周りの畑を細々と耕してなんとかしのいでいる貧しい家だった。
食べているものが体格にも影響を与えるのか、生来のものか、ダレンは小さな頃から、同世代の子どもより体格が大きかった。大柄な上、兄が二人いるため、やんちゃな少年だった。日がな一日、外で走り回っている子どもだった。
一方のルナは、小柄で細身で、村人から疎まれていることもあり、家で静かに過ごすのが好きだった。
なのに、ダレンは無理やり、ルナの手を引き外へ連れ出す。
ダレンと一緒に遊ぶのは小さな頃のルナにとって恐怖だった。
知らない場所にぽつんと置き去りにされるのは、いつものことだし。
川で溺れたり、木から降りれなくなったり、崖から落ちたり。
ダレンと二人でも最悪だけど、ダレンの兄達や友達がいる時には、小石を投げられたり、髪をひっぱられたりした。
ダレンは、ルナが窮地に陥っているのをニヤニヤと眺めていた。痛みや恐怖のなかにあっても、その表情は印象深く目に焼き付いている。
夕方頃になって、やっとルナを探しにきたり、助けにきたり、怪我の手当をしたりして、『俺のおかげでルナは助かったな』と満足げにしていた。
時に大きな怪我をすることもあったけど、怪我をするとしばらくは家で安静にできるので、ほっとしたぐらいだ。
ルナは黒や茶など濃い色の髪や瞳に褐色の肌が主流の辺境の村に生まれたのに、銀髪、紫目に、白い肌をしていて、村人と違った色素をしていた。そのため、村人からは、『捨てられ子』だとか『取り違え子』だとか、遠巻きにされ嫌悪されていた。
村人達にならって、実の両親はルナをいないものとして扱っている。ごはんはもらえるし、寝床もある。ただ、弟や妹にするみたいに、抱きしめたり、話しかけたりしないだけだ。
だから、両親は目障りなルナを家から連れ出し、村の子ども達との橋渡しをしてくれるダレンに感謝こそすれ、叱ったりしない。
どれだけルナが怖くても。
どれだけルナが痛くても。
両親は何も気にしない。怪我をしたって、『ルナの注意が足りない』『ダレンが手当をしてくれてありがたい』『ダレンがいなかったら、もっとひどいことになっていた』と叱責された。
例え、ルナが死んだとしても、なにも思わないだろう。むしろ、ほっとするのだと思う。
子ども心にも、ダレンがなぜか“ルナはダレンが好きだ”と思っていることがわかった。そしてそのことが不思議でならない。
いくら格好良くても、みんなにとってはヒーローだとしても、なんで自分に意地悪して、嫌な事ばかり言ってくる人を好きになると思っているのだろうか?
ルナはダレンが大嫌いだし、苦手だ。そのことが伝わらないことも不思議で仕方ない。
そして、幼馴染であるというだけで、かまってくるダレンから逃げたくて仕方なかった。けれど、周りから圧倒的な信頼を得ていて、親切を装って近づいてくるダレンから距離を置くことはできなかった。
どうにもできないことはわかっているけど、毎晩、布団に入ると涙がこぼれてくる。
『ダレンのいない、どこかへ行きたい』
『私を必要としてくれる人のいる場所へ行きたい』
無理だとわかっている。そんな場所ありはしないとわかっている。それでも、寝る前になると、心の底から思いが湧き出てきて、止まらなかった。
豊かな生活が送れる理由の一つに、辺境の村と隣国との境にある魔の森があげられる。魔の森は薄暗く、瘴気が濃くて人は住めない上に魔物が発生する。しかし、魔の森があるおかげで、隣国が攻め入る脅威はなく、魔獣討伐に定期的に冒険者達がやってくるので、人の交流があり、賑やかだ。冒険者向けの宿屋や装備などを扱う店も繁盛している。
魔の森に隣接しているといっても、魔の森と村の間に、緑豊かな森があり、その森が緩衝地帯となっている。そのおかげで、村に住んでいても、あまり魔の森の存在を感じさせない。
村は緑豊かで、水源にも恵まれ、気候も温暖。農産も畜産も盛んであり、この村独特の刺繍が、王国の一部に人気があり、食べ物、産業、環境に恵まれて、辺境とは思えないほど、人々は豊かに平和に暮らしている。
ただ、ルナは自然豊かで恵まれているこの地で、ゆったりと呼吸できたためしがない。いつだって、息を殺して、身を縮めて、気持ちを押しこめて生きてきた。この村では珍しい色彩の髪や瞳、肌の色をしているからという理由だけで。黒や茶などの濃い色の髪や瞳、褐色の肌が主流のこの村で、銀髪紫瞳、白い肌のルナは異色の存在だった。
そんな辺境の村のダレンとルナは同じ年に生まれたということを除けば、なにも共通点はなく全てが正反対だった。
ダレンは金持ちで、体格も良く、顔立ちも良かった。いつも自信にあふれ、人懐こくみんなの人気者だ。一方のルナは貧しく、身体は棒っきれのように細く、村人と異なる色の髪と瞳をもち、内気で陰気で、友達の一人もいなかった。
なぜ、こんなに違うのに、ただ隣の家に住んでいる幼馴染だからといってダレンがルナにかまうのか、未だにルナにはわからない。
小さな頃を思い出すと、ルナの心臓は恐怖と痛みできゅっと縮まる。
豊かな村とはいえ、貧富の差はある。ダレンの家は、畜産業を生業としていて、商人とも交流があり豊かだった。ルナの家は、家の周りの畑を細々と耕してなんとかしのいでいる貧しい家だった。
食べているものが体格にも影響を与えるのか、生来のものか、ダレンは小さな頃から、同世代の子どもより体格が大きかった。大柄な上、兄が二人いるため、やんちゃな少年だった。日がな一日、外で走り回っている子どもだった。
一方のルナは、小柄で細身で、村人から疎まれていることもあり、家で静かに過ごすのが好きだった。
なのに、ダレンは無理やり、ルナの手を引き外へ連れ出す。
ダレンと一緒に遊ぶのは小さな頃のルナにとって恐怖だった。
知らない場所にぽつんと置き去りにされるのは、いつものことだし。
川で溺れたり、木から降りれなくなったり、崖から落ちたり。
ダレンと二人でも最悪だけど、ダレンの兄達や友達がいる時には、小石を投げられたり、髪をひっぱられたりした。
ダレンは、ルナが窮地に陥っているのをニヤニヤと眺めていた。痛みや恐怖のなかにあっても、その表情は印象深く目に焼き付いている。
夕方頃になって、やっとルナを探しにきたり、助けにきたり、怪我の手当をしたりして、『俺のおかげでルナは助かったな』と満足げにしていた。
時に大きな怪我をすることもあったけど、怪我をするとしばらくは家で安静にできるので、ほっとしたぐらいだ。
ルナは黒や茶など濃い色の髪や瞳に褐色の肌が主流の辺境の村に生まれたのに、銀髪、紫目に、白い肌をしていて、村人と違った色素をしていた。そのため、村人からは、『捨てられ子』だとか『取り違え子』だとか、遠巻きにされ嫌悪されていた。
村人達にならって、実の両親はルナをいないものとして扱っている。ごはんはもらえるし、寝床もある。ただ、弟や妹にするみたいに、抱きしめたり、話しかけたりしないだけだ。
だから、両親は目障りなルナを家から連れ出し、村の子ども達との橋渡しをしてくれるダレンに感謝こそすれ、叱ったりしない。
どれだけルナが怖くても。
どれだけルナが痛くても。
両親は何も気にしない。怪我をしたって、『ルナの注意が足りない』『ダレンが手当をしてくれてありがたい』『ダレンがいなかったら、もっとひどいことになっていた』と叱責された。
例え、ルナが死んだとしても、なにも思わないだろう。むしろ、ほっとするのだと思う。
子ども心にも、ダレンがなぜか“ルナはダレンが好きだ”と思っていることがわかった。そしてそのことが不思議でならない。
いくら格好良くても、みんなにとってはヒーローだとしても、なんで自分に意地悪して、嫌な事ばかり言ってくる人を好きになると思っているのだろうか?
ルナはダレンが大嫌いだし、苦手だ。そのことが伝わらないことも不思議で仕方ない。
そして、幼馴染であるというだけで、かまってくるダレンから逃げたくて仕方なかった。けれど、周りから圧倒的な信頼を得ていて、親切を装って近づいてくるダレンから距離を置くことはできなかった。
どうにもできないことはわかっているけど、毎晩、布団に入ると涙がこぼれてくる。
『ダレンのいない、どこかへ行きたい』
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