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4.好きって、なんですか……?
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その日の放課後。玖堂とは教室で別れた。
バイトがあるらしく、名残惜しそうに手を振りながら教室を出て行った。俺は体育祭の実行委員として、会議に参加しなければいけない。
会議室に向かおうとした俺のところに、新田さんがやって来た。
「マジで、さいあくなんだけど……」
げんなりした声だった。目が死んでいる。
彼女も実行委員なのだ。
女子はジャンケンをしたようで、最後まで負け続けた結果、実行委員になってしまったらしい。
「新田さんって、ジャンケン弱かったんだな」
ご愁傷様、と心の中で同情する。
「普段は弱くないんだからね! 選択ミスったーーー! あのとき、グーを出してれば~~~~」
新田さんが頭を抱える。
残念だが、後悔しても時間は巻き戻らない。
ひたすら落ち込む新田さんを見て、教材をまとめていた青山が声をかける。
「まぁ、宮下と新田は一年生だからな。実行委員といっても、上級生の手伝いをするだけだ。そんなに大変じゃないと思うぞ! たぶんだけど~~!」
それだけ言って、青山は教室から出て行った。
たぶんかよ、と心の中でツッコむ。相変わらずいい加減な教師だ。
テンションの低い新田さんと一緒に、俺は会議室に向かった。
棟が違うので、渡り廊下を歩いて移動する。新田さんは、歩きながら「は? 遠いだけど」とか「めんどう~~」とか、ひたすら文句を言っていた。
隣を歩く彼女を見下ろしながら、俺は苦笑いした。
新田さんの気持ちは、分からないでもない。
俺は生来の委員長キャラなので、こういう役割には慣れている。「褒められたい」という欲求もあって実行委員を引き受けたが、新田さんにとってはただの面倒事だろう。
ようやく会議室が見えて来た。中に入ると、ずらりと椅子が並べられていた。
パイプ椅子に腰を下ろし、ホワイトボードを見つめる。会議室内は、静かだけれど熱気に包まれているというか、独特な雰囲気が漂っていた。
その理由は、上級生たちにあった。やる気が漲っているのだ。
自分たちで最高の体育祭を作ろう! 的な気合を感じる。
「……この空気感、苦手なんだけど」
隣に座っている新田さんが、大きくため息を吐く。
「まぁまぁ」
俺は新田さんを宥める。しばらくすると、実行委員長だという三年生の男子生徒が俺たちのところにやって来た。
「実行委員会へようこそ」
薄いフレームのメガネを押し上げながら、実行委員長が微笑む。握手を求められたので、俺は「よろしくお願いします」と言いながら彼の手を握った。
隣で新田さんが震えているのが分かった。俺は外面の良さを発揮して、自己紹介(新田さんの分も)を丁寧に行った。
満足そうな顔でうなずき、立ち去っていく実行委員長の後ろ姿を眺めながら、ホッと胸を撫でおろす。
「え、きも。なにアイツ……」
新田さんは未だに震えている。両手で自分の腕をすりすりしている。鳥肌が立っているのだろう。
「さむいんだけど」
もちろん気温が低いとか、そういう意味ではない。ドン引きしているのだ。
「変わったタイプの熱血だよな」
理論派の熱血というか……。
一日目の会議は、去年の体育祭の反省会から始まった。
反省をいかして、今年はより良いものにしようということだった。時間配分と確認を怠らないようにと、実行委員長がホワイトボードにマーカーで記している。
続いて、Tシャツのデザインをどうするかという議題に移行する。
「Tシャツって、なによ?」
新田さんが、ちらりと俺を見る。
「体育祭の当日、皆が同じTシャツを着るんだよ」
そうすると、一致団結している感じが出る。
背中に漢字一文字を入れたり、スローガンを入れたりするのだ。そういう意味では神アイテムかもしれない。
「あ、それ。SNSでよく見るやつだ……!」
新田さんのテンションが、一気に浮上する。
「はい!」
勢いよく新田さんが挙手する。
「私、色はピンクが良いです! かわいいやつ!」
とにかく映えるTシャツが良いと新田さんは力説する。
積極的に発言したことで、新田さんの案が採用された。Tシャツの色は、ド派手なピンク色に決定してしまった。
「ピンクか。ちょっと、恥ずかしいな……」
高校生男子が着用するには、少し尻込みする色だ。
「委員長は、顔が地味だから似合わないかもね~~」
足を組み替えながら、ふふんと新田さんが笑う。なんという意地の悪い顔だろう。
新田さんは、実は美少女顔なのだ。しかし、ちょっとキツめなので悪役が似合う。今の笑みは悪役そのものだった。
「……新田さんは、似合うかもな」
キツめの悪役顔だから。
「そうでしょ?」
新田さんが、ますます得意げな顔になる。
く、悔しいぃ。どうせ俺はモブ顔だよ……!
ふん! くそが! 悪役美少女め!
表情筋がピクピクする。俺はなんとか平静を装いながら、心の中で罵詈雑言を浴びせまくっていた。
バイトがあるらしく、名残惜しそうに手を振りながら教室を出て行った。俺は体育祭の実行委員として、会議に参加しなければいけない。
会議室に向かおうとした俺のところに、新田さんがやって来た。
「マジで、さいあくなんだけど……」
げんなりした声だった。目が死んでいる。
彼女も実行委員なのだ。
女子はジャンケンをしたようで、最後まで負け続けた結果、実行委員になってしまったらしい。
「新田さんって、ジャンケン弱かったんだな」
ご愁傷様、と心の中で同情する。
「普段は弱くないんだからね! 選択ミスったーーー! あのとき、グーを出してれば~~~~」
新田さんが頭を抱える。
残念だが、後悔しても時間は巻き戻らない。
ひたすら落ち込む新田さんを見て、教材をまとめていた青山が声をかける。
「まぁ、宮下と新田は一年生だからな。実行委員といっても、上級生の手伝いをするだけだ。そんなに大変じゃないと思うぞ! たぶんだけど~~!」
それだけ言って、青山は教室から出て行った。
たぶんかよ、と心の中でツッコむ。相変わらずいい加減な教師だ。
テンションの低い新田さんと一緒に、俺は会議室に向かった。
棟が違うので、渡り廊下を歩いて移動する。新田さんは、歩きながら「は? 遠いだけど」とか「めんどう~~」とか、ひたすら文句を言っていた。
隣を歩く彼女を見下ろしながら、俺は苦笑いした。
新田さんの気持ちは、分からないでもない。
俺は生来の委員長キャラなので、こういう役割には慣れている。「褒められたい」という欲求もあって実行委員を引き受けたが、新田さんにとってはただの面倒事だろう。
ようやく会議室が見えて来た。中に入ると、ずらりと椅子が並べられていた。
パイプ椅子に腰を下ろし、ホワイトボードを見つめる。会議室内は、静かだけれど熱気に包まれているというか、独特な雰囲気が漂っていた。
その理由は、上級生たちにあった。やる気が漲っているのだ。
自分たちで最高の体育祭を作ろう! 的な気合を感じる。
「……この空気感、苦手なんだけど」
隣に座っている新田さんが、大きくため息を吐く。
「まぁまぁ」
俺は新田さんを宥める。しばらくすると、実行委員長だという三年生の男子生徒が俺たちのところにやって来た。
「実行委員会へようこそ」
薄いフレームのメガネを押し上げながら、実行委員長が微笑む。握手を求められたので、俺は「よろしくお願いします」と言いながら彼の手を握った。
隣で新田さんが震えているのが分かった。俺は外面の良さを発揮して、自己紹介(新田さんの分も)を丁寧に行った。
満足そうな顔でうなずき、立ち去っていく実行委員長の後ろ姿を眺めながら、ホッと胸を撫でおろす。
「え、きも。なにアイツ……」
新田さんは未だに震えている。両手で自分の腕をすりすりしている。鳥肌が立っているのだろう。
「さむいんだけど」
もちろん気温が低いとか、そういう意味ではない。ドン引きしているのだ。
「変わったタイプの熱血だよな」
理論派の熱血というか……。
一日目の会議は、去年の体育祭の反省会から始まった。
反省をいかして、今年はより良いものにしようということだった。時間配分と確認を怠らないようにと、実行委員長がホワイトボードにマーカーで記している。
続いて、Tシャツのデザインをどうするかという議題に移行する。
「Tシャツって、なによ?」
新田さんが、ちらりと俺を見る。
「体育祭の当日、皆が同じTシャツを着るんだよ」
そうすると、一致団結している感じが出る。
背中に漢字一文字を入れたり、スローガンを入れたりするのだ。そういう意味では神アイテムかもしれない。
「あ、それ。SNSでよく見るやつだ……!」
新田さんのテンションが、一気に浮上する。
「はい!」
勢いよく新田さんが挙手する。
「私、色はピンクが良いです! かわいいやつ!」
とにかく映えるTシャツが良いと新田さんは力説する。
積極的に発言したことで、新田さんの案が採用された。Tシャツの色は、ド派手なピンク色に決定してしまった。
「ピンクか。ちょっと、恥ずかしいな……」
高校生男子が着用するには、少し尻込みする色だ。
「委員長は、顔が地味だから似合わないかもね~~」
足を組み替えながら、ふふんと新田さんが笑う。なんという意地の悪い顔だろう。
新田さんは、実は美少女顔なのだ。しかし、ちょっとキツめなので悪役が似合う。今の笑みは悪役そのものだった。
「……新田さんは、似合うかもな」
キツめの悪役顔だから。
「そうでしょ?」
新田さんが、ますます得意げな顔になる。
く、悔しいぃ。どうせ俺はモブ顔だよ……!
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