奴隷として生まれた天才

津本 なを

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2章 三種族をつなぐもの

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 ――前回のあらすじ――
 健の家についたユウキはとりあえず健の家で匿うことになった。そして、健はユウキの血液検査の結果を見て驚愕する。



 ――何が最善手だろうかと悩んだとき、最後二つの選択肢まで絞り――大体後悔する方を選んでしまうものである。
 そして大体最後に迷ったもう一方が正解だ。
 さて、今回はどうするか……。

 俺は血液検査の結果、透明の緑色になった試験管を見つめる。
 この血液検査では、血液の状態だけでなく、「その種族」まで明らかになる。
 そして、ユウキは魔法使いだった。

 ――一つは、みんなにユウキが魔法使いであったことを告げ、今後の方針を決める。
 ――一つは、ユウキ個人にとりあえず事情を聞く。
 ――一つは、事情を聞かず、総務省に突き出す。
 態度に違和感を抱いていたが、まさか魔法使いだとは思わなかった……。まあ、恐らく病気関係でもめて、家出したとかだろう。
 いきなり総務省に連れて行くのは、事情を聞いてからでもいいとして……。
 先にみんなと相談するか、ユウキに直接話すかだがどうしたらいい。
 ――みんなに言うことのメリットは一人で間違った選択をして、みんなを巻き込むことが裂けられること。
 ――デメリットは、魔法使いを過剰に嫌うやつもいるせいで、対応に度が過ぎてしまう可能性があること……。
 ――ユウキに直接一人で話すことのメリットは、周りの意見がないのでユウキの要望に応えやすいこと。
 ――デメリットは、なんせ相手は魔法使いなので、俺自身に危険があるかもしれないし、みんながこのことを知ったら『なぜ最初に俺たちに言わなかった』と俺を責めるだろう。その二つのことが大きい……。
 自分自身を優先するなら間違いなく、みんなに言った方がいい。
 ――でも、ユウキを優先するなら絶対にユウキに相談すべきだ。
 土手で最初に会った時のあの目は間違いなく救いを求める目だったと今でも思う……。
 それには自信がある。
 でも、怖い…………。

「健、ここにいたのね」
「――はぇっ⁉」
 俺は考えすぎると周りのことに注意がいかなくなってしまう。
「ごはん。真央が呼んできてって」
 気づけば、ユウキが扉の前に立っていた。
「おう……、そうか」
俺は席を立ち、ユウキと一緒に食堂に向かう。
「…………お前の病気、治りそうだぞ」
――一緒に歩いているユウキが立ち止まった。
「……う、嘘じゃ……ない?」
ユウキは少し涙を流している――プルプルと小刻みに震えながら。
「ああ、本当だ」
 俺の心は完全に決まった――それが仮にミステイクでも俺は後悔しない。
「ありがとう……、ありがとう」
「朝食の時間だ。うちの飯はうまいぞ」
 そういって階段を下りた。

「おい!健!そっ、それはどういうことだよ?俺は怒っている、怒っているぞ!」
 ――リビングに入るや否や、翔太が怒鳴る。
「朝からやかましいな……。今日の飯はなんだ?」
「まず一つ――お前機能俺が作ってやった飯を無視して家飛び出しやがっただろ!一生懸命作ってるんだぞ!分かっているのか?おい!」
 ――そういえば昨日晩飯食べてなかった。
「それは……、すまないことをした……。ごめんなさい」
「そんなことはどうでもいいんだよ!解るよなぁ……?そこの超絶美人はなんだ?『俺、女に興味がないんだ……』とかほざいていたよなぁ。その御託はどこへ消し飛んだ?」
 俺は咄嗟に『晩飯のことをどうでもないのにそんなに怒るなよ……。』と言いかけたが、昨日の風呂での出来事を思い出し、そのことに突っ込む余裕がなくなった。
「っ、そんな目で見てないし、そんな関係でもないよ……なあ?ユウキ」
「私は健に体の一部を与えたわ……、痛かったけど……。特別な関係よ」
――翔太が俺の頭を殴ってきた。
「な、に、が!『そんな関係でもないよ』だあぁ?ちゃっかり交わってんじゃあねえよ!」
――出たよ。この一番重要なところを抜いて説明するやつ……。
「――私は健に検査のために血液をあげたわ、そんなことしたのは昨日が初めて」
「いっ、痛てぇ。だからそんないかがわしいことしてねえよ……。そんなことよりユウキ。お前のその大事なことを後に言うやつ、わざとならやめてくれ!お願いします、何でもしますから!じゃないと俺の体が持たねぇ……」
 俺は言いたいことを言って肩をすくめる。
「はい、はいそこまで」
 そういって莉那が割り込んできた。
――羽島莉那はうちの掃除とか家事とかをやってくれている。
「翔太もうるさすぎるのよ。健もそういうお年頃なの。ほっといてあげなさい」
 ――言い争いを収めるのも莉那の役割だ。
「お、おう。そうだな……。今日の朝食はサンドウィッチが自信作だ、残さず食べろよ!」

「「「「「いただきます!」」」」」
 相変わらず、翔太の作る飯はうまい。
 全部が高級レストランで出てきそうなくらいおいしい。
「それで、ユウキちゃんの病気は治りそうなの?健」
 莉那が聞いてきた――おそらくその辺の事情は真央がうまく説明しといてくれたのだろう。
「お、それ俺も気になるぞ。家に連れ込んどいといて治りませんでしたとかいったら、俺が許さねえからな」
 ――翔太が追い打ちをかけてくる。
「それは心配すんな。研究室の本に治し方とか書いてあったからな……」
 みんなには図書室の事は秘密にしている……。
 俺はみんなの事もだましている……。
「そうか、流石だな。そんなことより……、ユウキちゃん?本当にかわいいな。あとで一緒に買い出し行こうよ」
「あんたはすぐそういうことしない。その女好きはどうにかなんないの?」
 莉那は翔太に厳しい。
「お前、俺にだけには滅茶苦茶厳しいよな、ホント。じゃあお前一緒に来てくれよ」
「代用品みたいな言い方やめてくれるかしら?」
「あー、ごめん。まあ『ユウキちゃんと初めて会ったし仲良くなりたいな』みたいに思ったんだよ!しょうがないだろ?」
 そういって、翔太が俺とユウキを交互に見てうらやましそうな顔をしている。
「まあ、今日は行ってあげる。ユウキちゃんも来る?」
「今日はやめとくわ」
 ユウキは下を向いて少し悲しそうな顔をしている。
「そう。また今度一緒に何処か行こうね?」
「うん」
 ユウキは小さく頷いた。
「えー。ユウキちゃん来ないの?残念」
「ごめん。ちょっと今はそういう気分じゃないの……」
「まあ今度気乗りするときでいいよ。俺、料理がおいしくないから元気なさそうなのかと思ってたから、ただ気分が乗らないだけなら良かったわ」
「料理はすごくおいしいわ。こんなに美味しい朝ごはん久しぶりよ」
 ユウキが少し笑顔になる。
「マジ?めっちゃ嬉しい!よし!今日の夜飯は本気出すぞー!」
 翔太はユウキと一緒に出掛けられなくて少し落ち込んだ様子だったが、急に元気になった。
 ――俺は、なんてユウキに言えばいいかずっと考えていて、喋る気分になれなかったが。

 朝食が終わり、俺はソファーに座って、腕を組んで……。
 ――どうするか、悩む。
 決めたものの、やっぱ迷ってしまう。
 なんて話しかければいいのだろう。
「――健」
――ユウキが話しかけてきた。
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