こじらせ委員長と省エネ男子

みずしま

文字の大きさ
25 / 45
3.いくらなんでもギャップがあり過ぎです

3-8

しおりを挟む
「だったら、恋人になれば問題ないね」

「う、うん」

 心臓が跳ねる。あぁ、ダメだ。俺はとうとう……!

 とうとう誰かのものになってしまう……!

「あとは、俺ががんばるだけだね」

「……ん?」

 玖堂は一体、何を頑張るというんだ?

「宮下にふさわしい男になるために! いつか、宮下と恋人になれるように……!」

「へ?」

 玖堂が決意表明をする。俺は、ぽかんとしながらそれを聞いた。

「あ、あの……」

「これからは、自分ひとりで起きられるようになるから」

「え、それって」

 俺は、目覚まし係の任を解かれるってこと?

「ひとりで起きられないヤツのことなんて、宮下は好きにならないと思う!」

 断言された。確かに、自分で起きれたほうが良いとは思うけど。

「あと、俺の分の夕食を作るのは一旦終わりで良いから」

「え、そんな。何で……?」

「宮下みたいに、ちゃんと自炊ができるようになりたい」

 笑顔で言われて、俺は押し黙ってしまった。

「上手に作れるようになったら、宮下に食べさせてあげるからね。それまで待ってて」

「……う、うん」

 いや、ちょっと理解が追い付かない。 

「もう、玖堂の部屋で料理しちゃダメってこと?」 

「宮下がいたら甘えちゃうから、ダメ」

 玖堂が、手でバツを作る。

 なんだよ。それじゃ、俺がこの部屋に来る理由がなくなっちゃうじゃん。出禁ってこと? 

「一緒に、登校はするよな……?」

 縋るような気持ちで、玖堂に確認する。

「それは、もちろん」

 玖堂がうなずく。俺は、ホッと息を吐いた。

 勢いよく夕食を平らげていく玖堂を見ながら、俺もなんとか箸をつけた。空腹だったはずなのに、食欲が湧かない。

 咀嚼するのが億劫に感じて、飲み込むのがやっとだった。





 その日の夜。

 俺は、ベッドの上で何度も寝返りをうった。いつもは電池が切れたみたいに、ベッドに倒れ込んでいる。エネルギーを使い果たしたみたいになる。

 でも今日は、なかなか寝付くことができなかった。

 考えるのは、玖堂のことだ。

 玖堂は、俺のことを好きだと言った。

 俺だって玖堂のことは憎からず思っているし、当然付き合うものだと思っていた。

 でも……。

 俺は、玖堂に好きだと言えなかった。

 玖堂が、あまりにも真っ直ぐに「好き」だと言うから。俺は自分の気持ちが分からなくなってしまった。

 好きって、どういう感情なんだろう……。

 玖堂のことは、人間的に好きだと思う。素直だし、良いヤツだ。ぼんやりしているところも、嫌いじゃない。

 一緒にいるとドキドキする。でも、それは玖堂がイケメンだからかもしれない。

 類まれなる美貌を前にして、心臓が反応しているだけかも……?

 これって、好きだってことで良いんだろうか。なんだか、違う気がする。いや、好きかと問われれば好きなんだけど。

「恋愛対象かどうか、ってことなんだよな。要は……」

 人間的に好ましく思っているだけなら、それは友人。

 恋愛的な意味で好きなら、恋人。

 俺には難問だった。いかんせん、俺には恋愛経験がない。

 散々、非モテだといって自虐していたが、それ以前の問題だったことに気づいた。

「俺って、誰かを好きになったことないかも……」

 改めて思い返してみると、それは紛れもない事実で。

「え、俺って、初恋もまだってこと……!?」 

 どうりで、友人としての「好き」か、恋人としての「好き」か、判別できないわけだ。

「マジか……」

 衝撃の事実だ。同級生たちは、付き合ったり別れたりを繰り返しているというのに。

 その度に、キャッキャとはしゃいで青春を謳歌しているというのに。

 俺は、未だに初恋もナシ。

 ベッドに仰向けになった。リング上で、大の字でダウンしている感覚だった。

 打ちのめされたような気分のまま、気づいたら俺は眠っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】君の笑顔を信じたい

加賀ユカリ
BL
恋愛に臆病な受けが、後輩攻めに一途に愛される話。 高校三年生である高森浩太(たかもり こうた)は、自身の忘れ物をきっかけに後輩である瀬川蓮(せがわ れん)と知り合うようになる。 浩太は中学時代、同じ部活の男先輩への失恋により、「自分はもう恋愛なんてしない」と恋愛に臆病になる。一方、後輩である蓮は事あるごとに浩太を積極的に遊びに誘う。 浩太が遠まわしにいくら断っても諦めない蓮に、浩太は次第に自身の恋心を隠せなくなっていく── 攻め:瀬川蓮。高校二年生。爽やかな笑顔の持ち主。 受け:高森浩太。高校三年生。日々勉強に追われる受験生。 ・最終話まで執筆済みです(全36話) ・19時更新

無口なきみの声を聞かせて ~地味で冴えない転校生の正体が大人気メンズアイドルであることを俺だけが知っている~

槿 資紀
BL
 人と少し着眼点がズレていることが密かなコンプレックスである、真面目な高校生、白沢カイリは、クラスの誰も、不自然なくらい気にしない地味な転校生、久瀬瑞葵の正体が、大人気アイドルグループ「ラヴィ」のメインボーカル、ミズキであることに気付く。特徴的で魅力的な声を持つミズキは、頑ななほどに無口を貫いていて、カイリは度々、そんな彼が困っているところをそれとなく助ける毎日を送っていた。  ひょんなことから、そんなミズキに勉強を教えることになったカイリは、それをきっかけに、ミズキとの仲を深めていく。休日も遊びに行くような仲になるも、どうしても、地味な転校生・久瀬の正体に、自分だけは気付いていることが打ち明けられなくて――――。

殿堂入りした愛なのに

たっぷりチョコ
BL
全寮の中高一貫校に通う、鈴村駆(すずむらかける) 今日からはれて高等部に進学する。 入学式最中、眠い目をこすりながら壇上に上がる特待生を見るなり衝撃が走る。 一生想い続ける。自分に誓った小学校の頃の初恋が今、目の前にーーー。 両片思いの一途すぎる話。BLです。

月曜9時の恋人 ――上司と部下のリモート勤務録

斎宮たまき/斎宮環
BL
「おはようございます」から始まる恋がある。 在宅勤務の上司と部下、画面越しに重なっていく生活音と沈黙。 誰もいない夜、切り忘れたマイクから漏れた吐息が、心の距離を壊していく。 社会的距離が恋の導火線になる―― 静かな温度で燃える、現代オフィスBLの新形。

サークル合宿に飛び入り参加した犬系年下イケメン(実は高校生)になぜか執着されてる話【※更新お休み中/再開未定】

日向汐
BL
「来ちゃった」 「いやお前誰だよ」 一途な犬系イケメン高校生(+やたらイケメンなサークルメンバー)×無愛想平凡大学生のピュアなラブストーリー♡(に、なる予定) 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 ♡やお気に入り登録、しおり挟んで追ってくださるのも、全部全部ありがとうございます…!すごく励みになります!! ( ߹ᯅ߹ )✨ おかげさまで、なんとか合宿編は終わりそうです。 次の目標は、教育実習・文化祭編までたどり着くこと…、、 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 総愛され書くのは初めてですが、全員キスまではする…予定です。 皆さんがどのキャラを気に入ってくださるか、ワクワクしながら書いてます😊 (教えてもらえたらテンション上がります) 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 ⚠︎書きながら展開を考えていくので、途中で何度も加筆修正が入ると思います。 タイトルも仮ですし、不定期更新です。 下書きみたいなお話ですみません💦 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄

透きとおる泉

小貝川リン子
BL
 生まれる前に父を亡くした泉。母の再婚により、透という弟ができる。同い年ながらも、透の兄として振る舞う泉。二人は仲の良い兄弟だった。  ある年の夏、家族でキャンプに出かける。そこで起きたとある事故により、泉と透は心身に深い傷を負う。互いに相手に対して責任を感じる二人。そのことが原因の一端となり、大喧嘩をしてしまう。それ以降、まともに口も利いていない。  高校生になった今でも、兄弟仲は冷え切ったままだ。

My heart in your hand.

津秋
BL
冷静で公平と評される風紀委員長の三年生と、排他的で顔も性格もキツめな一年生がゆっくり距離を縮めて、お互いが特別な人になっていく話。自サイトからの転載です。

バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる

衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。 男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。 すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。 選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。 二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。 元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。

処理中です...